岩田
大岩さん、新しい
Newニンテンドー3DSが出ると聞いたのは
どのようなタイミングだったんですか?
大岩
開発はすでに後半に入っていまして、
一通りの移植作業を終わらせ、
挑戦状要素をゲーム最初から入れ込んでる最中でした。
それで、打ち合わせはいつも
東京のグレッゾでやっていたのですが、
あるとき突然「たまには京都でやりませんか」と言われたんです。
岩田
なんだか怪しい言いかたですね(笑)。
大岩
ええ(笑)。でも、自分たちとしても、
「たまには京都でやるのもいいかな」
ということで、おじゃますることにしました。
岩田
「ひさしぶりの京都だ!」という感じだったんですね。
そこに大仕事が待っているのも知らずに(笑)。
大岩
そうなんです(笑)。
そしたら、いきなり新しい3DSを見せられまして。
山村
まだ外に持ち出せないときでしたから、
わざわざ京都にお越しいただきました。
青沼
で、僕が「Cスティック(※18)でカメラを回したい」
とか言いはじめるんです。
大岩
「えっ、このタイミングで?」と思いましたけど(笑)。
青沼
すみません。でも、僕としては
どうしてもカメラを動かしたかったんです。
自分の好きなようにカメラが動かせるようなことは
『風のタクト』(※19)で初めてやって、
その気持ちよさがすごくわかっていましたし。
大岩
それで、青沼さんから託された大仕事を
会社に持ち帰ったんですけど、
Newニンテンドー3DSが非公開の時期でしたから、
スタッフみんなに話をすることができなかったんです。
そこで担当プログラマーなど、ごく一部の人だけに話をして、
コソコソと作業をはじめました。
岩田
コソコソと(笑)。
大岩
でも、それをやったおかげで、
リンクを移動させながら、このゲームの象徴の
月が見られるようになりましたし。
青沼
N64版では、それができなかったんです。
月が頭のすぐ上まで落ちてきてるということが
なんとなくわかりながらも、見えなかったりしましたし。
佐野
3日目になって、月が大きくなってるはずなのに、
「月はどこ?」という感じでしたからね。
でも、今回は好きなときにお月見ができます(笑)。
青沼
うれしいですよね(笑)。
岩田
でも、開発の終盤になってから
カメラを回すようにするのは
かんたんな仕事ではないですよね。
大岩
はい。そもそも『ムジュラの仮面』には、
カメラを制御するプログラムの種類が
ものすごくたくさんありますので。
岩田
シーンによって、いろんなカメラプログラムが
使い分けられるようなシステムになってるんですよね。
山村
そうなんです。ハシゴを登ったり、
デクナッツリンクで空を飛んだりと、
いろんなシーンでカメラプログラムが切り替わりますし、
『時のオカリナ』と比べてもかなりの数になっています。
大岩
ですから、たくさんあるカメラプログラムと
Cスティックのカメラとの切り替えがうまくいくのか、
膨大な組み合わせを精査する必要がありました。
山村
しかも、今回はリンクが変身しますから。
普通のリンクとゴロンリンクは背の高さが違うので
カメラの高さも変わるんですね。
大岩
それに、カメラを自由に動かせるということは、
見えちゃいけないものが、見えてしまったりとか・・・。
岩田
そういう問題も起こるんですよね。
大岩
ですから、予期せぬ問題が次々と出てきて、
一筋縄ではいきませんでした。
岩田
なるほど。開発に時間がかかった理由が、
またひとつわかった気がします(笑)。
青沼
でも、徹底的にやっただけあって
効果は絶大でしたね。
大岩
絶大です。
青沼
Cスティックでカメラが動かせるようになったことで、
『ムジュラの仮面』が生まれ変わったということが、
ものすごくハッキリ出せるようになりましたしね。
岩田
たいへんだけど、努力のしがいがあって、
ゲームの魅力にすごく影響するポイントだったんですね。
大岩
そう思います。
岩田
ちなみに、Newニンテンドー3DSには
「3Dブレ防止機能」(※20)がついていますけど、
『ムジュラの仮面 3D』との相性はどうですか?
