6. 「『3Dワールド』でないと意味がない」
岩田
今回の『マリオ』では、わたしから
「Miiverse(※21)を活かしたアイデアを」という
リクエストをしていたんですが、
ちょっと変わったものが、できましたよね。
林田
Miiverseに押せるハンコですね。
ゲーム中のいろいろなキャラクターのハンコで、
ポンと押すだけでMiiverseに投稿できます。
ハンコは、コースの行きにくいところに
隠されているんです。
岩田
あれは、どんなきっかけでできたんですか?
林田
もともとMiiverseを使って
何かやりたいとは考えていて、
試しに自分でも投稿してみたんですけど、
世の中には、きれいな絵を描く人が山ほどいるし、
絵の描けないわたしは、
そこにはうまく入れなかったんですね。
岩田
わかります。それは、
きれいな絵を描ける宮本さんや小泉さんと、
プログラマー出身で絵が描けない
わたしや林田さんとの大きな差ですよね。
林田
だから、それを解決する手はないかと、
自分でプログラムをいじりながら、
画策していたんです。
それである時、資料を見ていたら、
何気なく線画のマリオが目に入ったんですね。
岩田
はい。
林田
それで「これ、ここに出せないかな」と思って
試しにその線画のデータをMiiverseの表示に
組み込んでみたら、けっこういい感じでできたんです。
開発のスタッフからも好評で。
岩田
絵の描けない人たちからは、
反響があると思いますよ。
林田
そうなんです。ハンコを押して、
そこにひとこと書くだけで、
すごく伝わるものになるんです。
岩田
ちょっとした絵が入るだけで、
がらっと印象が変わりますからね。
林田
それで「これはいけるぞ」ということで、
Miiverseチームのみなさんに相談したところ、
「せっかくなので『3Dワールド』だけじゃなくて
ほかのゲームでも使えるようにしましょう」
ということで機能を実装してもらえたんです。
ちなみに、『どうぶつの森 こもれび広場』(※22)でも
このインタビューが掲載される頃には
このハンコの機能が追加されると聞いています。
宮本
ハンコは、『マリオペイント』(※23)みたいに、
重ね書きしたり、消して一部を
手直ししたりできるんですよ。
岩田
じゃあ、フキダシに文字を書く以外にも、
ハンコの絵に手を加えたり、
いろんな使いかたができるわけですね。
宮本
(林田さんに)ハンコは全部で何個あるんやったっけ?
林田
80個以上ありますね。
ゲーム後半の奥のほうで取れる
レアものなどもあるので、
みつけたらぜひ投稿して自慢してほしいですね。
岩田
ほかにも、ネットにつなぐことで楽しめる
新たな遊びがあるんですよね。
元倉
ゴーストMiiというものがあります。
今回のマリオは、“ようせいの国”に行って、
「ようせい姫」を救うというお話なんですけど、
その世界に自分のMiiや、ネットにつながってる
ほかの人のMiiがようせいとして現れます。
クリアしたときの動きはゴーストMiiとして
再現されるという仕組みになっています。
岩田
ほかの人の行動が見られるんですね。
元倉
4本の脚で駆けていくMiiもいますし、
何もなさそうなところから
ひょっこり飛び降りてくることも・・・。
岩田
「どっから来たんだ?」って驚きますね(笑)。
元倉
はい。でもそうすると、
「ああ、ここに何かあるな」って発見する
きっかけにもなるんですね。
岩田
ああ、なるほど。
Miiの動きが、攻略の参考にもなるわけですね。
林田
ただ様子を見てるだけでもおもしろいですよ。
たとえばガケがあって、
その手前でうろうろしているMiiがいると、
「この人、ここでためらってるな」とわかったり。
元倉
開発中ならではの話なんですけど、
新しいオブジェクトが入ると、
みんながチェックしにそこにやってくるんですね。
そこでいろいろ動いて、確認してることがわかるんです。
仕事しているなあと・・・。
岩田
ははは(笑)。
林田
あと一応、タイムアタックゴーストという
自分のクリアタイムよりちょっとだけ早い
ほかのプレイヤーのゴーストも出てきます。
岩田
自分よりちょっと
うまい人のプレイを参考にできるんですね?
林田
はい。
あと、ゴーストがたまにプレゼントボックスを
持っていることがあるので、
それを追いかけてボックスを取ればお得です。
岩田
ところで、今回の
『3Dワールド』というタイトルは、
どんな経緯でついたネーミングなんですか?
「3D(立体視)じゃないのに、
3Dとつけるのはまぎらわしいのでは?」
という指摘もあったと聞いていますが。
宮本
そうですね。でもチームとしては、
最初から「『3Dワールド』にしたい」という、
強い想いがあったんです。
岩田
はい。
宮本
これは林田さんが、
前回の『3Dランド』の「社長が訊く」で、
「2Dマリオと3Dマリオのミッシングリンク」
という言葉を使って『3Dランド』のコンセプトを
説明しているんですけど、『3Dランド』は
「誰でも遊べる2Dマリオのよさを活かした3Dマリオ」
だったんですね。
今度は据置機でその対となる存在を目指すわけで、
そこでこれまでの『マリオ』の歴史を考えたら、
携帯機は「ランド」、据置機は「ワールド」という
ネーミングがそれぞれの完成形態だと思うんです。
岩田
なるほど。
宮本
途中、いろいろ反対意見もあって、
折れそうなときがあったんですけど、
やっぱり、誰にでも安心して遊べて、
3Dマリオのおもしろさの集大成という手ごたえのある
強い想いを込めたネーミングなので、
「『3Dワールド』でないと意味がない」
というところで、最終的に
着地させてもらうことができました。
元倉
「ワールド」という名前は、
自分がお客さんの時代に遊び親しんだ名前ですから、
『3Dワールド』に決まったときは、
ちょっと感激と同時に、緊張もしました。
宮本
巨人の背番号3番(※24)をもらうような感じ?
元倉
そうですね(笑)。
一同
(笑)