岩田
さあ、これから世の中で何が起こるのか、楽しみですね。
藤澤
はい。『IX』や『モンスターズ』と同じように、
人が絡むと途端に何が起こるかわからなくなるゲームって、
発売後も自分ですごく遊ぶんです。だから『X』が出たら、
僕はプレイヤーとして遊ぶのが、とても楽しみです。
堀井
そうなんですよ。
ボクも『テリーのワンダーランド3D』をずっとやっています。
すれちがいバトルはもう、450勝以上です(笑)。
岩田
もともとゲームの中に入ってないものが、
人によって足されていくからですよね。
堀井
そう、それは大きいですね。
岩田
ひょっとすると『X』に慣れたら将来、
「オンラインで遊べないの?」
っていう時代がくるかもしれないです。
堀井
逆にオンラインが、
当たり前になっちゃうかもわかんないですよね。
藤澤
振り返ってみれば、『VII』(※21)で搭載した「仲間会話システム」。
あれは当時、チャットが話題になりはじめたころで、
「仲間と情報を共有しながら冒険する感覚」を
味わうための仕組みだったんですよね。
『IV』(※22)のAIだって、あたかも人がプレイしている
ような感覚を味わうためのものでした。
そう考えると、「『ドラゴンクエスト』はずっと、
オンラインゲームになりたかったんじゃないのかな・・・」
ってずっと思っていたんです。
※21
『VII』=『ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち』。2000年8月にプレイステーション用ソフトとして発売されたRPG。『ドラクエ』シリーズ7作目。
※22
『IV』=『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』。1990年2月にファミコン用ソフトとして発売されたRPG。『ドラクエ』シリーズ4作目。
岩田
少なくとも、人の気配を入れたかったんですね。
藤澤
はい。なので、『ドラゴンクエスト』が
オンラインゲームになるのは、堀井さんの意志か、
『ドラゴンクエスト』の意志かわからないですけど、
「『ドラゴンクエスト』自体が
そうなりたがっていた“夢”だったのかなぁ」って、
僕は感じながらつくっていました。
堀井
うん、“もうひとつの世界”をつくりたかったんだよね。
町の人の台詞を書くときも、なるべく本物の人を感じられる、
温かみのある台詞を意識して書いたんです。
『IV』ではそれぞれの登場人物に別の人生があった、
という章立てにしたり、AIという、
思いどおりにならない仲間たちをつくったりして、
いろんな“人”の気配をつくってきたんです。
岩田
『X』では、ついに本当の“人”になったわけですね。
では最後に、お客さんへのメッセージをいただこうと思います。
藤澤さんからいいですか?
藤澤
はい。『ドラゴンクエスト』を好きだという方に対して、
オンラインであることが何の障害になってもいけない、
ということが今回、決意としてあります。
だから『ドラゴンクエスト』を
いままで遊んでくれたことがある方全員が、
遊べる世界をつくったつもりです。
ですから、「オンラインである」という部分がどうしても心配な方は、
少し様子を見ていただいて、
「大丈夫そうだ」というウワサを聞いたら、
ちょっとずつ入ってきていただけたらいいなと思います。
そのときはまた、新しい『ドラゴンクエスト』の世界で
お迎えできるようにしたいと思います。
長くやっていますので、
「気が向いたときにきていただければ」と思います。
岩田
『X』では毎日が新しい世界であり、
しかもそこにいるのは実際の人ですから、
「参加する時期が出遅れたらつまんない」と思う必要はなくて、
「まずは見極めてください」というわけですね。
藤澤
はい。あと、
「オンラインゲームだから長く遊ばなきゃいけない」
とプレッシャーに感じておられる方も
いらっしゃるかもしれませんが、
いつもの『ドラクエ』と同じように
エンディングまで遊ぶだけでも、僕はいいと思うんです。
岩田
居心地がよかったら、
ずっと遊んでいただいてもいいわけですしね。
藤澤
はい。たとえば、新しいストーリーが実装されたら、
戻ってきていただく、というつき合い方もあります。
“やりたいときにやれる『ドラゴンクエスト』”と、
受け取っていただいてもいいのかなと思います。
岩田
やりたいときに出かけていくと、
いつも新作が味わえる『ドラゴンクエスト』、
そう言えるものになったかもしれませんね。
まあ、ちょっと大げさに言いすぎているかもしれないけど。
藤澤
はい、ちょっと“夢”みたいですが、
まさにそんな感じです(笑)。
齊藤
毎週、クエスト配信がありますしね。
藤澤
「いつもの『ドラゴンクエスト』の感覚と同じです」
と、くり返し、くり返し言いたいです。
“いつもと変わらない『ドラゴンクエスト』”なので、
遊びにきてください。
岩田
ありがとうございます。では、齊藤さん。
齊藤
あ、もう・・・それで。
全部、言い尽くされちゃいました(笑)。
堀井
いやあ、もうほとんど言い尽くされて・・・(笑)。
藤澤
ああっ、ごめんなさい、ごめんなさい。
全部言っちゃった?
