1. 「ダメでもいいからチャレンジしよう」
岩田
今日は、ニンテンドー3DSソフト
『PROJECT X ZONE』について
お話をお訊きしたいと思います。
今作は、全29作品(※1)の古今東西のゲームが集まった
エネルギーのこもった作品ですので、
その魅力を伝えるきっかけになればということで、
みなさんに集まっていただきました。
最初に、自己紹介からお願いできますか。
塚中
バンダイナムコゲームスの塚中と申します。
今回はプロデューサーとして、
プロジェクト全体の管理統括、
他社様との渉外などを担当させていただきました。
岩田
プロジェクトのリーダーを務められたんですね。
塚中
はい、よろしくお願いします。
森住
モノリスソフトのディレクターの森住と申します。
わたしは開発現場の責任者として、
ゲームの中身に関しての
統括、監督的な立場でかかわらせていただきました。
岩田
現場監督のような役割ですか?
森住
そうですね。
それに加えて、脚本などもわたしがライター兼任でやっております。
チームの中には原作を知らない若いスタッフもいるので、
そのための資料などをつくったりもしました。
岩田
若い世代のみなさんに向けた「ゲームの歴史の先生」も
担当されていたということですか?
森住
先生というほどではありませんが(笑)。
岩田
では、土屋さん。
土屋
カプコンのプロデューサーを務めています、土屋です。
わたしはカプコン側の開発の窓口として、
各タイトルのデザインや脚本・設定などの
チェックの社内調整を担当させていただきました。
岩田
よろしくお願いします。
寺田
セガの寺田です。
わたしは『サクラ大戦』シリーズ(※2)で
ディレクターをしておりまして、
『クロスゾーン』に『サクラ大戦』が出るにあたり
その監修を担当させていただきました。
岩田
みなさん、よろしくお願いします。
一同
よろしくお願いします。
岩田
しかし、あらためて考えると、
みなさんがこうして横に並ばれている画自体が、
とてもすごいことですよね。
寺田
はい、いつもはライバル同士ですから・・・(笑)。
土屋
ふだんはそうですね。
岩田
今日は、そんなふだん一緒に仕事しないはずの人たちが、
ひとつのモノづくりにかかわり、起きたことや、
それぞれの個性がどんなふうに
活かされたのかをお訊きしていきます。
塚中さん、あらためてになりますが、
今回このゲームにはどのくらいの数の
キャラクターが登場しているんですか?
塚中
全29作品で、キャラクター数は
プレイアブルの味方キャラクターだけで60人以上です。
岩田
60キャラクター以上というのはおそらく、
みなさんにとって、いまだかつてない大規模な
コラボレーションになりますよね。
この“大それた”プロジェクトは
いったいどんなふうに始まったんですか?
塚中
やっぱり、“大それて”いますよね(笑)。
岩田
あの、わたしはその昔
『スマブラ』(※3)というタイトルにかかわっていたので、
こういうお話があったときに起こりうるドラマが、
当事者としてよくわかるんです(笑)。
塚中・森住
ああ! そうでした。
岩田
わたしも当時、それぞれのキャラクターの原作者のところに
お願いに行ったりしていましたから。
塚中
そういう意味では同じですね。
わたしが所属するバンプレストレーベルでは、
多数のキャラクターが共演する作品を
プロデュースさせていただくことが多く、
今回もその流れをくんで実施させていただきました。
森住
わたしも、もともとバンプレストに10年近く所属して、
『スーパーロボット大戦』(※4)などを担当していました。
岩田
ああ、そこでおふたりはつながっていたわけですね。
森住
そうです。その後、わたしがモノリスソフトに入社して、
『ナムコ クロス カプコン』(※5)という、
当時のナムコさんとカプコンさんのキャラクターを
お借りしたプロジェクトで、
他社の原作ゲーム版権を扱うゲームも担当しました。
岩田
本来まざり合わないはずのものをまぜる、
ある意味カオスな世界を
ずっと担当されてきたといえるんですね。
森住
はい、そうともいえます(笑)。
塚中
ですので、異なる版権作品を集めて
ひとつの商品にまとめさせていただく経験が多かった、
というのもあります。
岩田
いや、でも、ちがうにもホドがあるじゃないですか(笑)。
今回登場キャラのリストを一部拝見したんですけど、
やはり普通にはありえない組み合わせだと思うんですよ。
塚中
そうですよね。
わたしも最初、森住さんから
こういうことをやりたいって聞かされたとき、
「それは無理だよ」って言ったんです。
岩田
普通はそこで終わりますよね。
塚中
はい。でもそうならずに
そこから進めることができたのは、
ユーザーのみなさんからの声の後押しがあったからなんです。
岩田
どういうことですか?
