糸井
しかし、マリオというキャラクターに
代案がなかったというのは、いい話ですねぇ。
鉛筆で描いたB案しかなかったっていう(笑)。
宮本
(笑)
糸井
いまって、
「こんなにいっぱいあるなかから選んだんですよ」
って言われることが望まれる時代ですから。
宮本
そうですよね。
糸井
それ、宮本さんのチームのスタッフがやったら、
どうするんでしょうね?
宮本
ああ、絵を1枚持ってきて、
「これで行きます、決まりです」みたいなこと?
糸井
ま、2枚でもいいかな。
もちろん、その絵がいいという前提で。
宮本
それは、その人の日頃がよかったら、
そのままOK出すかな。
糸井
あー、ぼくもそうです。
A案、B案の中に、当たりだと思うのがあれば、
Cも、Dも、いらないですよね。
宮本
うん、いらないですよね。
糸井
それを言える上司の下にいたら人は育つよ。
宮本
けど、みんな、何点か持ってきて、
「選んでもらわないと」って、準備してくるんですよ。
もう、数は、いらんからって言うんですけどね。
1点しかなくても、「もうこれが決まりです」っていうのがあったら、
ほんとによかったら、それでいいのよ、って、
よく言うんですけど、やっぱりなんか、
「何点かは準備して」みたいな人が多いですね。
糸井
それさ・・・何点がいい?
宮本
(笑)
糸井
「1点にしろ!」っていうのも違うと思うんだ。
宮本
だから、まぁ、何点であっても、
「これにしてほしい」っていうのが強くあればいいですけど、
「どれでもご注文の通りにします」っていう感じだから困るんですよね。
そうなると、変な話、ぼくの責任になるんですよ。
責任を負うのがイヤだということじゃなくて、
「これ、おまえの責任でつくってるんじゃないの?」
って思うんです。
糸井
うん。ラーメン屋でさ、
味付けを細かく決めてくれって言われたら
ちょっと腹立ちますよね。
「お客さん、塩加減はどうしますかね」って。
宮本
(笑)
糸井
それ、イヤですよね。
あっさりか、こってりか、ぐらいにしてほしいですよね。
宮本
そういう感じですよね。
糸井
ああ、いましゃべってて、思ったんですけど、
ぼくは、2点がいいなぁ。
宮本
2点。
糸井
うん。
A案、B案の2点がいいなぁ。
宮本
ああ、それぐらいがいいんじゃないですか。
こちらの立場も立ててもらって。
糸井
ね。
宮本
2点あって、「こっち」って言ったら、
「ぼくもそう思ってました」っていうのが。
糸井
最高ですね。
宮本
ですよね。
「これでいける?」って訊いたら、
「いけます!」って答えてほしいんですよ。
糸井
いいねぇ!
宮本
「これでいける?」って言ったときに、
「・・・これでよろしければ」って言われると
ガクってくるんですよね(笑)。
糸井
だから、きちんと自分の決意をたずさえつつ、2点で。
オレと宮本さんの目の黒いうちは
あらゆるプレゼンは2点に。
宮本
うん、2点で(笑)。
あと、企画書は紙1枚でいいって、
ずーっと言ってるんです。
糸井
うん。
宮本
まぁ、3枚までは許すと。
書ききれないときに、あんまり字がちっちゃかったら読めないので。
糸井
そうね(笑)。
宮本
けっきょく、プレゼンで無駄な努力をしてるという話ですよね。
あの、広告代理店的なプレゼンっていうのを
どっかで習うのか、憧れるのかわからないですけど、
スポンサーにお金を出してもらうためにやってるプレゼンと、
つくるものを相手に説明するためのプレゼンは違うんですけど、
それを、ごっちゃにして考えてる人が多くて。
形を整えるっていうことをやりはじめると、
どんどんそこにエネルギーがかかっていくから。
糸井
うん。放っとくと、企画書は総天然色になるからね。
宮本
企画書って、そういうところがありますよね。
徹夜でつくったら、もうそれだけで、
すごい達成感があるんですよね。
糸井
そこはぜひ、叱りとばしたいですね。
「その時間を、きみの妻や子にあててあげたまえ!」と。
宮本
(笑)
糸井
アメリカのテレビドラマみたいにね。
三つ揃えとか着て、
「ぼくは、きみのところのジェーンは
すばらしい奥さんだと思うよ。
彼女のために、そのプレゼンにあてた時間を
プレゼントしてあげたらどうかな」と。
宮本
ははははは。
糸井
言いながら、すっと立ち上がる。
するとこっち側で見てた切れ者の女性秘書が、
「やっぱりすてきな上司だわ」と・・・。
その役がしたいなぁ・・・したいだけだな。
宮本
できないですよね。
糸井
できないね。
宮本
恥ずかしくて。
糸井
うん。恥ずかしい(笑)。