任天堂 E3 2011情報
INDEX
1. Wiiの先にあるもの 2. もうひとつの画面 3. アイデアの筋 4. 新しい構造 5. Wiiリモコンとの関係 6. 『NEW スーパーマリオブラザーズ Mii』 7. より深く、より広く コンセプト映像
3. アイデアの筋
岩田
もうひとつ、
画面がもう1個あることの意味というのは、
毎日使ってもらうとか、いつでも使ってもらう
ということのほかに、
ゲームの可能性をどんなふうに変えていくのか、
ということを・・・たぶん、
いろんな使い方のバリエーションがあって。
宮本
はい。
岩田
いつも思うんですが、
「物事のアイデアの筋がいいかどうか」って、
新しい構造を提案した瞬間、
「あ、あれにこう使える、これにこう使える・・・」
というのがさあっと広がるときに、わかるんですね。
それこそDSのときに、
「1画面にタッチスクリーンがね・・・」って
宮本さんが話してくれたときに、
「ああそれなら、あれができてこれができて・・・」
という話がさあっと広がったので、
おもしろい構造になるだろうなと思っていたんですね。
今回のときもそれに似ていて、この構造になることで
できることがさあっと広がった印象があったんですが、
宮本さんはどんなふうな印象でした?
宮本
そうですね。
これなら大きなテレビの電源が入っていなくても
すぐに中身の情報が見られるし、
だれかが家のテレビを見ていても、
こちらの画面だけでも遊べるんですね。
日本ではカラオケというのがポピュラーなんですが、
カラオケのシステムには専用のリモコンがついていて、
大きなほうの画面には、
いま歌っている人の曲の情報が流れていますが、
次の曲を歌う準備をしている人は
手元の画面を操作して自分の曲を選んでいる。
それと同じ仕組みがこれにもあることになります。
岩田
はい、はい。
宮本
それから、任天堂のゲームというのは、
わりと大勢で、マルチプレイで遊ぶゲームが多いんですけど
ニンテンドー3DSとかDSは
相手に自分の画面を見せずに遊ぶんですね。
で、Wiiのゲームだと、みんなが同じ画面を見て遊ぶ。
今回はその両方の、「みんなで一緒に見ている画面」と
「見えていない情報」を組み合わせた遊び方ができるんです。
今回のE3でも、この構造のデモを出展していますけど。
岩田
だから、ある意味、
遊んでいる人たちが非対称になるんですよね。
全員が同じ目線じゃなくて、
違う立場から見ている目線のプレイヤーがひとり、
まざることで場がおもしろくなる。
宮本
そうなんです。
それから、これは今度の『オカリナ』(※4)
3DS版もそうなんですけど、
情報画面とゲーム画面が両方映っていることで、
かなり便利に遊べるゲームもあります。
あと、これは、つくりながら気がついたんですけど、
たとえばウェブサイトを見るときでも
大きな画面にウェブのページが映っても、
僕の視力では、遠くてよく見えないんですよ(笑)。
※4
『オカリナ』=『ゼルダの伝説 時のオカリナ 3D』。2011年6月16日発売予定のニンテンドー3DS専用ソフト。
岩田
結局、画面に近づかないと見えない、
ということですね(笑)。
最近のテレビは、たいてい番組表が
表示できる機能がありますが、
私の視力だと、あれも、
画面に近づかないと見えないんですよ。
宮本
はい。でもやっぱり、広い範囲の見えている
テレビの大きな画面は魅力なんです。
僕は「ルーペ機能」と呼んでいるんですけど、
こまかいものは、この新しいコントローラの画面を使って
手元で自分の好きなサイズでわかりやすく読んで、
みんなは全体の画面のほうを見るとか。
今回の、この新しいコントローラは
そういうマルチな新しい使い方が
ゲームに限らず見えてくるんです。
さらに、ニンテンドー3DSと一緒で
ジャイロセンサー(※5)が入りましたので、
これでさらに、たとえばザッパーと組み合わせて遊ぶとか、
実際につくっていて、非常に快適に遊べますし、
いろんな可能性を感じています。
※5
ジャイロセンサー=ものの角度や回転速度を検出し、姿勢制御などに利用される計測器のこと。ちなみにジャイロ(gyro)は「輪」や「回転」の意味。
岩田
