岩田
その“なんじゃこれはリスト”を
グレッゾの大岩さんに渡して、
そこから本格的な開発がはじまったんですか?
大岩
いえ、開発初期のころは、まだそれがなくて、
まず、N64版をプレイし倒しました。
いろんなプレイをし、その動画を撮って、
リストをつくるようなことからはじめました。
さらに、青沼さんから「新しい要素も入れてほしい」
という話がありましたので・・・。
岩田
じゃあ、最初から、
N64版を単純にリメイクするのではなく
新しい遊びも加えようということだったんですね。
大岩
そうなんです。
そこで、『ムジュラの仮面』の世界に、
どうすれば新しい要素が組み込めるのか、ということで、
自分たちでいろんなアイデアを妄想しまして、
それを青沼さんを通して
宮本さんにプレゼンしていただいたのが、
2011年の年末でした。
岩田
『時のオカリナ 3D』発売半年後ですね。
宮本さんに見せると聞いて
緊張しませんでしたか?
大岩
もう、ドキドキしながら
結果報告を待っていました(笑)。
で、そのプレゼンも無事に終わって、
そのあとになってから、まるで“挑戦状”のような
“なんじゃこれはリスト”が届いたんです。
岩田
お客さんへの“挑戦状”が、
今度は開発者への“挑戦状”に変わったわけですね。
大岩
そうですね(笑)。
山村
その“なんじゃこれはリスト”は
青沼さんがつくったものを元に、
わたしも一通りプレイをして確認し、
マリオクラブさんでもプレイしてもらって、
そこから新たに出てきた
“なんじゃこれは”的なものを加えて
ひとつにまとめたんです。
岩田
青沼さんのものから
“なんじゃこれはリスト”が
バージョンアップしたんですね(笑)。
山村
はい(笑)。
で、それをグレッゾさんにドーンと渡したんです。
(両手を上下に大きく広げながら)
「こんだけの課題がありますけど、
どうやってかたづけていきましょうか?」と。
というところから本格的な開発がはじまりました。
大岩
で、“なんじゃこれはリスト”を見ると
青沼さんの懺悔の言葉が
あちこちに書いてあったんです(笑)。
岩田
懺悔ですか(笑)。
青沼
「これはあかん」というところに
いろんなコメントを書いたんです。
「自分でつくって申し訳ないんですけど・・・」とか。
大岩
そのコメントは、
リストの頭に必ず入っていましたね。
青沼
あと、「僕は当時、ちょっと
おかしかったんだと思います」とか・・・。
大岩
会議をするたびに
同じようなことを言っていましたしね(笑)。
山村
「なんじゃこれは」は口癖でしたし(笑)。
青沼
“なんじゃこれは”的なものが出てくるたびに
「すみません」と謝りながらも、「でもこれは」と
弁明するようなことばかりやっていまして・・・。
それは最初にしっかり遊びなおすことで、
何をやらなきゃいけないかが
ハッキリ見えた、ということでもあるんですけど。
岩田
リメイクの方向性が見えたんですね。
青沼
はい。ところがものすごい数で・・・。
もちろん当時はちゃんと見てたはずなんですけど、
どうしてこんなにもたくさん
なおしたいものが出てくるんだろうと思いました。
岩田
わたしも自分が昔つくったものを見て
「ここをなおしたい」と言いたくなることって、
けっこうありますよ(笑)。
青沼
でも、すごくいっぱいあるんです(笑)。
岩田
何を自慢してるんですか(笑)。
一同
(笑)
青沼
やっぱり、最初に「フタを開けたくない」
と思って、開けたらそのとおりでしたし。
大岩
でも、今回のリメイクで、
“なんじゃこれは”的なものがすべてなおせたわけですから。
青沼
そうですね。
それはしっかりなおしてくれる人がいたからで・・・
本当にありがとうございました。
大岩
いえいえ(笑)。
岩田
人が散らかしたものをかたづけるのって、
どういう気持ちですか?
大岩
それは『時のオカリナ 3D』のときの
信頼関係がまずあって、
だからこそ送られてきた
“挑戦状”だと感じていました。
岩田
信頼できているからこそ、
“挑戦状”をたたきつけられたんですね。
青沼
はい。やっぱりグレッゾさんに
『時のオカリナ 3D』をリメイクいただいたことで、
『ゼルダ』がどんなプログラムなのかを
しっかり理解していただけていましたし、
『ムジュラの仮面』がどういうものなのかも、
プレイしてもらえればわかってもらえると思いました。
なので、今回のようなアプローチは
『時のオカリナ 3D』をリメイクしてくれた
グレッゾさんだからこそできたと思っています。
山村
それに、どんな小さなことでも
すごい情熱と高いモチベーションで
取りかかってくださったんです。
だから安心してお願いできました。
大岩
うれしいお言葉、ありがとうございます。
スタッフ一同励みになると思います。
青沼
でも今回は、僕らが15年以上前にやったことを
追体験したという感じになりましたよね。
『時のオカリナ』から『ムジュラの仮面』へという流れを。
大岩
ああ、なるほど。たしかにそうですね(笑)。
岩田
ところで、青沼さんは
『ムジュラの仮面 3D』と並行しながら
『神々のトライフォース2』(※16)もつくってたんですよね。
青沼
はい。本当は本腰を入れて
『ムジュラの仮面 3D』をつくりたかったんです。
岩田
でも、『神々のトライフォース2』は
リメイクではなく、新作ソフトでしたからね。
青沼
なので、次第に手が回らなくなりまして、
そこで大岩さんに、
「僕ができないディレクションをやってほしい」
とお願いしたんです。
岩田
大岩さんは最初に「流れでディレクターをやった」
と言いましたけど、そんな流れだったんですね。
大岩
ああ、なるほど。そんな流れがあったんですね。
岩田
えっ、大岩さんはいま知ったんですか?
大岩
はい(笑)。
青沼
で、『神々のトライフォース2』をつくっていると
「これは『ムジュラの仮面』にも入れられるよな」
みたいなことが見つかるわけです。
岩田
ああ、なるほど。
青沼
以前から、複数のタイトルを並行してつくってると、
そういうものが見つかることがけっこうあったんです。
岩田
すると“なんじゃこれはリスト”の課題を
一つひとつかたづけている間に、
今度は『神々のトライフォース2』から出てくる
新しいテーマにも取り組まなければいけなかったんですね。
大岩
そうなんです。
岩田
開発に長い時間がかかるのは当然ですね。
青沼
で、そうやって長くつくっていたものですから、
今度はNewニンテンドー3DS(※17)の話が出てくるんです。
岩田
はい(笑)。