岩田
今日は『真・三國無双』シリーズ(※1)の最新作、
ニンテンドー3DS用ソフト
『真・三國無双 VS』のお話ということで、
株式会社コーエーテクモゲームスの
小笠原さんにお越しいただきました。
よろしくお願いいたします。
小笠原
よろしくお願いいたします。
岩田
今日はもちろん、『真・三國無双 VS』の
お話もお訊きしたいのですが、
ゲーム開発の経験がある
わたしが訊き手をさせていただくので、
まず最初に、小笠原さんとビデオゲームとの出会いから
お訊きしようと思います。
そもそも小笠原さんがビデオゲームと
接点ができたキッカケは何でしたか?
小笠原
おそらく、
わたしの年代の多くは同じだと思いますが、
小学校に入ったころ『インベーダー』(※2)ブームがありました。
そこでビデオゲームと出会ったんですが・・・。
岩田
でも小学生ですから、
100円玉を入れて遊ぶゲームとなると、
じっくり遊ぶチャンスはなかなかこないですよね。
小笠原
そうなんです。
ですから本格的にゲームをやりはじめたのは、
ファミリーコンピュータからだったと思います。
岩田
その頃とくに夢中になったゲームソフトはありますか?
小笠原
『ベースボール』(※3)です。
じつは、わたしはずっと野球をやっていたので、
もっとも自分にとって身近な野球がゲームで、
しかも対戦できるところが新鮮でした。
岩田
小笠原さんは
実際に野球少年だったんですか?
小笠原
はい。小学校から高校卒業にいたるまで、
ずーっと、野球少年でした。
その期間は野球部が忙しかったので、
ゲームとのかかわりはそんなに深くはありませんでした。
でも、練習が早く終わる雨の日は
みんなで遊んだり・・・ゲームはものすごく好きでした。
岩田
ゲームは興味の対象ではあったけれども、
もっと優先度の高い野球があったので、
その欲望がなかなか満たされなかったんですね。
小笠原
そうです。だから
「いつになったらゲームができるんだろう?」って
ずーっと思っていて、ようやくその機会がきたのが
大学に入ってからでした。
岩田
大学のご専門は何でしたか?
小笠原
専門は化学系で、
ゲームとは関係のない方面でした。
岩田
ああ、化学ですか。
化学に興味をもったキッカケは何かあったんですか?
小笠原
あ、いえ・・・じつは受験勉強で得意だった、
くらいの選択の仕方でした(笑)。
それよりわたしは昔から非常に歴史が好きでしたので、
大学のときにはよく歴史の本を読んだり、
バイクに乗って合戦場に行ったり、
城に行ったりしていました。
岩田
各地の歴史を探索する旅でもあるわけですね。
歴史はなぜ好きだったんですか?
小笠原
大きなキッカケがあるわけじゃないんですけど、
小学生のころ、日曜の8時になると、
必ず大河ドラマを観る親だったので、
わたしも一緒に『徳川家康』(※4)とかを観ていたんです。
その時間、大体の小学生は
違う番組を観ていたと思いますが・・・。
岩田
月曜に学校に行くと、
友だちと話が合わないわけですね(笑)。
小笠原
そうでした(笑)。
それから中学校のとき、
革細工に家紋を彫る美術の授業があって、
うちの家紋を調べたら、
武田家と同じ“四菱”だったんです。
それで「武田信玄ってどういう人だろう?」と興味をもって、
新田次郎さん(※5)の『武田信玄』を読んでみたら、
「なんておもしろいんだろう、歴史小説は・・・!」
となってしまって、それ以来、
ずーっと歴史が好きなんです。
岩田
それでは中高時代、
野球少年であると同時に、
歴史が大好きだったんですね。
小笠原
そうです。
岩田
野球少年で歴史が好き、
そして大学の専攻は化学・・・。
興味の対象がマルチですし、
いろんな面をご存知なので、
あらゆるところで役立っているんじゃないですか?
野球をすることでスポーツの世界、
集団の独特さ、上下関係などを学びますよね。
歴史でいえば、バラバラだったものが
頭の中でつながっていくおもしろさ、
みたいなものがありますよね。
小笠原
ええ、まさにそうでした。
「あれもやりたい」「これもやりたい」っていう感じで・・・。
でも共通して言えるのは、
「人ってどう考えてどう動くんだろう?」
ってところがおもしろかったのかもしれません。
岩田
ああ、たしかに共通していますね。
小笠原
広く言えば“人とのコミュニケーション”について、
非常に興味が強かったのかなと思います。
昔、ゲームセンターで『マリオブラザーズ』(※6)を
2人プレイで対戦していたあのころから、
“ゲーム=人と強くコミュニケートできるもの”
って思っていたのかもしれません。
岩田
そこで全部くっついて、
野球も歴史小説もゲームも
“人と向き合うことのおもしろさがある”
と感じたんですね。
小笠原
はい、それで中学1~2年くらいの時期に、
「ゲームってものすごくおもしろいんだ」って
根っこの部分が生まれたんだと思います。
岩田
じゃあ大学に入ったあとは、
ビデオゲームにガッと入り込んでいくんですか?
小笠原
入っていきましたねぇ・・・。
大学受験が終わったその日にゲームソフトを買って、
そこから「解禁だーっ!」って感じで(笑)。
一同
(笑)
小笠原
それから先ほどお話しした歴史にも没頭していたので、
“「なんて歴史っておもしろいんだ!」っていう過ごし方+ゲーム”
という生活だったものですから、
そこで必然のように出会ったのが
『信長の野望』(※7)というわけです。
岩田
うーん・・・運命に吸い寄せられるように、
コーエーさんのところに行きますね(笑)。
『信長の野望』を知ったときは、
心躍りましたでしょう?
小笠原
そうですね!
友だちの家のパソコンに『信長の野望』が入っていて、
麻雀の順番を待ちながらやっていたんですけど、
すごい衝撃を受けました。
おまけに歴史好きだったこともあって・・・。
岩田
感情移入度が、半端ないわけですよね。
小笠原
そうなんです。
しかも家紋が武田家でしたから、
「武田家大好き!」になっていて(笑)。
岩田
家紋がご縁で、武田家びいきだったんですね(笑)。
小笠原
織田信長や徳川家康、豊臣秀吉なんかは
メジャーなだけに、他方から見たら
悪い面もあるという描き方をされがちなんですけど、
武田信玄は本などでも、あまり悪い面を描かれないんです。
だから「なんてすごいんだ、武田信玄は!」って
素直に思って育ってしまって・・・。
岩田
わたしも山梨に10年住んでいたことがあって、
地元の方がどれだけ武田信玄を誇りに思い、
大事にしておられるかっていうのは目の当たりにしています。
小笠原
さらにこれも運命というか、
武田信玄はゲーム内のパラメーターが
非常に高いんですよ(笑)。
岩田
ゲーム的に有利なんですね(笑)。
そこで武田信玄になりきって、
武田信玄ができなかった全国制覇の野望を
果たすゲームに出会ったわけですから・・・。
小笠原
これはもう、振り返ってみると、運命ですよね。
一同
(笑)