一同
(笑)
齊藤
でもまあ、開発的な部分では、
いまや発売を待つだけなんですけど、
ようやく、これからがスタートラインなんです。
岩田
やっとスタートラインに立ったわけですね。
齊藤
そうです。
ベータテスト版でもそうですけど、
わたしたち3人は嘘だと思われるくらい、
オンラインに入っています。
本当に頻繁に、お客さんと遊んだり、
声を聞いたりしているので、
発売以降も、その姿勢は崩すつもりはありません。
岩田
「ゲームで会いましょう」ですね(笑)。
齊藤
はい。さすがにいま、キャラクターに使っている名前を
製品版でも使うようなことはないですけど、
いつもみなさんのそばで、耳を傾けながら、
「さらによくなる『ドラゴンクエストX』の世界を
つくっていけたらいいな」と思っているので、
「ぜひとも体感していただければ」と思います。
岩田
ありがとうございます。
さあ、堀井さんは長年の構想が、
やっと形になってお客さんに届きます。
堀井
そうですね。
「ずいぶん環境も変わってしまった」と思うんですよ。
たとえばシナリオも、いまはインターネットが普及してるから、
どんでん返しのシナリオを書いても、すぐバレちゃうんです。
でもオンラインというのは、
遊んでいるほうも何が起こるかわからないという、
いわばネタバレしないシステムなんです。
岩田
みんなが同時性をもって、
「新たなおどろきと、
出会えるチャンスをつくりつづけられる」
ということですね。
堀井
そうですね。
「ワクワクする世界になれば・・・」と思います。
岩田
はい、ありがとうございます。
わたしは、日本におけるオンラインゲームに対する、
社会の理解がどう変わるのかが、最大の興味なんです。
オンラインゲームを遠巻きに見ていた方たちが思っている、
ネガティブな面や、敷居の高さだったり、誤解だったり、
そういうものを『X』が変えてくれそうな気がしています。
堀井
新しいルールが生まれるかもしれないですしね。
一般の方も、普通に遊べるゲームになれば、
「そこに新しい秩序やルールが生まれるんじゃないか」
と思うんです。
岩田
そうですね。
今回、オンラインゲームとしては“異端”のことに、
いくつもチャレンジされていますけど、
それは過去の常識における“異端”であって、
過去に非常識だったことが“常識”に変わっていくことこそ、
“イノベーション”ですから。そうなったら、
「長年みなさんがつくってきたことの価値が実るんじゃないか」
と思います。
堀井
はい。ぜひ、そうなりたいですね。
岩田
それにしても、
堀井さんといっしょに仕事をしている人は、
やっぱり普通では味わえない体験ができますね。
齊藤
もう何年も仕事をしていますけど、
会議の一言一言でも、
「すごいなぁ」と思うときがありますから。
岩田
仕事って、たまに「ああ!」って思う体験があるんですけど、
堀井さんとの仕事は、
普通の何十倍という体験の密度なんじゃないですかね。
だから、しんどい要求もやってしまうのかもしれませんね。
藤澤
ちゃんと、堀井さんの思っている方向に
行けていればいいんですけれども、大丈夫ですか?
堀井
うん、大丈夫じゃないかな。
大丈夫、大丈夫!(笑)
岩田
いやあ、やっぱり堀井さんの話は面白いです。
今日はみなさん、どうもありがとうございました。
一同
ありがとうございました。