塚中
このゲームの前に、ニンテンドーDSで
『無限のフロンティア』(※6)というゲームを
つくっていたんですけど、その中で、
ほかのゲームからのゲストキャラクターを
登場させていたんですね。
それが、発売後のアンケートなどで
「すごくよかった」という
たくさんの反響をいただきまして。
岩田
「お客さんからの、目に見える反響をいただいた」
ということですね。
塚中
はい。それが本当に、我々の想像以上の反応で。
それがきっかけとなって、
「ダメでもいいからチャレンジしよう」
という話になったんです。
岩田
そこで企画が動いたわけですか。
塚中
そうです。
何はともあれ、まずは相談ということで、
以前から懇意にさせていただいていた
カプコンの土屋さんに、
企画書を持ってお願いしに行きました。
岩田
塚中さんと土屋さんは、
もともとお知り合いだったんですか?
土屋
そうですね。
バンダイナムコゲームスさんとは
以前『ガンダム』のアーケードゲーム(※7)で
ご一緒させていただいてから、
お付き合いさせていただいています。
塚中
そのときの開発のプロデューサーが
土屋さんだったんです。
土屋
塚中さんとはふだんから連絡は取り合っていたんですが、
あるとき「相談があります」って、
いつもよりかたい感じのメールをいただきまして。
その段階では内容は書いていなかったので、
「あ、これはなんかあるぞ」と思ったんです。
森住
そこは、企画書を添付してすむレベルの
話じゃなかったんで・・・(笑)。
土屋
企画書をぱっと見せていただいたら、
バンダイナムコゲームス、セガ、カプコンって書いてあって
「これは・・・!?」と。
岩田
はい(笑)。
それを見て、土屋さんはどう思いましたか?
土屋
「実現したらすごいし、遊んでみたい」
と思いましたね。
でもかなりキツそうなので、
「自分が開発の担当はしたくないなあ」とも思いました(笑)。
塚中・森住
(笑)
土屋
ただ、企画書を見せていただいた時点で、
「基本的にはやる前提で、進めます」って、
その場でご返事したんです。
岩田
もうその場で、すぐにですか?
土屋
そうですね。
わたしは社内でも社歴が長いのもあり、
古いタイトルにもくわしいといいますか、
「このキャラクターは誰に交渉すればいい」
みたいなのが、だいたい想像できたんです。
もちろん調整は必要になりますけど、
実現すること自体は、可能だろうと。
塚中
そこでカプコンさんに快諾していただいたことが、
その後の開発のモチベーションに
つながったというのはすごくあります。
もしそのとき「難しいですね」だったら、
形にならず、そこで消えていたと思うんです。
土屋
まあ、そのときわたしがそこまで深く
考えていなかったのかもしれませんけど(笑)。
森住
開発のプロデューサーに
直接話ができたのもよかったんでしょうね。
岩田
ものをつくる人のところに相談に行ったから、
「どうすればできるのか?」っていうふうに、
考えてもらうことができた、ということですよね。
そういう意味では、
よい巡り合わせに恵まれていましたね。