職種紹介

理工系の仕事知的財産

知的財産とは?

任天堂は、Nintendo Switchなどのゲーム機やゲームソフトに搭載された技術を守る特許権、それらのデザインを守る意匠権、スーパーマリオなどの名前を守る商標権、キャラクター画像や音楽、ゲームプログラムを守る著作権など、多数の貴重な権利を所有しています。これらの権利は目に見えませんが、任天堂の独創的な商品、サービスが他人に模倣されることを防止するとともに、任天堂ブランドの維持・発展のため重要な役割を担っています。

任天堂での知的財産業務

世界各国における特許意匠出願および権利化業務、他者権利の調査・対策業務

新しいゲームのアイデアや新しい技術を発明した場合に与えられる特許権は、当社製品の独創性が模倣されることを防止し、また、企業の技術面における競争力を支える礎(いしずえ)となっています。任天堂は独創の精神を大切にしており、製品開発の現場では、日々独創的な発明が生まれています。このような発明を世界各国の特許庁に出願して、特許権を取得することが知的財産部の役割のひとつになっています。

知的財産部では、開発者ヘのヒアリングをおこなったり、開発資料を精読したり、開発中の製品を自分の手で触ったりプレイして、特許出願の対象となる発明を見つけています。開発者は自身が斬新な発明をしていることに気づいていない場合があります。そのため、開発者の頭の中や開発中の製品に潜在している発明を積極的に拾い上げることが必要です。また、知的財産部員自身が開発中の製品を触ったり、プレイしたりすることは、実際に価値ある発明や、開発者の観点とは異なる発明を出願につなげるために重要になっています。

たとえば、2019年に発売された『リングフィット アドベンチャー』は、リングコンという専用の周辺機器を用いて、斬新なゲーム操作を行う商品です。リングコンのハードウェアや、リングコンを用いた操作、ゲーム内容などについて、チーム内で知恵を出して、多数の特許出願を行いました。

  • 開発中のリングフィットアドベンチャーをプレイして発明を発掘する様子

同様に、スマートデバイス向けゲームについても、知的財産部員自身が開発中のゲームをプレイして隠れた発明を見つける努力をしています。

開発中のスマートデバイス向けゲームをプレイして発明を発掘する様子

また、特許権などの知的財産権は他者が所有するものも多数存在しており、他者の権利を侵害しないための業務も重要です。知的財産部では、開発中製品の仕様を、開発の初期段階で把握し、関連する他者の権利が存在するかについて調査し、開発中製品の仕様と他者の権利との関係を検討したり、先行技術の調査をおこなって他者の権利の有効性についても検討したうえで、開発者にアドバイスを行っています。

また、新しい製品デザインについては、意匠権の取得を行っています。意匠権は模倣品対策のための重要な権利になっています。

訴訟・係争対応

任天堂が他者の権利を尊重して製品開発を行っていても、権利をより広く解釈する権利者などから、世界の国々で訴訟や警告を受けることがあります。そのような知財訴訟・係争にグローバルに対応し、任天堂の商品を問題なく販売できるようにすることも知的財産部の重要な業務です。たとえば特許訴訟では、他者の特許に関する深い理解、さまざまな法的論点の考察、各国法制を踏まえた効果的な訴訟戦略の実現が必要です。特許の有効性を判断するために、過去に発売済みの製品など、先行技術を探し出すことも重要な業務になっています。任天堂は長年ゲームの開発を行っているため、任天堂の過去の製品が他者の特許の先行技術になることもあります。

セキュリティ回避への法的対処

ゲームソフトの違法コピーは任天堂のビジネスの根幹を揺るがす大きな脅威となっています。違法にコピーされたコンテンツが動作できないよう、任天堂のゲーム機にはセキュリティがかかっていますが、セキュリティを破る違法な機器の販売やサービスを行う人がいます。そのような情報を早期にキャッチして、迅速に法的対策が取れるように、開発部門や海外の法務部門と連携を密にして取り組んでいます。

侵害品対策

任天堂のキャラクターやブランド、製品、サービスに関わる商標などの知的財産権を無断で使用した侵害品が後を絶ちません。そのような侵害品を発見し、各国の税関や警察の取締をサポートしたり、税関での水際規制を行ったり、場合によっては訴訟を通じて、著作権や商標権、特許権、意匠権などの知的財産権を行使して侵害品を排除します。このように、お客様が安心して任天堂の商品を楽しんでいただけるようにすることも重要な業務です。また、侵害品の出現を見越してどの国でどのような知的財産権を取得するべきか製品開発の段階から戦略的に検討することも必要です。

知的財産担当者に求められること

任天堂の知的財産部の業務においては、様々な能力が求められます。

協働力

知的財産部の業務においては、部内のメンバーはもちろんのこと、社内外の開発者、弁護士や弁理士、特許庁の審査官、税関や警察などと協働することが必要になっています。また、グローバルにビジネスを展開している任天堂では海外の問題に対処することが必要であり、海外子会社の法務部門、海外の弁護士などと協働することも日常的に行っています。これらの国内外の関係者と深くコミュニケーションし、協働することも不可欠です。そうすることで、一人では不可能な成果を生み出すことができます。

文書の読解力、表現力

知的財産部の業務では法律書面、技術書面などを多量に読むことが必要になることがあります。それゆえ、多くの書面を効率よく読んで正しく理解する能力が必要です。また、そのように収集した情報を整理し、自らの考えをまとめて、第三者に伝わるように表現する能力も必要です。

技術理解力

特許出願や、特許訴訟などの特許関連業務においては、任天堂の製品や他者の特許などを技術的に理解することが必要になります。わからないことは開発者から情報をもらいますが、開発者の説明を理解できるだけの技術的なリテラシーが必要となります。

入社した段階でこれらを全て備えている人はいません。入社後、上司や先輩からの指導を受けつつ、さまざまな経験を通じて知識を吸収し、自ら積極的に成長することを楽しめる人物が、任天堂の知的財産業務に適した人材であるといえます。

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