岩田
それでは最後に、最終的にできあがったものに
みなさんがどんな手ごたえを感じているかということと、
お客さんへのメッセージを訊こうと思います。
輿石さんからお願いします。
輿石
ハードの開発というのは、
とくに設計段階はそうなんですけど、
デザイナーの頭のなかには「こういうもの」というイメージが
しっかりあると思うんです。
でも、自分たちのように機構設計にかかわっていると、
最初はすごく無機質なイメージしかないんですね。
ところが、E3のタイミングに合わせて試作品ができたとき、
自分の想像していた以上のものができたように感じたんです。
しかも、量産のための試作を繰り返しているうちに、
自分の想像をどんどん突き抜けていって、
ますます手ごたえを感じることができるようになりましたので、
みなさんもぜひ手にとって、しげしげと見てほしいと思います。
岩田
写真やインターネットの画面だけでなく、
ぜひ現物を手にとって見てくださいということですね。
輿石
はい。実際に手にとってみないと、
ニンテンドー3DSの魅力はなかなか伝わらないと思いますので。
後藤
僕は、開発初期の頃はすごく不安だったんです。
試作品をつくっているときは、わたしの周りに
あまりスタッフがいなかったということもありましたし。
ところが最終的にここまで仕上げることができて、
もう夢のようというか、本当によくできたなと思います。
あと、お客さんに言いたいのは・・・。
岩田
「バッテリーカバーを見てください」ですか?
後藤
はい!(笑)
岩田
では・・・(バッテリーカバーが見えるように3DSを掲げて)
みなさん、これがニンテンドー3DSのバッテリーカバーです!
一同
(笑)
後藤
ありがとうございます。夢がかないました!(笑)
もちろんバッテリーカバーだけでなく、細かいところにも
デザイナーさんのこだわりがいろいろあるハードになりましたので、
3D画面以外のところも見ていただければと思います。
赤井
わたしは、この製品をつくるにあたって、
ここにいるメンバーだけではなく、
開発技術部の開発のメンバーから、
品質の評価や量産管理をする製品技術部の人、
生産計画をたてる生産企画室や購買管理部の人たち、
それに協力会社さんも含めて、
みんなでいっしょにつくりあげてきた
ハードだという思いがとても強いんです。
最初はゼロで、何もないところからはじまったものを、
ここまで仕上げることができて、
品質だけでなく、操作感にも手ごたえを感じていますので、
ぜひ手にとっていただいて、楽しんでいただければと思います。
江原
工業製品、とくに大量生産のゲーム機の商品化は
デザイナーの熱意だけでは形にならないので、
前向きに対応してくださった各協力会社の技術者のみなさんや
たずさわった各部署のみなさんの熱意に対して
僕も感謝の気持ちでいっぱいです。
僕はこのハードのデザインに入る前に、
3Dソフトのデモを見て「これはすごい」と感じながらも、
一方で実際に見てみないと、お客さんに伝わらないとも思いました。
だからこそ、本体のデザインをするときに、
「これ、どうなっているんだろう?」と本体デザインを通して
思わず手に取りたくなるようなきっかけづくりをしたいと思いました。
結果としてそれがけっこう思ったとおりに出せているかなと・・・。
岩田
いま、こうして商品になったものを見たとき、
2回目のプレゼンで江原さんが提案してくれたものと比べても、
芯の部分の再現性がとても高いものになりましたよね。
江原
ありがとうございます。みなさんのおかげです。
で・・・あまり言っちゃいけないのかもしれませんが、
3DSの製造ラインを見た後に、DSiやDSi LLなどの製造ラインを見ると、
とても簡素な印象を受けるんです。
岩田
簡素に感じるくらい、3DSは複雑な工程なんですね。
江原
はい。なので、デザインした側からすると、
社内の要求にはわりと応えられたのかなという手ごたえがあります。
あと、専用充電台が同梱されるのは、任天堂初のことですよね。
岩田
そうですね。
江原
いままでの携帯ゲーム機は、部屋のなかでの置き場所が
とくに決まっていなかったと思うんです。
でも、専用充電台によって
Wiiのように家のなかでもホームポジションができるということが
すごく大きなことだと思います。
つねに目につくところに置いていただいて
ニンテンドー3DSを毎日外に持ち出したくなるきっかけになればと思います。
岩田
それでは最後に、宮武さん。
宮武
僕は、DSiの量産立ち上げには途中からかかわっていましたが、
本体デザインを本格的に担当するのは今回が初めてのことでしたので、
先ほど後藤さんも言ったように、
開発初期の頃はとても不安な気持ちでした。
ところが、最終的にこのような形にすることができて、
実際に触ってみると・・・この気持ちをどう言葉にしたらいいのか・・・。
岩田
1年前は「どうしよう?」と思っていたのに
いま、このような形になって、感慨深いものがあるんですね。
宮武
はい。今回は新しく追加された要素が
ものすごくいっぱいあって、それを実現するために、
大勢のメンバーでずっと頑張ってきました。なので・・・・・・。
江原
みんなでやったなあという感じが・・・ね。
宮武
そうですね・・・。
後藤
うん、確かに。
岩田
最初は「つくれるかどうかわかりません」と言って、
モデルを見て、「無理です」とか、
「いちばんイヤなやつが来た」と言われていたものを、
最終的にこのような形にすることができたわけですからね。
宮武
それは、みんなの力を合わせたからこそ、
できたんだと思います。
岩田
みなさん、本当にお疲れ様でした。
それでは最後にわたしから。
世の中の人からは、新しい機能で伝わりやすい
3Dの裸眼立体視に注目が集中するとは思うんです。
でも、現実に3DSという携帯機を手にしたときに、
いままでのDSとは違う、プラスアルファの魅力を持った
モノとしての魅力が「ここに確かにある」と、
感じてもらえるんじゃないかなと思っています。
そのような商品にするということは
まさにデザインの人たちにお願いしたかったことです。
そこが変わらないと、中身がいくら変わっても、
それだけでは足りないんじゃないかということを感じていました。
なので、最初のプレゼンのときには、
6種類のデザイン案を考えてもらって、
それぞれがしっかり考えられたものだったにもかかわらず、
「やり直し」というふうにさせてもらって、
そして2回目のプレゼンのときには
「量産できるかどうかわかりませんよ」というモデルを、
あえて選んだにもかかわらず、
たくさんの人たちが力を結集して、多くの苦難を乗り越えながら、
1年という短い期間で形にして、
それを実際に手にとって、いろんな角度から眺め回すと、
ちょっとにんまりしてしまう自分がいて、
そういう点でも、わたし自身すごく手ごたえを感じています。
これまでのDSシリーズは、とくにDSiが
無駄なものをそぎ落としたようなソリッドで
かつフラットな感じのデザインでしたけど、
そういったものと比べると、今度のニンテンドー3DSという商品は
いろんなところに出っ張りがあったりするんですが、
おそらくあらゆる部分に、そういう形になった理由があるはずで、
たぶん今日は、みなさんは自分たちで考えたことの
100分の1くらいしかしゃべっていないはずなんですね。
なので、お客さんには
「ここがこうなっているのは、こんな理由があるんじゃないか」
というふうに、この商品を見ていただけると、
きっと面白い発見があるんじゃないかと思います。
みなさん、本当にお疲れ様でした。
今日はありがとうございました。
一同
ありがとうございました。