ちなみに宮本さんは、3DSにジャイロセンサーを
途中で強引にねじ込んだ張本人ですよね。
宮本
はい。正確に言うと「いったんあきらめていたものを、
コストの折り合いが見えたので戻した」なんですけどね(笑)。
岩田
そこを無理してでもやったことの価値については
もうすでに手ごたえを感じておられると思います。
それと、先ほど「ルーペ機能」の話がありましたが、
もうひとつよく議論をしていたことがありましたよね。
PCやスマートフォンなどで、
文字を読んだり、文字を入力したりすることと、
大画面のテレビなどで
ちょっと距離をはなれてリラックスして見るというか、
できたら多人数で一緒に共有して見るということは、
一見、同じ画面に映るものとして扱われるんですが、
じつは全然性質の違うものなんですね。
よく社内では、「1フィートと10フィート」とか
「30センチと3メーター」とかと話していましたけど、
この両方に対応できるという意味で、
この新しいコントローラというのは
非常におもしろい存在ですよね。
宮本
そうです、そうです。
岩田
いままでテレビゲームに向いていなかったこと・・・
たとえば、Wiiで「文字を入力する」ということに関しては、
努力はしたものの、これまで“快適”とまでは
申しあげられないなと思っていたんです。
それが、今回、すごく変わる感じがするんですよね。
宮本
以前、コネクティビティーを提案して、
テレビとゲームボーイアドバンスの2画面を使ったときも、
「人間、2つの画面なんか見られないですよ」と
言われたことがあったんです。
でも、じつは別の情報画面があったほうが
便利なことはいろいろあって。
実際、僕の席でもPCは2台のテレビ(モニター)を
使っていますから(笑)、
べつに2台のテレビを見ないわけじゃないんですよね。
岩田
はい。というか、いまやね、
家庭でテレビを見ている人が
手元に何か違うものを持っていることは、
べつに珍しくもなんともなくなったので、
「2つの画面を同時には見ません」
という議論というのは、
もう過去の話のような気さえするんですよ。
宮本
そうですね。
ソフトウェアキーボードが
手元にあったほうが便利でしょうし。
たとえば、ペイントツールなんかでも、
「自分が絵を描く」というのと
「人に見せる」というのは別の機能で、
2つの別の画面があったほうが便利ですよね。
DSなら自分で描いて、人に見せる、
ということを兼ねるんですけど、
家のテレビでは、自分で描きに行くには遠いし、
描いたものを手元の小さい画面で人に見せるより、
大画面で見せたい。
これひとつとっても、このコントローラなら
リアルタイムで手元で描きながら
何かをみんなにプレゼンテーションする、
ということができるわけですよね。
たとえば写真でも、みんなに見せるときには
大きな画面が向いているし、
その見せる写真を選ぶときには手元が向いている。
岩田
みんなには見せたくない写真もありますよね。
自分が撮った写真のすべてを
いきなり大画面に映したいかというと、
きっとそうじゃないこともありますから。
宮本
そうなんです。2つの画面があると準備しておける。
日常の中で、けっこうそういうシーンはあるし、
動画なんかでも、そういう機能があれば便利だろうし。
ふだんの生活の中で使える機能も
持ち合わせていると思うんですね。
岩田
それって、さっきのカラオケの構造と
よく似ていますよね。
いま、歌っている曲の映像が
テレビ画面に映っているのと、
手元で次の曲を選んでいるのが、
すごく似ているんです。
宮本
まさにそうですね。
岩田
次の写真を選んだり、次の動画を選んだり、
検索とか、字を読んで探すというのには
手元が向いていて、
みんなで見て、みんなで共有するのは
大きい画面が向いている。だから、
その構造も含めて、その環境が最初から
“お客さん全員に一律に提供される”
ということが大事なんですよね。
宮本
そうです。
いつも任天堂として気をつけていることなんですけど、
「本体を買った人全員にその環境がそろう」
ということが、すごく大事なことだと思います。
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