6. まっすぐなエンターテインメント
岩田
さて、そろそろまとめとなりますが、
最後にみなさんから
オリジナル版『風のタクト』を遊んだことのある人と、
まだ遊んだことのない人それぞれに、
メッセージをお願いします。
青沼さんは最後ですね。岩本さんから。
岩本
僕は今回のリメイクにあたって
調整をいろいろ新たに入れさせてもらったので、
『風のタクト』を遊んだことがある方には
そのちがいを実感してもらえるとうれしいですね。
わかりやすいところでいうと、
船のスピードが2倍になっていたり、
Wii U GamePadで使いやすくなったUI(※22)は、
とくにマップを手元に出せるので、
世界がより快適に楽しめるようになっています。
新しくMiiverse(※23)にも対応しましたので、
そこもぜひ体験してほしいですね。
岩田
はい。遊んだことのない方には?
岩本
もう純粋に、この世界に
飛び込んできてもらいたいですね。
遊んでいる最中は歯ごたえある場面も
少なからずあるんですけど、
それを乗り越え最後まで遊んでもらえたら
「ああ~、おもしろかった!」
と感じてもらえるものになったと思います。
青沼
今回、岩本さんはある意味
いちばんお客さんに近い目線で
かかわってもらいましたから、
そう言われると説得力ありますね。
岩田
滝澤さんはどうですか?
滝澤
まず、遊んだことのある方には、
「新しく世界をつくり直しました」
と言っていいくらい、
印象が変わったことは伝えたいですね。
岩田
「あなたの記憶に勝ってみせます」
ということですね(笑)。
滝澤
ぜひ、勝負させてほしいですね。
ライティングなどもぜんぶいちから
入れ直していますので、
新しく生まれ変わった世界を、
新鮮な気持ちで楽しんでもらえると思っています。
それから、まだ遊ばれたことのない方は
『風のタクト』と聞いて、
「10年以上前の昔のゲームでしょ?」
と思われるかもしれませんが、
古さを感じさせることのない、
ほかに類を見ない魅力が詰まったゲームですと
お伝えしたいです。
岩田
そうですね。ほかにないですね。
滝澤
それから、アニメーションについては、
じつはほとんど修正を入れてないんですが、
「オリジナル当時のままで
いちばん見ていて気持ちのいい『ゼルダ』」
と言っても過言ではないと思ってるからなんです。
ご家族や友達みなさん一緒に、
リビングの大画面テレビで
楽しんでいただけたら幸いです。
岩田
はい。では堂田さん。
まず遊んだことのある方に。
堂田
さっき話にも出たんですけど、
ゲームキューブの時、表現しきれなかった
クリエイティブというのがあって、
そのつくり手の怨念みたいなものは
今回HDで表現できたと思っています。
岩田
怨念、とまで言いますか? 情熱ではなく(笑)。
滝澤
でもその言いかたが、いちばんしっくりきますね。
岩田
「成仏してなかった」ということですかね。
一同
ああー(笑)。
堂田
でも本当に、誰もわからないだろうに
「こんなところまでつくってたのか」
みたいな部分がいくつもあったんですね。
そこを今回あますことなく掘り起こしたので、
ぜひ味わってもらえたら。
岩田
はい。遊んだことのない方には?
堂田
自分がつくり手になってあらためて感じたのは
「『風のタクト』ってまっすぐなゲームだなぁ」
ということなんです。
ゲームの方向性自体もそうですし、ストーリーも
ぜんぶまっすぐで、ブレがないんです。
この“まっすぐなエンターテインメント”を
存分に楽しんでもらいたいですね。
岩田
「まっすぐなエンターテインメント」って、
このゲームの本質をまさに言い表していますよね。
堂田
それをはじめて楽しめる人は、
ある意味とてもラッキーなことだと思います。
岩田
有本さん、どうぞ。
以前遊んだ方には何と?
