1. “羊飼い”のように
※
この社長が訊くインタビューは通訳を介して行われたものですが、
全文を日本語にして掲載しています。
岩田
(テレビ会議のモニターに映っている
ネクストレベルゲームズのスタッフの姿を見て)
ありがとう、ルイージの帽子をかぶってくれて(笑)。
宮本
今日は僕、かぶらないです(笑)。
一同
(笑)
岩田
今日は『ルイージマンション2』の
インタビューということで、
まず、長期の開発、お疲れ様でした。
ブライス
ありがとうございます。
岩田
2012年のクリスマスシーズンまでには
ゆっくりできるかと思っていたら、
2013年までかかってしまいました。
みなさん、いまはニコニコしていますけど、
去年の終わりの頃は、
すごく大変だったんでしょうね。
ブライス
ええ。それはもう、
髪の毛をかきむしるような状態でした(笑)。
岩田
でも、みなさんのがんばりもあって、
宮本プロデュースの作品に恥じない、
しっかりした内容になったと思います。
ブライス
ありがとうございます。
最後の数か月間に行ったことは、
とても誇りに思っています。
岩田
では、今作にかかわったみなさんに
自己紹介をお願いします。
ネクストレベルゲームズ(※1)のみなさんからどうぞ。
ブライス
ブライス・ホリディです。
『ルイージマンション2』では
ゲームディレクターとしてかかわりました。
チャド
チャド・ヨークです。
『ルイージマンション2』では、
オーディオディレクターという仕事をしました。
岩田
このジャンルのゲームでは、
オーディオもとても重要な要素ですよね。
チャド
そうですね。
ブライアン
ブライアン・デイビスです。
ゲームプレイプログラマーとしてかかわりました。
スパイダーのボスや階段のボスなどの
開発を担当しました。
今日はこのような場にいることができて、
とても光栄に感じています。
池端
企画開発部の池端です。
今作ではスーパーバイザーとしてかかわりました。
カナダにいるディレクターのブライスさんたちと、
ゲームのネタや仕様をいっしょに考えたり、
あとは宮本さんに定期的に進行状況を報告に行って、
その時に聞いた反応を彼らに伝えるようなことをしていました。
岩田
池端さんは、
任天堂側でディレクター的な役割と同時に
宮本さんとの窓口も務めたわけですね。
池端
はい。
岩田
宮本さんは・・・
改めて自己紹介をすることもないですが。
宮本
え、一応、させてほしいんですけど・・・
あのう・・・任天堂の宮本です(笑)。
一同
(笑)
宮本
僕はこれまで
いろんな種類のプロデュースをしてきましたけど。
岩田
そうですね。
宮本
でも、今回はちょっと特殊だったんです。
ひとつは『ルイージマンション』(※2)の原作者として、
もうひとつはディレクター陣の後見人として、
2週間に1度、池端さんと話をするという、
わりと薄く長く、というかたちでかかわったので、
とても珍しいスタイルのプロデュースになりました。
しかも基本的にクリエイティブは現場がして、
僕は担当しない、という意味での後見人でした。
ブライス
でも、わたしたちにとっては
ベストなコーチでした。
岩田
今回はメンター型の
プロデュースだったんでしょうか?
宮本
メンター型、というのは?
岩田
メンターというのは
英語では「師匠」とか「指導者」という意味なんですが、
「開発現場の人たちにとっては
“心の師匠”のような感じだったんじゃないかな」
と思ったんですが。
宮本
そんなかっこいいもんじゃなくって、
まあ、言ってみれば
“羊飼い”のようなもんだったんです。
岩田
“羊飼い”ですか?(笑)
宮本
はい。それも、
「こっちに行け」みたいに
明確な指示を出すんじゃなくて、
「そっちに行ってはいけないよ」
というようなことを言うだけの
“シープドッグ”のような役だったんです。
岩田
つまり「こういう方向でつくりなさい」
ということは言わないけど、
「その方向は間違っているよ」
ということだけを伝えるわけですね。
宮本
そうです。
すると、よけいなことをしなくなるので、
みんながかかわった仕事が、ほとんど全部、
結果につながっていくんです。
ブライス
自分たちとしては、時には自由に
放牧されたい時もあったんですけど(笑)。
「うまく誘導していただけた」と思います。
宮本
そうやって、3年以上走ったぶん、
今回は、それが丸ごとロムに詰まっていますから。
岩田
たしかにこのプロジェクトは
とても開発期間が長かったですよね。
池端
はい、長かったです。
2009年からずっとこのタイトルにかかわってきて、
3年ちょっとになるんですけど。
チャド
わたしの子どもがふたり、生まれましたから(笑)。
岩田
それはおめでとうございます(笑)。
でも、「開発に3年以上かかった」とは言っても
とくに迷走したわけでもなかったんですよね?
池端
そうですね。
あっと言う間に過ぎた印象です。
岩田
3年もかかわったのに、
あっと言う間、なんですか?
池端
はい。それくらい密度が濃かったんです。
岩田
“羊飼い”の誘導がよかったから、
そのぶん、充実した開発ができたんですね。
池端
はい。おかげさまで
迷える羊にならなくてすみました(笑)。
岩田
そもそも、このプロジェクトの話を聞いた時、
ネクストレベルゲームズのみなさんは
どんな感想を持ちましたか?
ブライス
じつはその当時、任天堂関連の
まったく別のプロジェクトにかかわっていて、
ある日、テレビ会議を使って
それについてのミーティングをすることになったんです。
チャド
わたしたちは試作品をつくって、
そのミーティングに備えていたんです。
ブライス
すると、田邊(賢輔)(※3)さんが
いきなりドラムロールのような音を鳴らしはじめて、
「『ルイージマンション2』をつくってもらいます!」
と突然言われたので、その時はもう
声が出ないくらい、驚きました。
チャド
みんなすごく興奮しましたよね。
オーディオ担当の自分としても、
これまで『マリオストライカーズ』(※4)や
『PUNCH-OUT!!』(※5)などにかかわってきましたけど、
『ルイージマンション』は
そういったスポーツゲームではありませんので、
「いろんな音楽をつくることができる」と思って、
それはもう天に昇るくらい、うれしかったです。
ブライアン
わたしはもともと
すごい任天堂ファンなんです。
池端さんはよくご存じなんですけど(笑)。
池端
はい。よく知ってます(笑)。
ブライアン
ずっと任天堂のゲームで遊んできましたし、
なかでも『ルイージマンション』は
今日ここに、ゲームキューブの
ソフトを持ってきているくらいお気に入りなんです。
そのソフトの続編にかかわれるということで、
「自分のそれまでの経験や知識が活かされるだろう」と、
すごくワクワクしたことを覚えています。