5. ふたりの新メンバー

岩田

さて、大澤さんが手がかりをつかみ、
そこに竹内さんが絵を、
米さんが音楽を持ち寄って、
『リズム天国ゴールド』の生産性が
グッとあがったときに、
満を持してチームに組み込まれた
新メンバーがふたりいます。
さあ、お待たせしました。
正岡さんと関さんにうかがっていきます。
おふたりは、なにを担当されたんですか?

正岡

おもにプログラムを担当しました。
メインのゲームを何本かと、
あと、おまけ要素をいくつか。
メニュー回りのプログラムなんかも書きました。

ぼくが担当したのはグラフィックで、
キャラクターと、
あと2Dと3Dの絵を担当しました。
メニューまわりの絵も描きました。

岩田

チームに加わったのはいつくらいですか?

正岡

ちょうど一年ぐらい前だと思います。

岩田

そのときの印象を教えてもらえますか。

正岡

はい。まずぼくは『リズム天国』が
すごく好きだったんです。
発売日に買ってかなりやり込んでましたから
そのチームに組み込まれたのは
すごくうれしいことでした。
じつは、このチームに組み込まれる前は、
ぼくはあるプロジェクトの試作を
ひとりでやっていたんですが、
やはりひとりだと手応えがないんですね。
そういうときにこのチームに入って、
突然、テンションが上がったというか、
もう、みんなでガーッと進みながら、
のめり込んでいく感じがうれしくて。

岩田

大澤さんの背中を見ながら、
どんどん進むような。

正岡

はい。
大澤さんという柱があって、
そこについていきながら、
ガーッとつくっていくイメージでした。
なんていうんでしょう、
自分の中で盛り上がっている感じが
ずっと衰えずに維持されていたというか。

岩田

戸惑うことも、あまりなく?

正岡

そうですね。
ぼくがチームに組み込まれたときには
大澤さんがすでにシステム部分を
つくってくださっていたので、
その基盤の上に、思いついたネタを
どんどんつくっていけばいいという感じでしたから、
環境的にもすごく恵まれていたと思います。

岩田

まぁ、正岡さんの場合、
基盤をつくるのが
苦手だというわけではないですよね。

正岡

はい。基盤づくりも大好きなんですけれど(笑)。

岩田

だけど、そのときは、やった分だけ、
どんどんモノができるというのが
爽快だったんですね、きっと。

正岡

はい。どっちも楽しいんですけど、
やっぱりそのときは
ネタをどんどん形にするというのを
優先したかったので、おもしろかったですね。

岩田

関さんはいかがでしたか?

あの、ぼくがチームに入るとき、
アドバンス版の開発をよく知っている人から、
「つくったゲームが1、2個残ったら
いいほうだと思ってね」
みたいなことを言われたんです。

岩田

ああー、なるほど。
いや、アドバンス版の『リズム天国』は、
ひとつひとつのリズムゲーム単位でのボツが
とっても多かったんですよ。
というのは、ゲームがよくできていても、
テーマがリズムですから、
「気持ちよくないね」ってなったら
全部、捨てなくちゃいけないんです。
だから、その人が言ったことは
正しいといえば正しいんです。

はい。
でも、やっぱり最初は大丈夫かなって。

岩田

「俺のは残るんだろうか」と。

ええ(笑)。
で、実際にチームに入ってみて、
みんなといっしょに作業しはじめたら、
「自分の企画が残る」ということの
重要性がどんどん下がっていって。
それよりも、ゲームのおもしろみを
みんなで共有していくことのほうが楽しくて、
もう、どんどんのめり込んでいきましたね。

岩田

なるほど。
おもしろいことに、ふたりとも、
「のめり込む」という表現を使いましたね。
ほかの多くのゲームの開発現場では
「のめり込む」という表現はあまり聞きませんが、
それはどうしてでしょうね?

正岡

・・・・・・やっぱり、
つくっていて楽しいからじゃないかと。
このゲームって、すごくシンプルですから、
つくっているときに
「おもしろみに直結しない部分」が
あんまりないんですよ。
だから、つくっていると、
「ああ、ここが楽しいぞ」って
すぐに実感できるところに到達するというか。

岩田

ああ、なるほど、なるほど。
「ゆくゆくはおもしろさにつながるから
ここはガマンしてつくりなさい」
みたいなところが、ないんですね。

正岡

そうです、そうです。
プログラムを書きました、というときに、
パッとプレイしてみたら、
もうその場で手応えがわかる。
もちろん、いい結果だけじゃなくて、
ぜんぜんダメだ、ということもありますけど。

岩田

いずれにせよ、手応えがはっきりわかることが
健全に作用したんでしょうね。
ちなみに、正岡さんがおもしろいと思って、
大澤さんがダメと言ったものってあるんですか?

正岡

・・・・・・ダメ、とは言わないんですけど。

岩田

ダメ、とは言わないけど、
そう思ってるのがわかる?

正岡

あの、おもしろいときは、
「おもしろいね」って言ってくれるんで、
すごくよくわかるんです。
おもしろいときは、
素直にリアクションが返ってくる。

岩田

リアクションがないときは?

正岡

あ、あんまりなのかな、って。

岩田

(笑)

正岡

そうじゃなくて、いいときというのは、
「あ、これおもしろかったよ」って
後ろでポソっと言って、
すぐ向こうに行っちゃうんですよ。
それを聞くと「やった!」みたいな。
大澤さんが通り過ぎたあとに喜んだりして。
大澤さんのそういうひと言って、
すごく重みがあるから、自信になるんです。

そうそう(笑)。

岩田

いや、いいチームだな、これは(笑)。

大澤

・・・・・・・・・・・・。

竹内

(笑)

(笑)

岩田

竹内さんから見てて、どうでした?
前作からやっていたメンバーに
新しく加わったふたりは
スッと馴染んだんですか?

竹内

はい。ほとんど壁は感じなかったですね。

岩田

へぇー。それはどうしてだと思います?

竹内

やっぱりふたりの資質が大きいと思いますが、
まず、前提として大きかったなと思うのは、
大澤さんが、きちんと話をしたんですよ。
この5人が全員で最初に会議室に集まったとき、
「このゲームはこういうふうにつくります」
みたいなことを、説明してくれたんです。
これが、オレには、うれしくて!

一同

(笑)

大澤

・・・・・・・・・・・・。

竹内

あ、ディレクターらしくなってきた、というか。
成長したじゃん! って(笑)。

岩田

なるほど(笑)。

竹内

で、そこからは、彼らの資質というか、
ほんと、素直にアドバイスを聞いて、
こっちの気持ちも汲んでくれるような
人たちだったんで、すんなりと。
だから、このチームはいい感じだなと(笑)。

岩田

いいですねぇ。
米さんは、どう感じましたか?

そうですね、やっぱり本当に
すんなり馴染んだなという印象があります。
まぁ、最初のうちは、やっぱり、
正岡くんがつくったものを大澤さんに見てもらって
例によって「・・・・・・うーん・・・・・・」という反応をして、
正岡くんが「?」となることもあったんですが(笑)、
そのあたりのことを汲み取るのが、
ふたりともすごくうまくて、
あっという間に吸収するようになったんです。
だから、少し経ったら、前作の『リズム天国』の
あの独特の雰囲気があるものをつくりはじめていて、
すごいな、と感心しました。

岩田

ああ、そうなんですか。
やっぱり、前作が大好きで、
ずっと遊んでいたというのも
効いてるんですか。

正岡

それも大きいと思います。
かなりやりましたから(笑)。