岩田
そろそろ内蔵ソフトの話も訊いてみましょうか。
もともとDSiには、『うごくメモ帳』(※7)や
『ニンテンドーDSiブラウザー』(※8)などのソフトが
プリインストールされてましたが、
今回のDSi LLでは内蔵ソフトが新たに追加されましたね。
この話は桑原さんからお願いします。
※7
『うごくメモ帳』=タッチペンで記入することで、メモ帳代わりに使えるソフト。また、何枚も書いたメモを再生することで、パラパラマンガ(動画)をつくることもできる。
※ 8
『ニンテンドーDSiブラウザー』=無線LANアクセスポイントなど、ネットに接続できる環境であれば、タッチペン1本で気軽にインターネットが楽しめるソフト。
桑原
はい。
お客さんのご負担を考えたとき、
みなさんに喜んでいただけるソフトを
プリインストールできればと思ったのですが、
わたしのなかに具体的なソフトのイメージはなくて、
そこで岩田さんにご相談したんですよね。
岩田
わたしは日頃、自分がボトルネックにならないように
できるだけ即断即決をすることを意識しているんですが、
桑原さんから相談を受けたときは、すぐに決められなくて
「ごめん、あずからせてもらえますか?」と言って、
わたしはしばらくの間、ウンウンと考えたんです。
桑原
そのとき、岩田さんから提示されたのが
DSiウェア(※9)の2本の『ちょっと脳』(※10)と、
『楽引辞典』(※11)の計3本のソフトでしたね。
※9
DSiウェア=ニンテンドーDSiウェア。DSiやDSi LLに内蔵の「ニンテンドーDSiショップ」でダウンロード購入できる、DSi専用ソフトのこと。
※10
『ちょっと脳』=『ちょっと脳を鍛える大人のDSiトレーニング』の『理系編』と『文系編』の2本。
※11
『楽引辞典』=『明鏡国語楽引辞典』。タッチペン操作でさまざまな日本語の意味を調べることができる辞書ソフト。約7万語を収録。
岩田
DSiウェアの『ちょっと脳』を選んだのは、
「DSiになって『脳を鍛える』は
こんなふうに新しくなっているんですよ」
ということを、たくさんの人たちに
実際に試して、実感していただきたいと思ったからです。
『脳を鍛える』を楽しんでこられたお客さんのなかには、
DSiを入手されても、「DSiショップ」から
「DSiウェア」をダウンロードする方法をおわかりにならない、
そういったお客さんが少なからずいらっしゃると実感していたので、
それなら、最初から内蔵してみようと考えたんですね。
それから「テーブルの上に
ずっと置いておきたいものはなんだろう?」
ということを考えたときに、
「わからない漢字をすぐに調べられたら便利でしょう」
ということで、急遽、『漢字そのまま楽引辞典』を元に
「DSiウェア」として『明鏡国語楽引辞典』を
DSi LLのスケジュールに合わせてつくってもらったんです。
桑原
実際に『明鏡国語楽引辞典』は、お客さんからも
とてもいい評価をいただいてるようですね。
大きな画面との相性がよくて、
手書き文字も認識してくれますし。
米山
それに、テーブルの上に置いておけば
いつでも好きなときに調べられますし、
周りの人がいっしょに見られるのもいいですよね。
岩田
画面が大きくて、視野角が広いということで、
たとえば『レイトン教授』(※12)のナゾトキで
う〜んと考え込んでしまうときがありますよね。
そんなとき、ひとりで考えるのではなく
横の人もいっしょになってナゾトキをすると、
まるで『レイトン教授』を据え置き機でプレイしているような、
不思議な感覚になるんですね。
※12
『レイトン教授』=レベルファイブが開発・発売した、DS専用の人気ナゾトキシリーズ。シリーズ4作目の『レイトン教授と魔神の笛』は2009年11月発売。
桑原
我が家には、6歳と4歳の子どもがいて、
上の子がプレイしているとき、
下の子は、画面を見たくて横からのぞき込むんですね。
しかも、のぞくというより頭をくっつけたりして・・・。
岩田
DSi LLなら離れていてもよく見えますからね。
それに、これまでのDSだと、どうしても
画面に顔を必要以上にグッと近づけてしまうお子さんが
少なくなかったようなんです。
でも、実際クラブニンテンドーの登録時の
お客さんのコメントにあったんですけど、
「子どもがゲーム機から
ちゃんと離れて見るようになったのでよかったです」と。
それはまさに親御さんの実感だと思うんですね。
桑原
実際、うちがそうでしたし。
その光景がまたいいんですよ、
写真に撮ってみんなにお見せしたいくらい(笑)。
岩田
さて、DSi LLの発売から1週間ちょっとたちましたが、
何か印象に残っていることはありますか?
