山下 |
はい。『タレントスタジオ』というのは64DDという、
ニンテンドウ64のアタッチメントハードウェア用に
開発されたソフトだったんですけれど。
64DD用のソフトに、『マリオアーティスト』シリーズという
プレイヤーがいろんなものを
自分で作ることができるシリーズがあったんです。
具体的には、絵を描く『ペイントスタジオ』、
3Dのモデルを作る『ポリゴンスタジオ』、
そして、人、というかキャラクターを作っていく
『タレントスタジオ』という3本のソフトです。
その『タレントスタジオ』にぼくは関わっていたんですけれど
まあ、その……たいへんに苦労しまして。
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一同 |
(笑)
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山下 |
当時から、すでに写真を取り込む仕様もありました。
といってもSDメモリーカードなんてありませんでしたから、
ゲームボーイ用のポケットカメラを使って撮って、
キャプチャーカセットというものを64DDに挿して、
というかなり大がかりなものだったんです。
その仕組み作りにももちろん苦労したんですけど、
いちばん悩んだのは、せっかく作ったそのキャラクターを
どういうふうに遊びに活かすのかということでした。
それはもう、いろいろと試してみたんですけど、
キャラクターを使ってちょっとしたミニゲームをやらせてみたり、
あの、玉に乗って移動させるやつ、なんて言うんでしたっけ?
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岩田 |
「玉乗り」でしょう。
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山下 |
ああ、玉乗り! 玉乗りをさせてみたり。
最終的にはムービーモードというのをつけて
そこでキャラクターを活かすようにしたんですけど、
けっきょく、ゲームにはうまく活かせなかったんですね。
で、いま振り返ってみると、当時新人でしたし、
正直、すごく苦労した思い出として残ってるんです。
あ、もちろん楽しいこともあったんですけど……。
ですから、Wiiで「似顔絵」の話が出たときに、
もう、「ドキッ!」と、胸にこみ上げるものが……。
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一同 |
(笑)
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山下 |
最初だけはドキドキしたんですけれども、
Wiiのコンセプトを含めて話を聞くうちに、
ああ、なるほどと納得しまして。
というのも、『タレントスタジオ』を作っていた10年前には
「家族をつなぐ」というような
コンセプトがありませんでしたから。
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岩田 |
10年前は、単に、
「ゲームの中に出てくる人を作るのはおもしろそうだぞ」
ということで開発がスタートしたんですよね。
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山下 |
はい。もう、3Dの絵が作れて、
動かせるというだけでうれしいような時代でしたから。
それが10年経って、いろんなものが削ぎ落とされて、
大事なものだけがWiiに受け継がれたような気もします。
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岩田 |
『タレントスタジオ』のときに得た教訓は
今回の開発にもどこかで活きていますか?
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山下 |
あると思います。
『タレントスタジオ』の反省点のひとつに、
いろんなタッチを欲張りすぎた、というのがあるんです。
つまり、似顔絵的なことをやろうとすると、
ものすごくいろんなことをやりたくなるんですよ。
リアルな似顔絵も描きたい、マンガ風にもしてみたい、
アメコミみたいなタッチでも作ってみたい、という感じで。
で、10年前は仕上がりがバラバラになってしまった。
手間もずいぶんかかってしまいましたし。
ですから、今回『Wii Sports』で似顔絵をやるというときも
「タッチを整えないと終わらないですよ」
というふうに、かなりみんなに言っていて。
そんなときに、あのニンテンドーDS用の
似顔絵ソフトが紹介されたんですけど、
もう、見た瞬間に、「あ、これです! まさに完成形!」と。
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一同 |
(笑)
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岩田 |
実際に作った似顔絵のキャラクターが
ニンテンドーDSの中で動くところまでできていましたから、
ものすごく説得力がありましたよね。
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山下 |
はい。ものすごく。
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岩田 |
あの時点ですでにソフトが動いていて、
みんながそれを見て、
「あ、これならいけるわ」と思わなかったら、
たぶんあんなに一気に収束してないですよね。
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山下 |
「こけし構想」自体は、
宮本さんが昔からずっとおっしゃってたんですけど、
なかなか結論が出ないままになっていたんですよね。
どうやってどこまで作ったらいいのかがわかってなかった。
そういえば、『タレントスタジオ』のあとに
『マネビト』というのもありましたし(笑)。
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岩田 |
ああ、『マネビト』も、そういうソフトでしたね。
これは嶋村さんかな? 説明をお願いします(笑)。
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