青沼
そもそも『ゼルダ』というゲームは
遊んでいると、身体が揺れてしまうんです。
岩田
おもしろいアクションゲームで遊ぶと
身体が揺れますからね。
青沼
だからどうしても
立体視がずれてしまうんです。
だから、Newニンテンドー3DSに
「3Dブレ防止機能」が搭載されるという話を聞いて
「待ってました!」という感じでした。
『時のオカリナ 3D』のときは、
どうしても視点がずれてしまうことがあったんですけど、
新しい3DSではそれがまったくなくて、
立体視でもストレスなく遊べるのがうれしいですよね。
岩田
そのNewニンテンドー3DSで、
すでに発売されているタイトルを
もう1回遊びなおすと、別のゲームになりませんか?
青沼
そうなんです。
岩田
Newニンテンドー3DSが手元にきてから
『ルイージマンション2』(※21)をまず遊びなおしてみて、
「ああ、まったく別のゲームだ」と感じましたし、
ほかにも、『パルテナの鏡』(※22)や『時のオカリナ 3D』、
『マリオカート7』(※23)、『スーパーマリオ 3Dランド』(※24)など、
多くの3Dゲームの魅力が大きく変化すると実感しました。
「最初から3DSをこの形でご提案できなくて、すみません」
と言いたい気持ちにもなりました。
もちろん最初に3DSを出したときは、
このような技術はまだ存在していなかったので、
当時は絶対に実現不可能だったのですが、
「3D表示とはこういうものだ」という固定概念を捨てて、
過去に遊んでいただいた3DSのゲームを
もう一度体験いただきたいと思うほどです。
青沼
それくらいの違いがありますよね。
それで『ムジュラの仮面 3D』の話に戻しますと、
開発にこれほど長い時間をかけたというのは、
じつは新しい3DSの登場を待っていた、
みたいなところもあったのかなあって(笑)。
岩田
ああ、時間がかかった理由をそう説明しますか(笑)。
Newニンテンドー3DSの誕生を待つために、
時間をかけて開発したと。
青沼
というのも、カメラを回転させても、
まったくぶれませんし、
ちょっと窮屈な感じだった『ムジュラの仮面』の世界を、
パーッと広がったものにできたという手ごたえもありますので、
長い時間をかけてつくったからこそ
うれしい出会いが生まれたんだなあと思いました。
岩田
あと、立体視でよくなったことはありますか?
山村
もともと『ムジュラの仮面』の世界は
とても複雑な構造をしているんです。
町のなかの建物をはじめ、ダンジョンもそうですけど、
それが立体視できるようになったことで、
前後関係とか上下関係がすごくわかりやすくなったので、
行くべき場所はどこなのか、の把握に、
すごく貢献していると思います。
青沼
たとえば、デクナッツリンクが飛んだりしますけど、
立体視になることで、降りるべき場所の位置が
とてもわかりやすくなったと思います。
だから、立体視ができるようになったことが、
いろんな意味ですごくプラスになっていますね。
大岩
それに、ジャイロ(※25)を使った
操作もすごくいいですよね。
青沼さんが先日公開されたプレイ動画で
ミニゲームの射的場を遊んでいたじゃないですか。
青沼
あー、はい。
「タルミナ探訪」(※26)ですね(笑)。
大岩
たった3回目でパーフェクトを出したでしょう。
そのとき「よしっ!」って叫びましたから(笑)。
青沼
あれは自分でやっててもビックリしました。
そもそもN64版のときは
パーフェクトなんか出せなかったですから。
岩田
ジャイロとの相性もいいんですね?
青沼
そう思います。
3DSのジャイロ操作はとても安定していますし、
グレッゾさんのタイミング調整の見事さが、
3回目でのパーフェクトに結びついたと思います。
大岩
弓矢の調整もかなりやりましたからね。
なので「調整がうまくいったぞ」という意味での
「よしっ!」でもあったんです(笑)。