有本
気づかなかった発見が、あると思います。
具体的なところでいうと、
最初の島にいる赤シャチと青ジイの兄弟(※24)は、
一見似ても似つかないふたりなんですけど、
HDで見ると青ジイは
メガネの奥の眼光が鋭いんですよ。
つくってる自分たちもそれを見て、
「ああ、このふたりやっぱり兄弟なんだ~」って
あらためて実感するようなことがありますね。
岩田
HDになったことで、眼光鋭いふたりの共通点が
明らかになったわけですね(笑)。
有本
はい、ほかにもあると思います(笑)。
あと僕は常々、遊んだことのない方の中には、
「『風のタクト』のリンクはかわいいだけ」と
誤解されてる方がいらっしゃるんじゃないかと
思っているんです。
でも、見かけこそかわいいですけど、
その行動はいつも男前でカッコいいんですよ。
滝澤
たしかに、ゲーム中でやっていることや
なし遂げることを見たら
『ゼルダ』史上もっとも男前なリンクです。
有本
媚びてかわいい表情やポーズを
見せることはないですから。
岩本
でも、ハートの器をとったとき
ものすごく無邪気にはしゃぎますよね。
有本
あっ・・・(笑)。
岩本
あれ、かわいいですよね。
一同
(笑)
岩田
まあ、ほかがぜんぶカッコいいから
あのしぐさが映えるというのはありますね。
最後に、青沼さん。締めの言葉を。
青沼
さっき「まっすぐ」って言葉がありましたけど、
たしかにもともとのオリジナル版は、
一枚のネコ目リンクの画から、
いろんなことがスパッと一気に決まって
つくられたゲームだったとは思います。
本当に一気に、全力で駆け抜けるように
つくりあげたゲームでした。
けれど、それを遊んでみると
もたつくところもいっぱい見えてきたわけですね。
今回はそういった部分を一新して、
さらにそこにHDの表現力が相まって、
シャキッと磨かれた新たな“キレ”みたいなものが
加わった気がしています。
岩田
はい。
青沼
オリジナル版を遊んでもらえた人には、
絶対そのちがいがわかってもらえると思いますし、
「こういうことだったんだ」っていう手ごたえが
前よりも増してるっていう感覚は、
絶対味わってもらえると思うんです。
今回はより遊びやすく、
快適に進められるように手を加えてあるので、
本当にこの世界をすみずみまで
遊び尽くす喜びを、
味わってもらえるんじゃないかと思います。
岩田
以前より
「世界を遊び尽くしやすくなりました」と。
青沼
はい。で、はじめて遊ぶ方にはですね、
今回の『風のタクト』は、けっしてリメイクではなく
いまの時代に生まれ変わるべくして誕生した
新しい『ゼルダ』だと思っていただいて、
まちがいありません。
岩田
2013年のいま提案する、
まっすぐで骨太な『ゼルダ』ですね。
青沼
はい。そこを存分に、
味わってもらいたいですね。
岩田
わたし自身は、今回リファインした
数々の要素というのは、
全方位のいろんな人に対して
手がさしのべられている感じがしています。
それらがお客さんの手に届いたときに、
どんなふうに受け止めてもらえるのか、楽しみです。
青沼
そういう意味では、この『風のタクト HD』が、
どういう評価を受けるのか見届けたいですね。
僕らがオリジナル版で目指したことと、
そこに載せた思いが正しかったのかどうか。
これからの『ゼルダ』を考えていく、
重要なターニングポイントになってくると思います。
岩田
あとはやっぱり、
『風のタクト HD』はそばで見てる人も
楽しくなるゲームだと思います。
いいゲームのひとつの条件に、
「まわりで見ている人も楽しい」ことが
挙げられると思うんですけど、
『風のタクト HD』はその力が
とくに大きいと思うんですね。
今回のHD化によってますます、
画の力、表情の力、世界の力がひとつになって
本来は見えない光や風、ぬくもりが
感じられるゲームになったと思います。
ぜひ家族や友達同士で、できるだけ大画面で
一緒に楽しんでもらいたいですね。
今日はありがとうございました。
一同
ありがとうございました。