岩田
この検索ツールのモニターの上には
で、
ソフト紹介画面が現れるようになっていますよね。
どうしてこのようなことをやることになったんですか?
尾田
カメラを使うことは、
最初は考えていませんでした。
でも、「おさがしガイド」の開発とは別の機会に、
試遊台をつくっている社内のチームが
「技術的にはこういうこともできます」と
提案してくれていましたから、
アイデアとしてはずいぶん前からあったんです。
ただ、お店にパッケージが置いてある場所と
試遊台の場所が離れているので、
現実的ではなかったんです。
岩田
ところが今回の検索ツールは試遊台と違って、
パッケージ陳列棚の隣に置くこともできますよね。
尾田
はい。お店にいらっしゃったお客さんは
まずパッケージを手に取られて、
ソフトの購入を検討される方が多いんですね。
そこで、検索ツールの操作をせずに、
そのソフトの内容をすぐに見ていただけたらいいよね、
ということで、カメラを採用することにしました。
酒井
パッケージを手にとっても、
そのパッケージのソフトの情報が
「おさがしガイド」のどこにあるのか、
すぐにはわからないお客さんもいらっしゃると思いますので、
パッケージをカメラにかざすことで
すぐにそのソフトの情報に行き着けたら便利だろうと。
岩田
もちろん、パッケージのタイトルを読めば
『ゼルダ』と書いてあるので、
文字を打ち込めば、その情報にたどりつけるんですけど、
違いますよね、スピードが・・・。
(パッケージをかざすと『トワイライトプリンセス』の情報が出て)
やっぱり速い(笑)。
酒井
カメラに特別な仕掛けをしているわけではなく、
パッケージの絵柄を認識して照合するような仕組みなんです。
ですから、パッケージをカラーコピーして使ったり、
あるいは、店頭に置いてあるソフトカタログをかざしても
パッケージと同じ絵柄であれば認識します。
わたしは、この検索ツールが導入された
直後の土曜日に子どもと様子を見に行ったんです。
すると、子どもはこのカメラが気に入ってしまって、
いろいろなパッケージを一生懸命かざしてるんですね。
すごく楽しそうに。
このときは売り上げにはつながらなかったので、
申し訳なかったですけど・・・・。
岩田
(笑)
酒井
でも、この検索ツールが置かれることで
お店が楽しい場所になっていると感じました。
波多野
いや、実はそれがわたしたちのめざす方向でもあるんですね。
わたしたちがつくっている商品は、
広い意味でのエンターテインメントですし、
それを売っていただいている売り場は、
お客さんにとっても
楽しい雰囲気じゃないといけないと思うんです。
岩田
極論をすれば、
「用はないけど、あそこに行けば楽しいから行ってみよう」
という売り場がもしできたら、
ものすごく能動的に情報を集めない方へも、
わたしたちのつくった面白いものをお届けできる
チャンスが増えるということなんですよね。
波多野
そうです。だから、
いろんなお客さんが来ていただけるというのは、
販売店さんがいつも研究されている大きなテーマだと思うんです。
ですから、雰囲気はとても明るくて、なんか楽しそうだという、
そういうお店づくりのために、
ぜひみんなで力をあわせて
挑戦していかないといけないと思っているんです。
そのとっかかりとして、「おさがしガイド」をつくって
今後もさらに改良していくことになりますが、
このような仕組みを販売店さんの店頭に置いていただければ、
わたしたちメーカーと販売店さん、
それにお客さんとの3者の距離が
グッと近くなると思っているんです。
岩田
お客さんに対しては、商品の内容を
ちゃんと説明できるようになりますしね。
波多野
そうです。
で、任天堂は年に10回ほど流通説明会(※8)を行っているのですが、
会場が東京と大阪の2箇所だけですので
遠隔地の方にはなかなかおいでいただくのは大変なんです。
ですから販売店さんやバイヤーの方々には、
この「おさがしガイド」を使っていただくことによって、
わたしたちの、お伝えしたいことが
正しくご理解いただけるのではないかと思っています。
※8
流通説明会=ゲーム販売店様などを対象とした、新製品展示説明会のこと。
岩田
実際にこれから、お客さんの反応や反響を見ながら
もっともっとよくしていかなきゃいけないんですけど、
お客さんにこういうものを触っていただけたらという
