社長が訊く
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社長が訊く『ニンテンドー3DS』ソフトメーカークリエーター 篇

社長が訊く『ニンテンドー3DS』ソフトメーカークリエーター 篇

第15回:『KINGDOM HEARTS 3D [Dream Drop Distance]』

目次

6. 複雑な伏線がつながる快感

岩田

では、従来からシリーズファンの方に
今作の魅力を伝えるとしたら、どう語りますか?

野村

“総出演”というところでしょうか。

岩田

最初から「総出演にしよう」と思ってはじめたんですか?

野村

じつはお話の流れ的に、
そうせざるを得ないところがありました。
今回はこれからの戦いの序章のようなものなので、
これまでのシリーズのキャラクターたちが一堂に会します。
シリーズファンの方に喜んでもらえるポイントだと思います。

岩田

公開されている動画を見ていても、キャラクターが出るたびに、
絶叫のようにコメントが流れますからね。

野村

この間、お台場でイベントをやったんですが、
すごかったですね(笑)。
OPムービーを流したらお客さんの反応が凄くて。
キャラクターへの思い入れを、実感しました。
長くつづくということは、そのキャラクターに
愛着をもってもらっているということで、
僕はもともとキャラクターデザインをしていたので、
やっぱりキャラクターに反応してくれるのは
非常にうれしいことです。

岩田

総出演なので、キャラクターへの
愛着に対する受け皿はばっちりなんですね。

野村

はい。今回、お話はけっこう難しいですけど、
多分、『キングダム ハーツ』が好きな方にとって、
本当に好きな展開になっていると思います。
複雑な伏線がつながっていきますし、
新たに生まれる謎も楽しんでもらえると思います。

岩田

バラバラに考えていたことのつながりが見えてくる、
ある意味シリーズファンにとっては
すっきりした気持ちが味わえるものになったんですね。

野村

そう思います。
先ほどの“制限のある環境での開発”の話と同じで、
難しいと思っても、その制限の中で
カチッとはまると、快感なんですよね。
ストーリーの謎も伏線がつながると、すごく快感です。

岩田

そうか・・・、
野村さんはそれを同じものとしてとらえているんですね。
今作は3DSが元気になったタイミングで世の中に出ていきますが、
本当にいろんな方に応援していただいて、3DSはここまできましたから、
ビデオゲームにかかわる人たち全体が元気になるようにしたいですね。
今作がどういうふうにお客さんに受け入れられるか、
すごくワクワクします。

野村

僕ももうやることはやったんで、
発売を待ってみなさんの反応を待つだけです。

岩田

今回、お話を訊いていて、やりきった感じがしますね。

野村

ええ、やりきりました。
『キングダム ハーツ』にしては短い制作期間でしたけど、
何ひとつ削ることなく全部詰め込めたので
やりきった感はあります。

岩田

わかりました。
ちなみに、野村さんは“社長が訊く”の企画は
ご存知だったと思いますけど、
実際に話してみてどうでしたか?

野村

・・・話しやすかったですね。
最初はかなりドキドキしましたけど(笑)。
ゲームが好きな人と話すのは、やっぱり楽しいです。
話しやすかったのも、それを感じたからかもしれないです。

岩田

じつはわたしも、すごく話しやすかったです。
わたしはプログラマー出身なので、
デザイナー出身の野村さんのように、
頭の中に先にビジュアルをイメージするようなことはできないんですけど、
ものをつくるときに考えていることに
おどろくほど共通点があって、
いろいろ発見がありました。

野村

そう言っていただければよかったです(笑)。
僕はあんまり、初対面の方との話が得意ではないので・・・。

岩田

でも野村さん、話が本当におもしろいですよ。

野村

う~ん・・・話せばおもしろいかな、とは思っているんですけどね(笑)。

一同

(爆笑)

岩田

本当に考えたり、苦しんだりして
ものをつくっている人の話は、絶対におもしろいんですよね。
だけどそのおもしろい話が、
必ずしも世の中にうまく発信できていないと思うんです。
「ゲームの周りにこんなにおもしろいドラマがあるから、
 ファンの方にもっと伝わればいいのに」というのが
“社長が訊く”がつづいているわたしの動機なんです。

野村

そうですね。
『シアトリズム』のときも周りの反応を見ましたけど、
この企画はファンの方がすごく楽しみにされているみたいです。

岩田

今日お話をしていて、野村さんは
頭の中で本当にビジュアルイメージが
動いているんだということがわかりました。
フリーフローアクションをまとめられたことも、
それが秘密ですね。
あえて言いますが、あのハチャメチャなアクションを
どうやってゲームにしたか、
動画だけ見ても謎だったんです。

野村

ああいうのをやりたいと言ったときには、
現場から「ちょっときびしいです」って言われましたけど(笑)。
でもそれをうまいこと着地させたのは、
スタッフが優秀だったからです。
発想はできても形にするのはスタッフの力なので、
感謝しないといけないです。

岩田

それは野村さんが、野村さんの先輩たちから
ある部分で感謝されなかったら、
きっと自分はこうならなかったっていうことと同じですね。
絶対に自分のできないことをやっているスタッフがいるんだから、
敬意を持ち、感謝の心を持つんですよね。

野村

そうですね。
「自分の無茶につきあってもらっている」
という気持ちが大きいです。
「やってくれる」という信頼のもとに言っているので。

岩田

無茶ができるのはその人たちのお陰で、
逆に、現場の人は
「野村さんにゴールへ連れてってもらえる」
という確信めいた何かがあるんでしょうね。

野村

まぁ、僕は
「大丈夫だよ」としか言いようがないんですけど・・・。

岩田

それがまさに、間さんが話してくれたことでした。
今日は、いままで自分の頭の中でつながっていなかったことが、
いろいろとつながって非常におもしろかったです。

野村

そうですか、よかったです(笑)。

岩田

今日はありがとうございました。

野村

こちらこそ、ありがとうございました。