藤野
最初に発表したときは
「ただデカくなっただけだし、いらない」という人が
きっと多かったんじゃないかと思うんです。
僕自身、デザインをしていても、
実際に液晶に映る画面を見るまでは
欲しいと思わなかったくらいですから。
岩田
これまた衝撃の告白(笑)。
一同
(笑)
桑原
社内で最初に、
液晶のついてないモック(※13)の状態で発表したときも
「俺は絶対に買わない」と言った人がいましたし。
米山
いましたね。
※13
モック=モックアップ。実物に似せてつくられた模型のこと。
桑原
僕はずっとその人をマークしてまして(笑)。
それで、液晶がついたものがあがってきたので、
デモをして、アンケートを見たら
「欲しい」と書いてあったんですね(笑)。
天野
僕も同じでした。
お客さんの立場に立って考えると、
DS Liteもあるし、DSiもあるし、
正直な話、もうお腹いっぱいかなと思ったんです。
でもやっぱり、実際に画面がついたのを見ると・・・。
岩田
みんなの反応が劇的に変わったんですよね。
天野
大きい画面を見てしまうと
印象がポジティブに変わるんですよね。
米山
僕は発売日に量販店に様子を見に行きました。
するとお店に入ってすぐの場所に
DSi LLがたくさん置いてあったんですけど、
それが展示用の動作しないDSi LLだったこともあって、
ソフトがさせず、画面が真っ黒で
何も映ってなかったんです。
そこにたまたまカップルがやってきて、
「あ、LLだ」とか言いながら
触ったりしてるんですけど、画面が黒いせいか、
反応がちょっと弱かったんです。
岩田
画面に絵が映っていないと
やっぱり魅力が伝わりにくいんですね。
米山
そうなんです。
でも、ゲームコーナーには
画面が映ったDSi LLが置かれていて。
で、そのカップルがそのDSi LLを見た瞬間、
なんと、「デカッ!」と叫んだんです(笑)。
一同
(笑)
岩田
もしかしたら、11月21日は
「デカッ!」という言葉が
日本中でいっぱい聞こえた日だったかもしれませんね(笑)。
米山
実はわたし、これの名前を
「DSi DEKA」にしてもいいくらいに思ってたんです。
桑原
それは絶対にありえません(笑)。
岩田
それはねえ(笑)。
でも、実は宮本(茂)さんが、
「名前は『DSi DEKA』がいい」と
強く主張されていたこともあって。
米山
(すごくうれしそうにうなずく)
岩田
お2人はやっぱり同じ世代ですからね(笑)。
ちなみに、名前が本当に難産でしたね。
桑原
そうでした。
岩田
名称については、
みなさんに謝らなくてはいけないですね。
そろそろ船が出ますよというようなタイミングで
わたしが1度ひっくり返してしまいましたから。
名前でひどい目に遭ったということも、
この場で暴露していただいてもいいですよ(笑)。
桑原
(笑)。
そもそも名前に関しては、
僕と藤野さんともうひとりのデザイナーと
3人でこっそり考えてました。
藤野
いろいろ考えましたね。
「DSiコンフォート」とか、「DSiエグゼクティブ」とか。
桑原
「DSiプレミアム」なんていうのもありました。
岩田
わたしが覚えてるのは、
「DSiリビング」というのもあって。
桑原
でも、みんな大した名前じゃなかった・・・。
岩田
ええ、考えてくれた人たちには申し訳ないけど、
そう感じたんですよね。
それに、日本人が英語でネーミングを考えると、
海外の英語ネイティブの人たちは「それは変だ」となるし、
向こうの人が「これはどう?」というと、
今度は日本人にはピンとこなかったりするんです。
で、実は世界統一で「ニンテンドーDSi XL」にすることに
一度は、決まっていたんですよ。