社長が訊く
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社長が訊く『ゲーム&ワリオ』

社長が訊く『ゲーム&ワリオ』

目次

3. エネルギーをかけた16種類のゲーム

岩田

今回の『ゲーム&ワリオ』では、
多人数のゲームも含めてWii U GamePadだけで
Wiiリモコンを使わずに遊べるようになっていますが、
そうしたのはどうしてなんですか?

阿部

それも「Wii U本体の同梱ソフトをつくる」
という話からはじまったからなんです。
Wii Uのお客さんが全員、
Wiiリモコンをお持ちだとはかぎりませんから。

岩田

ああ、そういうことなんですね。

阿部

ただ、開発してみるとコロンブスの卵というか、
「ああそうか、Wii U GamePad1台あればみんなで遊べるよね」
というバリエーションがいくつかあって、
しかも決してワンパターンじゃなかったんです。
いろんな遊びかたが提案できたのは
Wii U GamePadが多機能だったことが
とても大きかったと思います。
まず大きな画面のタッチスクリーンもついていますし・・・。

岩田

ジャイロセンサーもあるし。

阿部

はい。加速度センサーもあるし、カメラもあるし、
マイクもあるし、ホントに何でもあるんですよね。
だから「そのような多機能をいかに活かすのか?」
ということを考えながらつくりました。
その意味でいうと、思いついたことは
何でもできそうでしたし、
「とりあえず世の中にないものをこの構造でつくりたい」
ということをひたすら考えていました。

岩田

16種類それぞれのゲームを見ると、
全ゲームのなかでテイストがきれいにそろって、
というわけじゃないですよね。

そうですね。

阿部

『メイドインワリオ』シリーズでいくと決めてからは、
むしろそれをあえて・・・。

バラバラにしようと。

阿部

違いを出すことを意識してやっていきました。
『メイドインワリオ』という入れ物が使えるので、
このゲームはこのキャラクターがつくった、
ということを前面に出すようにしてまとめました。
これまでの『メイドインワリオ』は
「瞬間アクション」でしたけど・・・。

坂本

そもそも今回の構造は
『メイドインワリオ』ではないんです。

岩田

だから一つひとつにボリュームがあるんですね。
今回は、これまでのような
『メイドインワリオ』のプチゲームとは違って、
1個あたりのゲームに
かなりのエネルギーと手間をかけてつくられていますよね。

阿部

そうですね。じつはチームのなかでは、
「ミニゲーム」という言葉も
使わないようにしていたんです。
たぶん「ミニゲーム」と言っちゃうと、
そういう気持ちでつくってしまうと思って、
あえて全部「メインゲーム」という言いかたをして、
「1個1個のゲームを単独で売ってもいいものとして考えよう」
という意識でつくっていました。
 
そうした意識が強かったので、
16種類のゲームすべてに
それぞれのタイトル画面をつくったんです。

岩田

たしかにタイトル画面もすごく個性的ですよね。
しかも、それぞれの味を感じます。

阿部

もともとイメージしたのは、
むかしのファミコンソフトのパッケージなんです。
あの頃のパッケージって、
とても豪華なイラストが載っていましたけど、
いざゲームのなかを見てみると、
すごくチープな画面だったりしましたよね。

岩田

はいはい(笑)。

阿部

「その時感じたような
 ギャップによるおもしろさを表現したい」と思って、
今回は、デザイナーさんそれぞれのテイストで
自由に描いてもらいました。

坂本

だから、めちゃくちゃこっているんです。

しかも、実際にゲームに出てこないものとかも
描かれたりしていますし。

阿部

「この絵がこのキャラなのか?」とか(笑)。

そうそう(笑)。

坂本

たしか5、6名のデザイナーさんで・・・。

阿部

いえ、もうちょっといました。
イズさんにも描いてもらいましたし。

坂本

僕もタイトル画面を監修させてもらって、
「これはまだまだ足りてない」とか言って
ダメ出ししたりして(笑)。

岩田

まだまだ“こってり度”が足りない、
ということですか(笑)。

坂本

はい(笑)。

阿部

ですから、タイトル画面にかかっているコストは、
おそらく通常のゲームのタイトル画面1個分よりも、
今回の1個1個のタイトル画面のほうが高いと思います。
あれほど手間をかけたタイトル画面は
ほかにあまりないと思いますので、
ご覧になると、たぶんびっくりされると思います。

パッケージ並みにかけていますよね。

岩田

なんだかとっても変な自慢をされている感じなんですけど(笑)。

一同

(笑)

坂本

やっぱりそこは、手が抜けないというか、
がんばりどころやなあと(笑)。

岩田

まあ・・・『メイドインワリオ』ですからね(笑)。

坂本

ええ(笑)。

しかも、ゲームのステージ選択画面とか、
メニューとかも、それぞれつくりましたので、
単純に16本のゲームをつくったのと
同じような労力がかかっています。

岩田

流用していないんですね。

はい。

阿部

それに、操作系も
タッチスクリーンを使うものであったり、
ジャイロセンサーを使うものであったり、あるいは・・・。

縦持ちだったり、横持ちだったり。

阿部

そんなふうに操作系がけっこう入り乱れているので、
インターフェイスの部分でも、
「どのように誘導すればわかりやすくなるのか」とか、
そういう部分でもけっこう試行錯誤しました。

しかも、今回はボリューム満点ですしね。

阿部

そうなんです。
たとえば『ゲーマー』という
ナインボルトのステージ
がありますけど、
そこには『メイドインワリオ』でおなじみの
プチゲームが入っています。

岩田

『ゲーマー』1個だけで
『メイドインワリオ』1本分、
みたいなところがあるんでしょうか?

阿部

『ゲーマー』に入っているプチゲームの数は
22種類なので、これまでのシリーズの
10分の1くらいではあるんですけど、
その周りの新しい遊びの部分については、
すごく手間をかけていますので、
それだけでも1本のゲームになっていると思います。

岩田

1個1個のゲームをつくるのに
そこまで手間がかかる構造だったから、
最後の最後でたくさんの“助っ人”が
必要になったんでしょうね。

阿部

そうなんです。

岩田

では、そろそろその話を訊きましょうか。
“オールスター応援状態”の話を。

阿部

はい(笑)。

まさに“スマブラ状態”でしたよね。

岩田

あ、実際に “スマブラ状態”って呼んでいたんですか?

いえ、助っ人のみなさんが
“ニンテンドウオールスター!”状態でしたので、
わたしが個人的にそう呼んでいました(笑)。
任天堂のプロデューサーさんや
ディレクタークラスの人たちがいっぱい集まって、
ゲームのアイデアを出し合ってつくるというのは、
「こんなこと、いままでなかったぞ・・・!」
と思いましたから。

岩田

実際、はじめてのことだったんです。
企画開発部ができて以来、1本のゲームのために、
全制作チームから応援に駆けつけるというのは、
これまで一度もなかったことですから。