1. 経済に明るくないメンバーで

岩田

今回、話を訊くのは、久しぶりに登場する
タッチジェネレーションズのタイトルです。
「経済」をテーマにしたこのソフトを
どういう思いで、どうやってつくってきたのか、
またそもそも、なぜこんなソフトをつくることになったのか、
今日はそういった話が訊けたらと思っています。
じゃあ、みなさんがそれぞれ何をしたか、
まず高橋さんからお願いします。

高橋

プロデューサーをやっています、高橋です。

鈴木

企画開発本部環境制作部の鈴木です。
アシスタントプロデューサーという立場ですが、
今回は若いスタッフにアドバイスをしたり、
日経さんとの窓口を担当された
次橋さんのサポートをしてきました。

次橋

環境制作部の次橋です。
今回はディレクターのひとりということで、
どのようなコンテンツがあったらいいのか、
日経さんといっしょに考えながらつくってきました。

岩田

ちなみに次橋さんがディレクターを担当するのは、
開発に異動してから今回が初めてですよね。

次橋

そうです、はい。
まず『みんなの常識力テレビ』(※1)に関わって、
開発に移ってから2本目のソフトになります。

※1

『みんなの常識力テレビ』=2008年3月発売の常識トレーニングソフト。Wii専用ソフトとして発売。

岩田

開発に移って2本目でディレクター。
ちなみに次橋さんは、開発の前はクラブニンテンドーの
立ち上げの仕事にも関わったりしましたよね。
 
では、続いて北原さん。

北原

プログラムディレクターとして関わりました
環境制作部の北原です。
チームにはディレクターが4人ほどいるんですけど、
その人たちといっしょに
ソフトを面白いものにするためのアイデアを考えて、
それをプログラマーに伝えるといった
橋渡し的な役割を担当しました。

岩田

ハッキリ聞いちゃいますけど(笑)、
経済のことはあんまり詳しくないですよね?

北原

はい(キッパリ)。

一同

(笑)

岩田

プログラマーですからね。

北原

はい(笑)。

岩田

前回は『バンブラDX』(※2)のような
ソフトをつくっていた人に、
「次は経済のソフトを担当してくれ」と言うのは
任天堂くらいかもしれませんね(笑)。
最初に「経済がテーマ」と聞いてどう思いましたか?

※2

『バンブラDX』=『大合奏!バンドブラザーズDX』。2008年6月、ニンテンドーDSで発売されたDSを楽器代わりにして音楽を楽しめるソフト。

北原

まず、自分にできるのか不安だったんですけど、
一緒にディレクターを担当した次橋さんが
その道に詳しかったので・・・。

次橋

そんな・・・。

岩田

次橋さんはもともと経済に明るかったんですか?

次橋

いえ・・・「実はわたしも興味なかったんです」
と言おうとしてたのに・・・。

岩田

先に言われてしまった?

次橋

・・・はい(笑)。

岩田

(笑)。
ハッキリ言いますけど、
今回の任天堂側のスタッフのなかに、
「わたしは経済のオーソリティです」と
胸を張って言えるような人はひとりもいませんでしたよね。

一同

(うなずく)

岩田

でも、経済のオーソリティということでは
日本経済新聞社さんという絶対的な存在があるわけですから、
そういったスタッフは任天堂側には入れないということは
あらかじめ決めていたんです。

高橋

日経さんは、
「文章を書ける記者は1300人います」と
おっしゃってました。

岩田

日本を代表する経済を専門分野とされている新聞社さんと
任天堂がいっしょに取り組んだからこそ
今回のような仕事はできたんですよね。
ところで次橋さん、今回の経験から
経済をけっこうマスターしたんじゃないかと、
わたしはにらんでいるんですけど。

次橋

いえいえ、そんなこと。

岩田

そうじゃないんですか?(笑)

次橋

このプロジェクトが終わったいまとなっては、
前よりは・・・。

鈴木

実は、この開発の途中で日経TEST(※3)
次橋さんと北原さんが受験したんです。

岩田

日経TESTはこのソフトの中にも、
お試し版が入ってますね。

鈴木

はい。DSのお試し版は30問くらいなんですけど、
本番のテストは・・・。

次橋

100問です。

※3

日経TEST=日本経済新聞社と日本経済研究センターが主催する、ビジネスにたずさわる人たちを対象にしたテスト。正式名称は「日経経済知力テスト」。年に2回実施。

鈴木

テストのサンプルをやってみたのですが、
とにかく文字が多くて
ページをめくっていても何問目なのか、
わからなくなってしまうほどボリュームたっぷりで、
わたしは気絶しそうになったんです(笑)。

一同

(笑)

鈴木

ところが次橋さんは
成績の上位20パーセントに入りまして。

次橋

あのう・・・上位2パーセントです。

鈴木

え、2パーセント!?

高橋

イヤミか?(笑)

一同

(笑)

次橋

いや、あの・・・
経済にぜんぜん興味がなかったのは本当なんです。
もともと、一般レベルの興味しかなかったんです。

岩田

もともと経済に興味があったわけではないけど、
この仕事を通じて知識がついたんでしょうね。

次橋

そうだと思います。

鈴木

実際、コンテンツを考えるために
日経新聞の隅から隅まで読んでましたしね。

北原

そんな感じで、次橋さんが
経済にすごく詳しいことがわかったので、
そっち方面は次橋さんに全部お任せして、
わたしは素人目線で関わっていけるなと思いました。

岩田

難しいことは次橋さんにお任せして
北原さんは利用者目線担当に専念できたと(笑)。

北原

はい(笑)。