岩田
目の前に並んだ3人の顔を見ると、
「わたしは今日、何をさせられるんだろう?」って、
不安に思ってしまうんですが(笑)。
一同
(笑)
阿部
『うつすメイドインワリオ』(※1)の時の
アレ(※2)のことですね(笑)。
岩田
今回は、何もさせられずにすむんですよね?
坂本
そうですね、はい(笑)。
岩田
今日は『ゲーム&ワリオ』が完成し、
開発にかかわったみなさんから話をお訊きしますが、
それぞれ何を担当されたのかを教えてください。
坂本
企画開発部の坂本です。
『メイドインワリオ』シリーズ(※3)では
僕はご意見番的な感じでかかわることが多いんですけど、
今回も同じように、阿部さんの相談にのったり、
自分の意見を述べたりしていました。
阿部
企画開発部の阿部です。
僕は、ディレクション担当ということで、
全体の仕様を考えたり、
決めていったりしたのですが、
実際につくる部分のところでは、
横にいる森さんにお願いしながら、
開発を進めてきました。
森
インテリジェントシステムズ(※4)の森です。
わたしはイズ(※5)側のディレクションを担当しました。
まず、阿部さんから「こんなゲームをつくりたい」
というお話を受けてから、それをイズで細かく詰めて、
実装していくようなことを主にしていました。
岩田
さて、ずいぶん前のことになりますが、
いちばん最初に阿部さんが
このプロジェクトを担当することになったとき、
どんな状態で引き受けることになったんですか?
阿部
最初は「Wii U本体にゲームアプリを載せよう」
ということで動きはじめたプロジェクトだったんです。
途中から僕が担当になって、
Wii U GamePadを使って、どんな遊びができるのかを
まず自分ひとりで考えることになりました。
岩田
最初はひとりではじめて、
途中からイズさんといっしょに
開発を進めるようになったんですね。
阿部
はい。なんとなく方向性が見えてきた段階で、
実際にものをつくって、自分で触ってみないと
おもしろさがわかりませんので、
開発をイズさんにお願いすることにしました。
岩田
これまで『メイドインワリオ』シリーズで
勝手知ったるチームだから、ですよね?
阿部
そうですね(笑)。
岩田
森さんが最初に話を聞いたのは
いつくらいだったんですか?
森
2年前の1月です。その時、
「Wii Uという新しいゲーム機には
こういう機能があります」
ということをはじめて教えていただいて、
そこからがスタートになりました。
岩田
つまり、そこから2年くらい
つくりつづけていた、ということですよね。
森
そうですね、はい。
岩田
そもそも、開発のはじまりからいきなり
いまのかたちをめざしていたわけではありませんでしたね?
阿部
そうですね。もともとWii U本体の
本体内蔵ソフトとして企画がはじまりましたので、
『メイドインワリオ』シリーズとして考えていたわけではなかったんです。
時期的には、E3が控えていましたので、
「ショーに出して、みんなが手軽に遊べるものを」
ということでつくりはじめました。
岩田
2011年6月のE3(※6)ですね。
阿部
はい。今回の『ゲーム&ワリオ』には
16種類のゲームが入っていますけど、
そのひとつ『パイレーツ』の原型になるものを、
『SHIELD POSE』というタイトルで出展しました。
「Wii U GamePadを盾のように構えて、
テレビ画面から飛んでくる矢を受ける」
というゲームです。
岩田
その当時は、
どんなことを考えてつくっていたんですか?
阿部
本体に内蔵するゲームでしたから、
特定の人にウケるような
個性的なものにするのではなく、
あらゆる層の人たちに楽しんでもらうことが
前提になりました。
ただ自分はこれまで、『メイドインワリオ』のチームで
はっちゃけたことをずっとしてきましたけど、
今回はそれを抑え込まなきゃいけなくて・・・。
岩田
心のなかで、
ブレーキを踏まなきゃいけなかったんですね。
阿部
はい。Wii Uに内蔵するゲームなので、
「新しい機能がわかりやすく伝わるようなものを
いかにきれいにまとめようか」と、
そんなことばかり考えてつくっていました。
岩田
森さん、行儀良くすることを求められているようで
窮屈ではありませんでしたか?
森
そうですね。だから・・・
「ちょっとマジメにやらなあかんかな」と(笑)。
岩田
いつものテイストは抑えて、
「今回はマジメにやらないと」
ということですね(笑)。
坂本
でも、これまでの『メイドインワリオ』も
じつはマジメにつくってきたんですけどね。
岩田
そうですよね。『メイドインワリオ』シリーズは、
大マジメにヘンなことを、やっているんですよね。
森
そうです、そうです(笑)。
でも、あの時はそれではたぶん、
ダメだったんです。
阿部
そうですね。
だから、マニアックなネタとか、おもしろいネタでも、
特定の人にしかウケないようなことは
できるだけ排除しながらつくっていました。
岩田
このプロジェクトの最初の構造が
やはりこのチームには
窮屈だったのかもしれませんね。
阿部
そうですね。
岩田
坂本さん、傍(はた)から見ていて、
どう見えましたか?
坂本
「この人たちにそんなソフトは向いてるのかなあ」と(笑)。
岩田
坂本さんが言うと説得力がありますねぇ(笑)。
坂本
だから、自分としても気になっていましたし、
「困ってるんやろうな」と思っていたんですけど、
そのような枠組みのソフトに対しては、
自分も調子にのって
意見を言えないところもありまして。
岩田
だから、心配しつつも、
ちょっと距離を置いて見ていたんですね。
坂本
そうです。
その当時は、深くかかわっていなかったです。
阿部さんから「こういうゲームを考えています」
という話を聞いて、
「それはおもしろいんじゃないの」
という感想を述べたりはしていましたけど、
じつは心のなかでは、
「これ本当に、マジメにつくるのかなあ」と。
岩田
ははは(笑)。
まるで他人事のように。
坂本
実際、そうだったんです。
森
でも、坂本さんに
最初に『パイレーツ』の原型を触ってもらったとき、
「もっと乱れろ」と言っていましたよね?
坂本
え、そんなこと言った?
森
はい(笑)。
一同
(笑)
岩田
やっぱり言っちゃうんだ(笑)。
坂本
・・・言ってたみたいですね(笑)。
古い話なので忘れてましたけど。
森
でも、「ありがたいな」と思いました。
岩田
「待ってました!」みたいな感じですか?
森
そうです、そうです。
「もうちょっとはっちゃけていいんだ」って(笑)。
岩田
その時、「誰か、自分の背中を押してくれ」
と、みんなが思っていたのかもしれませんね。