竹田 |
はい、わかりました。
いま、デモを見ていただいたとおりなんですが、
これはWii用の開発ツールのひとつです。
こういうものの開発を任天堂はソフトの開発と同様に
力を入れてやっているわけなんですけれど、
ちょっとその背景というのをお話ししますね。
以前、ニンテンドウ64というハードを出したとき、
ゲームの表現は二次元から三次元へ
非常に劇的に変化したんですが、
そのときのソフトメーカーを含む
開発の状況をいま振り返ってみると、
新しい表現がすぐにできるメーカーさんと
時間がかかってしまうメーカーさんに
大きく分かれてしまったんですね。
それで、結果的に、ソフトが出てくるのが
すごく遅れてしまった。
今回、Wiiという新しい挑戦をするにあたり、
またあのころのように、新たな表現や入力装置を
使いこなせる人たちと使いこなせない人たちに
分かれてしまうのではないかという危惧があるんです。
たとえば任天堂には太田さんのような、
新しい装置の基礎研究を
どんどん進めてくれる人がいるから安心なんですけれど、
そういう人がいない場合ももちろんあるわけで。
ですから、新しい開発環境を整える意味で、
こういう便利なツールを
速やかに提供していきたいと考えているんです。
開発の入り口でつまずいて、せっかくのアイデアが
形にならないというのは非常にもったいないですから。
また、違った理由としては、
プログラマーという理系の人たちだけではなく、
文系の人たちの発想をゲームの中に豊かに
取り込んでいきたいという意図もあります。
これまでの、文系の人が発想したものを、
プログラマーさんにお願いするという形だけではなく、
文系の人がひとつのアイデアをもとに、
こういうツールをかちゃかちゃ動かしながら
自分でシンプルな試作を作ることができれば、
いろんな挑戦が商品に活きていくと思うんですね。
つまり、こういったものが用意できれば、
プログラムを書かなくても動作するゲームを
形にすることができるわけです。
まったく新しい入力装置を提案したわけですから、
こういった新しい開発の技術も
提案していかなくてはいけないのではないかと思ってます。
任天堂の内部ではプログラムできる人間がたくさんいて、
アイデアがすぐに形になるわけですが、
今後はこういったものを外のみなさんとシェアすることによって
新しい商品の開発を助けていきたいと考えています。
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江口 |
たしかに、こういうものがあると、
ぼくなんかはプログラムを書かない人間なので、
自分で実験することができてうれしいですね。
たぶん、世の中には「こういう遊びはどうだろう?」
って考えている人は、意外に多いと思うんですよ。
実際、自作のゲームをネット上に公開している方も
たくさんいらっしゃるわけですし。
もしもそういう人たちがWiiのリモコンを使った
新しい遊びを簡単にまとめられるとしたら、
ゲームを作る人口が増えることになりますから
それはすごく楽しみですね。
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岩田 |
私自身がプログラマーだからわかるんですが、
太田さんや私がゲーム作りを始めた時代というのは、
いまよりももっともっと単純なものが
商品として出すことを許されていて、
そのシンプルなところから段階を経て進化してきたので
いまの複雑な技術にもついていけているわけです。
ところがいまはいきなり入り口が複雑で、
できる人とできない人のギャップが
ものすごく広がってしまっているんですね。
というときに、こういうツールがポンと投げ込まれると、
思いがけない新しい商品が生まれる
いいきっかけになると思うんです。
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竹田 |
こういうツールがあれば、
アイデアや素材の相性というものを
すぐに実験して試せると思うんです。
長い時間をかけて実験したけど
やっぱりだめだったということになると、
やはり効率が悪くなりますよね。
時間がかかれば人件費もかかりますし、
そういう意味でも開発環境を整えることは
重要になってくるんじゃないかと思います。
つまり、アイデアと商品をつなぐツールですね。
お見せしたデモはそのひとつの例です。
こういったものを、
広くWiiのソフトメーカーのみなさんと
シェアしていきたいなと思っています。
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太田 |
たしかに、こういうツールがあれば、
いろんな実験をたくさんできると思います。
『Wii Sports』もいろんな実験をした中から
選ばれて生まれてきた商品なので、
ありがたみがわかりますね。
商品として磨く作業はあとから必要になるにしても、
まずは簡単な手応えを感じることがすごく重要ですから。
最初からこの開発ツールがあれば、
『Wii Sports』に収録される競技の数も
増えていたかもしれませんね。
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江口 |
それはそれで、プロデューサーの悩みが増えそう……。
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一同 |
(笑)
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岩田 |
竹田さん、どうもありがとうございました。
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竹田 |
ありがとうございました。
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岩田 |
それでは最後に、
作り手からのメッセージをひと言ずつお願いします。
じゃあ、太田さんから。
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太田 |
ゲームファンと、ゲームファンのまわりにいる人たちが
同じように楽しむことができる仕上がりになりました。
間口は広いですが、やり込む要素もたくさんあります。
テニスの変わった楽しみ方を紹介すると、
ダブルスの全員を自分で操作して、
ひとりで4人分楽しむなんていうこともできますので、
いろいろと遊んでみてください。
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山下 |
いろんなテストプレイを見ていて感じたのは、
テニス、ゴルフ、野球、ボウリング、ボクシングという
5つのスポーツがそろっていると、
全年齢のお客さんを確実に対象にできるということです。
ぜひ、家族ぐるみで遊んでほしいなと思います。
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