第一歩としては、とても大きな一歩が踏み出せた感じがしますね。
では最後にみなさんから、
売り場にこの「おさがしガイド」を入れて、
さらにどうしていきたいか、抱負をお話しください。
酒井
店頭端末の中では一機能に過ぎませんが、
日頃から『みんなのニンテンドーチャンネル』で携わっている
「みんなのおすすめ」には強い思い入れがあります。
実際にプレイされた方々による客観的な評価が
売り場で確認できるようになって、この評価をもとに
購入される商品が選ばれるようになれば、
お買い求めいただいたゲームはお客さんに満足され、
「(いいソフトのつもりで買ったのに)失敗したなあ」と
思うような機会が減っていくのではないかと思います。
みなさんが投票する「みんなのおすすめ」が
お客さんひとりひとりのソフト選びに役立ち、
実際に遊ばれたお客さんが満足されて、
さらにそのソフトを他の人にすすめる、
こんな好循環が自然に生まれる一端を担えればと思います。
岩田
次は尾田さん。
尾田
わたしの抱負は、お客さんにやさしい売り場づくりの
お手伝いをしたいということです。
たくさんのお客さんに、この検索ツールを使って
安心してお買い物をしていただきたいのですが、
「おさがしガイド」だけでは
やっぱり限界はあると思うんですね。
お客さんへの細やかな対応は人じゃないとできませんし、
わかりやすい陳列やレイアウトも重要です。
それはコンシェルジュを経験して痛感したことでもあります。
ですから、販売店さんと協力し合って
お客さんにとって買い物しやすい、
やさしさのある売り場づくりのお手伝いを
していきたいと思っています。
岩田
竹内さん、お願いします。
竹内
はい。わたしは買い物というのは
本来はとても楽しいものだと思っているんです。
でも、売り場で迷われているお客さんって、
ぜんぜん楽しそうじゃないんです。
岩田
不機嫌ですよね、困られているお客さんは。
竹内
そうなんです。
ですから、この検索ツールによって、お困りのお客さんを
1人でも減らすことができればと思っています。
そして、お客さんに楽しくお買い物していただける、
“お客さんと商品の出会いの場”を提供していきたいと考えています。
岩田
それでは最後に波多野さん、お願いします。
波多野
先ほども言いましたけど、
わたしたちの商品はエンターテインメントですから、
楽しい売り場にしなくてはいけません。
それを、売り場のみなさんといっしょになって、
どうやってつくりあげていくか。
お客さんに安心して買っていただき、満足していただくには
どのようにすればよいか。
やはりそれは、売り場のみなさんとわたしたちが、
もっと近い距離でいろんなお話をするようになり、
協力していく必要があります。
今回の「おさがしガイド」は
それを実現させるためのひとつの“道具”です。
お客さん、売り場のみなさん、
それにわたしたちメーカーとの距離をもっと近くすることで、
お客さんに安心して買い物していただける、
明るくて楽しい売り場づくりのお手伝いをすること、
それをこれからもめざしていきたいと考えています。
岩田
波多野さんがおっしゃった通り、
この「おさがしガイド」は“道具”ですから、
これだけですべてが解決できるわけではありませんが、
売り場でお困りのお客さんを1人でも少なくするために、
3者がもっと近づかなきゃいけないですし、
それを近づけるための“道具”をつくりました、ということなんですね。
当然、これからも環境は変わっていきますので、
たぶん終わりのないチャレンジなんでしょうけど、
15年先、いや3年か5年か先に、
「昔はこういう検索ツールは店頭にはなかったんだ」
「それで、どうやってモノを選んで買ってたの?」
という会話が交わされるようになって欲しいと。
そんな想像をしてしまうくらい、
わたしはちょっと手ごたえを感じています。
そもそも、売ってる商品のことは
しっかり説明できるのが当然で、
世の中の多くのものはそうやって売られていますが、
その当たり前のところの入口に
ようやく立てる“道具”ができたような気がします。
でも、まだまだ入口です。
これからまだまだやることはいっぱいありますけど、
明らかにいい方向にいいステップが踏めるような気がしますので、
2010年は、これをもっといいものにして、
たくさんの販売店さんに導入できるようにがんばりたいですね。
一同
はい。
岩田
どうもありがとうございました。