社長が訊く
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社長が訊く『スーパーマリオ 3Dワールド』

社長が訊く『スーパーマリオ 3Dワールド』

目次

5. マルチプレイの原点

岩田

ところで、キャラクターの話つながりで
お訊きしたいんですが、
緑のあの人」は、今回は何か
特別なことは用意されているんですか?

林田

もちろんです。
彼は今回、我々のチームでも特別待遇です。

林田03

岩田

そうなんですね(笑)。
いったいどんなことを?

林田

ニンテンドーダイレクトでの岩田さんの
ルイージ・イヤー宣言(※18)の前に、
わたしはWii Uで、ファミコンゲームを
動かすテストをしていたんです。
その時テストで動かしていたのが、
ちょうど『マリオブラザーズ』(※19)だったんですよ。

※18
ルイージ・イヤー宣言=今年(2013年)が、ルイージが1983年にアーケード版『マリオブラザーズ』で初登場してから30周年にあたることから、「Nintendo 3DS Direct Luigi special 2013.2.14」と題して放映されたニンテンドーダイレクトで岩田がルイージの帽子をかぶって登場し、「ルイージの年」を発表した。
※19
『マリオブラザーズ』=アーケード版・ファミコン版、ともに任天堂から1983年に発売されたアクションゲーム。

岩田

おお、ルイージの原点じゃないですか。

林田

まさにそうですよね。
だから「これはもう、温故知新だ」と思って
今回はマリオに代わってルイージを主役にすえた
ルイージブラザーズ』というゲームを入れました。
キャラクターもタイトルも、
全部自分でプログラムを書き換えまして。
2人プレイをすると、1Pが現在の「ルイージカラー」、
2Pが当時の「ルイージカラー」になって、
新旧ルイージ対決をお楽しみいただけます。

岩田

そこまでしたんですね。
それは、どうしたら遊べるんですか?

林田

先ほどのロゼッタと同じく、
一度エンディングを迎えると、
タイトル画面に追加されて遊べるようになります。
ちなみに『New スーパールイージ U』(※20)のセーブデータを
持っていれば、なんと最初から遊べます。

※20
『New スーパールイージ U』=『Newスーパーマリオブラザーズ U』の追加コンテンツとして、Wii Uのニンテンドーeショップから2013年6月に配信され、パッケージ版も年内(2013年)限定で7月に発売された。

岩田

それもまた、特別扱いですね(笑)。

林田

あと、そんなことを僕がやっていたら、
エフェクト担当のスタッフが、ゲーム中の随所に
ルイージのドット画を仕込んだみたいで、
いろんなところに
隠しドットルイージがいるんですよ。
みつけるとちょっとうれしくなりますので、
探してみてほしいですね。

岩田

なんと、そこまで・・・。

元倉

まあでも、『マリオブラザーズ』は、
「マルチプレイのマリオ」の原点であることは
まちがいないですから。

岩田

たしかに。“協力”と“ジャマし合い”という
相反する要素が同じステージ内で
絶妙に成立していますから、
そこはもう、あらゆるマルチプレイの
お手本とも言えるゲーム性だと思います。

元倉

じつは今回の『3Dワールド』のマルチプレイでも、
わりとそれに近い遊びがあるんですよ。
コースをクリアしたとき、
1位のプレイヤーには王冠が与えられるんですけど、
次のコースで王冠をかぶったままゴールすると、
そのプレイヤーにスコアボーナスが入る仕組みなんですね。

岩田

元倉

そうです。ヒップドロップして奪ったり
ジャマし合ったりとか。
でも残りプレイヤー数が減ってくると、
急にみんな協力しはじめたりもするんです(笑)。

岩田

ジャマし合いと協力のかけひきが、
それぞれのプレイヤーの思惑や状況によって
変わってくるんですね。

元倉

そうなんです。
だからマルチプレイのテストをしていて
「林田さん、これって
 『マリオブラザーズ』みたいですね!」って
思わず口にしてしまうくらいで。
まあ、その言葉どおりなんですけれど。

一同

(笑)

元倉04

林田

あれは自分の中でも衝撃でしたね。
同じゲームでも、
まったくちがう遊びに変わるんですね。

岩田

今回の場合は、プレイヤーキャラクターに
能力差がありますから、
キャラクター選択から奪い合いに
なるんじゃないですか?

林田

そこは今回、コースごとに
キャラクター選択がランダムで行われる
“シャッフルボタン”というものを用意しました。

岩田

ああ、自動でキャラクターを
割り振ってくれるんですか?

林田

そうです。シャッフルボタンは
誰でも押せるので、
マルチプレイのときに
重宝する機能だと思います。

岩田

シャッフルなら、うらみっこなしですからね(笑)。

元倉

あと副次的な要素なんですけど、
ゲーム中は誰がどのキャラクターなのか、
わかりづらい仕組みになってるんですね。
なので、相手にちょっとした嫌がらせをするときにも
便利な仕様になっていたりとか(笑)。

岩田

ははは(笑)。
性格がすごく出ますよね、きっと。
みんなと協力してやるのか、相手のジャマをするのか。

元倉

画面の外でも、高度な心理戦が展開されますね。
宮本さんが先ほど言ったように、
もともとのキャラクターの能力差もあるし、
ランダムのキャラクター割り振りもあるので、
シビアな競争を強いるものではないんです。

岩田

「競争の仕組みはあるけれど、
 必ずしも競争することが前提の
 仕組みにはなってませんよ」ということですね。
プレイヤーの遊びかたによって、
ゲーム性はいかようにでも変わるというか。
そこが『マリオブラザーズ』に通じる、
マルチプレイの楽しさの共通点なんでしょうね。

元倉

まあ、遊び慣れた開発者同士だと、
必然的に王冠の奪い合いにはなりますが。
最後、ゴール前とかで
激しい小競り合いの応酬があったり。

一同

(笑)

林田

王冠以外にも、ダブルマリオの
分身の奪い合い
なんかもできるので、
ヒップドロップで相手のダブルを奪って
形勢逆転、みたいなこともできますね。

岩田

ちなみに、1人用でも
シャッフルってあるんですか?

林田

はい、あります。

宮本

僕、1人用でシャッフルをかけて
遊んでたんですけど、
ランダム性が意外におもしろいんですよ。
「えっ、これでやるわけ?」っていう。
ふだん使わないキャラクターで遊ぶと、
新鮮な発見もあるので。

岩田

たしかに、そういう楽しみかたもできますね。

元倉

あとは今回、新しい試みという意味では、
コース上のいろんなものを持ったり、
かぶったりすることができるようになっています。
鉢植入りのパックンフラワー なんかも
持ち運べます。

岩田

えっ、持ち運びできるんですか。

元倉

はい(笑)。敵を食べたり、
ほかのキャラクターのジャマをしたり。

岩田

ボックスをかぶれば、
いろんな仕掛けを活用できるんですよね。

元倉

はい、砲台なんかもかぶります。
かぶると歩きながら勝手に
弾を撃ち続けるので、強いんですけど、
ほかのキャラクターにも当たってしまうという・・・。

岩田

ははは(笑)。迷惑なかぶりものですね。

元倉

あとはおまけで、クリボーもかぶれます。

岩田

クリボーを・・・ですか?

元倉

はい。クリボーを倒すとたまに
クリボーのハリボテを落とすので、
それをかぶると、クリボーにはみつかりません。

岩田

ははは(笑)。

林田

クリボーのネタは、3Dマリオをつくるたびに
必ず出てきたアイデアなんですけど、
5年か6年越しでやっと実現できた、とっておきですね。