ゲームのサウンド制作ゲームの音楽と効果音
ゲームのサウンド制作の仕事は多岐にわたりますが、その中でも中心になるのが、音楽や効果音といった、音そのものを作ることです。ここでは、ゲームにおいて音楽や効果音が担う役割と、それらのつくりかたについて紹介します。
ゲームの音楽の役割
ゲームの音楽には、楽しさや気持ち良さ・緊張感・ゲームを遊ぶプレイヤーの心情などを音楽で伝え、表現する役割があります。ゲームにはさまざまな世界観やキャラクターが登場しますので、グラフィックデザインの方向性に合わせた音楽性も求められます。一つのゲームの中でも、さまざまな状況・場面がありますので、音楽も、それに合わせて幅広い内容のものを作る必要があります。
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また、ゲームの音楽は、長いものばかりではなく、ファンファーレやジングルのような短い音楽もとても重要です。このような音楽はゲーム中の重要な場面で使われることが多く、数秒でゲームシーンを印象付ける役割があります。
シリーズ作のタイトルでは、過去作の音楽を編曲して使用することもしばしばあります。オリジナルの良さを尊重しつつ、お馴染みの音楽を新たなアプローチで生まれ変わらせることで、過去作を遊んだことのあるプレイヤーにも新たに楽しんでいただけるように心がけています。
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ゲームの効果音の役割
音楽がゲーム全体を包み込む表現を担っているとすると、効果音は一つひとつがゲームの世界を構成するパーツそのものといえます。ゲーム中のさまざまな箇所で、さまざまな役割を持った、多種多様な効果音が活躍しています。
プレイヤーの操作に対する効果音は、ゲームプレイの快適さに大きく影響します。プレイヤーにはしっかりした手応えを伝える必要がありますが、かといって頻繁に鳴った時にプレイヤーが不快にならないように気をつける必要があります。要点を押さえて、やりすぎない程よい音を作り上げることが大事です。
効果音には、ゲーム世界の感触をプレイヤーに伝える力もあります。たとえば、ゲームの中で何かを叩いたときに、それが硬いのか柔らかいのか、壊れやすいのか壊れにくいのかといった情報を、プレイヤーへ瞬時に、ありありとした感触をもって伝えることができます。これはBGMでは担うことのできない部分で、グラフィックよりも直接的に機能する、効果音特有の力です。
効果音はゲームのキャラクター表現にも密接な関わりがあります。たとえば、現実世界には存在しない生物がゲームに登場する場合、その生物の性格や行動パターンを、効果音で伝えることができます。プレイヤーは、その生物が獰猛(どうもう)なのか温厚なのか、警戒すべき状態か攻撃するチャンスか、といったことを、グラフィックとともに効果音からも感じることができます。
音楽のようにリズム・メロディ・ハーモニーで構成された、短いジングルのような効果音もあります。通常の効果音をSE(Sound Effect)と呼ぶのに対して、こうした音楽的な効果音はME(Musical Effect)と呼ばれます。「アイテムを取る」「パワーアップする」といったような遊びのハイライトとなる状況で、具体的な動作音ではなく、音楽に近い抽象的な表現をすることで、より、プレイヤーの心情に寄り添った印象を伝えることができます。
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音楽や効果音のつくりかた
ゲームの音楽や効果音を作る作業は、PC上でのデータ制作が基本となります。
音楽制作においては、DAW(Digital Audio Workstation)を用います。シンセサイザーや生楽器をシミュレートした音源などをコンピュータに演奏させ、それらのバランスを整えてミックスしていきます。DAW上での音楽制作では手元で素早く調整と確認が行えるので、それぞれのゲームのシーンに対して音楽がより適切になるように細かく作業を重ねながら完成度を高めることができます。
効果音制作において元となる素材は、シンセサイザーやソフトウェア音源、音の素材集など、多岐にわたります。これらの素材をDAW上で組み合わせ、エフェクターを駆使して加工したり、波形編集ソフトを使って細かい編集を行ったりすることで、写実的な音から抽象的な表現まで、多彩な効果音を作り出していきます。
本格的なスタジオワークにおいては、それぞれ専門的なノウハウや経験が求められます。
リアリティのある質感表現が求められる音作りや、ゲーム世界の感触を伝える音作りには、さまざまな道具や材料をそろえて実演する、フォーリー録音が効果的なことも多いです。ただ、ゲームでは現実にはなかなか起こりえない状況の音が求められることも多々あります。理想的な音を作り出すためにさまざまな素材を試したり、マイクの使い方を工夫したりといったところにも、サウンドスタッフの想像力やアイデアが発揮されます。また、録音した素材をそのまま活かすだけではなく、編集や加工のやり方によって意外な表現を生み出すこともできます。
プロの声優や歌手を招いて音声収録を行う際は、収録現場でサウンドスタッフがスタジオディレクターやオペレーターなどを務めることもしばしばあります。スタジオディレクターには、求める演技のイメージを的確に伝える力と、OKテイクを素早く判断する力が必要になります。オペレーターは、収録を円滑に進める役割を担うため、スタジオの録音機材を的確に扱うスキルが求められます。
プロジェクトによっては、オーケストラやプロのミュージシャンによる演奏を収録してゲームの音楽に使うことがあります。作曲を担当するサウンドスタッフは、レコーディングの前に楽譜の作成やデモトラックの準備を行い、収録現場のスタジオではミュージシャンやエンジニアへの指示を行います。ゲームの音楽には一般の商用音楽とは異なる特徴があるので、サウンドスタッフには専門的な知識と判断力に加えて、制作の意図を的確に伝えるコミュニケーション力も求められます。