岩田
何がキッカケで『メイドイン俺』をつくろうとしたのか。
まず、阿部さんから話してもらえますか?
阿部
はい。実はずっと前から
『メイドイン俺』というタイトルは考えていたんです。
そこで昔のファイルを探してみると、
日付が2003年9月くらいのテキストがあって・・・。
岩田
2003年9月というと、
5年半も前のことですね。
阿部
ええ。
もともとは『メイドインワリオ』(※1)をつくったあとに・・・。
岩田
ゲームキューブ版の『メイドインワリオ』を
特急でつくってほしいと、わたしが無茶なお願いをして・・・。
阿部
それで、半年で『あつまれ!!』(※2)をつくって、
その開発が終わった頃に書いたテキストに
『メイドイン俺』と書いてあったんです。
※1
『メイドインワリオ』=シリーズ1作目。ゲームボーイアドバンス用ソフトとして2003年3月発売。
※2
『あつまれ!!』=シリーズ2作目の『あつまれ!!メイドインワリオ』。ゲームキューブ用ソフトとして、2003年10月発売。
岩田
それはまたどうして
『メイドイン俺』だったんですか?
阿部
『メイドインワリオ』をやっていたとき、
プチゲームをつくることがとても楽しかったんです。
仕事だったのに。
岩田
仕事だったのに?(笑)
阿部
仕事とは思えないくらいに、ですね(笑)。
普通のゲーム開発だと
それぞれ専門のスタッフがいますよね。
岩田
一般的に、絵はデザイナーが描いて
音楽や効果音にはサウンド専任の担当者がいて、
プログラムはプログラマーが書くものですね。
阿部
でも『メイドインワリオ』のときは、
自分で絵を描いて、プログラムも1人で組んで
早いときは1日1個のプチゲームをつくっていたんです。
岩田
それくらいのペースでつくっていかないと
あれだけの量のプチゲームが発売に間に合いませんしね。
阿部
それで自分でつくったプチゲームを
他のスタッフに見せるようにしてたんですけど、
見せる前からワクワクするくらい、
みんなの反応を見るのがすごく楽しかったんですね。
岩田
なるほど、そこで、そのときの楽しさを
お客さんにも味わってほしいと考えたというわけなんですね。
阿部
はい。昔から
RPGとかシューティングゲームといった
ゲームがつくれるようなソフトはいくつか出ていて、
そういったものを自分も触って
楽しかった思い出はあるんです。
ところが、最後までつくった記憶がないんですね。
岩田
完成させることができなかったと。
阿部
1本のソフトを完成させるまでに
時間がかなりかかるものですから
途中で挫折しちゃうんです。
僕自身、昔はよくマンガも描いてたんですけど、
ストーリーマンガだと途中でやめちゃうんです。
でも、4コママンガだと描ける、みたいな。
岩田
飽きっぽいんですね。
阿部
はい(笑)。
岩田
飽きっぽさと『メイドインワリオ』というのは
すごくよくわかるような気がします。
飽きっぽい人たちがつくった感じがすごくするし(笑)。
阿部
飽きっぽいわりには、
シリーズが長く続いているんですけどね(笑)。
岩田
(笑)。
阿部
そんな飽きっぽい自分でも
『メイドインワリオ』だけは飽きないんです。
で、このゲームは数秒で終わりますので、
4コママンガを描くみたいに、
カンタンにプチゲームをつくれるようにすれば、
つくる楽しさを味わえるんじゃないかと思ったのが
そもそものキッカケなんです。
岩田
それで、5年半前のテキストには
どんなことが書いてあったのですか?
阿部
そのときはまだ「アイリス」と書いてあったんですけど。
岩田
ん?
阿部
・・・。
岩田
アイリス?
阿部
あ、はい・・・。
岩田
さらりと言っちゃいましたね(笑)。
阿部
はい(笑)。
岩田
阿部さんが言った「アイリス」については
一般的に広まっていないことですから
わたしから解説することにしましょう。
そもそも「アイリス」というのは、
ゲームボーイアドバンスの次に検討されていた
次世代機のコードネームのことです。
つまり、ニンテンドーDSが開発される前段階ですね。
で、その「アイリス」は最終的には二画面のゲーム機である
「ニトロ」というコードネームになり、
それがニンテンドーDSとして世に出ました。
だから、広い意味で「アイリス」は
ニンテンドーDSの基になっていて、
阿部さんは5年半越しに
初志を貫徹したとも言えるのかもしれませんね。
阿部
そうですね。そのときに書いたのは
そのアイリス向けの企画だったんです。
そこに書いてあったのが・・・
「『メイドインワリオ』のシステムのプチゲームを
自分でつくるためのソフト。
導入では小さな変更でゲームをつくれるよう
見せかけておいて、最終的には・・・」
岩田
「見せかけておいて」ね(笑)。
阿部
それ、重要なんです(笑)。
それで・・・「最終的には
かなりディープなところまでつくれるような
ゲーム作成ツール的なもの。
プチゲームの制限内でしかつくれないから割り切れる。
5秒程度しかつくれないから割り切れる」と。
そんなことを書いていたんです。
岩田
5年半前に書いたそれは、
今回の商品と変わってないんですね。
阿部
基本は変わっていないです。
岩田
一度も揺るがなかったんですか?
阿部
はい。その部分はズレなかったですね。
岩田
でも、どうして5年半もかかっちゃったんですか?
阿部
最初、「アイリス」であれば
つくれるんじゃないかと思ってたんですけど、
どこかで物足りなさも感じていて、
どんどん月日が流れていったんです。
そうこうしてるうちにDSの構想が出てきて、
タッチペンを使えば
カンタンに絵を描くこともできますし
相性もバッチリだと思いました。
ただ、そもそもプチゲームを自分でつくるとはいっても
それほどカンタンなことではないですし、
自分自身がほかのゲームもつくらなきゃいけなかったので
そのまま保留にしていたんですね。
で、『おどるメイドインワリオ』(※3)をつくってるときに
Wiiの本体機能について、社内で打ち合わせをする機会があって、
WiiConnect24の機能を使えば、
データのやりとりができるようになると。
岩田
つまり、日替わりプチゲームみたいに
追加でゲームが楽しめるようになることが
実現できると思ったんですね。
阿部
そうです。
※3
『おどるメイドインワリオ』=シリーズ5作目。Wii用ソフトとして2006年12月発売。
岩田
そもそも阿部さんは、
社内のいろんな部門の人たちが集まって
Wiiの本体機能の検討をしていた会議に
企画開発部を代表して参加していたんですよね。
そのときの経験が、
今回の『メイドイン俺』の構造に対して
影響を与えていたということなんですね。
阿部
はい。WiiとDSは
すごく親和性が高いと思いました。
DSでつくったものをWiiに持ってきて、
Wiiで遊ぶというカタチにもっていけますし。
そこで、つくる人はDSでつくって、
遊びをメインに考える人は
Wiiで遊んでというカタチにできないかと
そんなふうに考えるようになりました。
岩田
そこで、『おどる』の仕事が終わってから
開発がスタートしたんですね。
阿部
はい。