社長が訊く
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社長が訊く『New スーパールイージ U』

社長が訊く『New スーパールイージ U』

目次

3. トッテンで複数の問題を解決

岩田

竹本さん、手塚さんから
「ルイージを主人公にするのはどう?」
と言われたとき、どう思いましたか?

竹本

最初は「何を言ってるんだろう」と(笑)。

岩田

あははは(笑)。

竹本

でも、数日後にまた
手塚さんが同じ話をしにきたので、これは・・・。

岩田

本気だと(笑)。

竹本

そうです。本気なんだと思いました。
そこでルイージを軸に
考え直してみることにしたのですが、
それまでは「82コースのすべてを変える」
ということで追加コンテンツをつくっていましたけど、
それはある程度の売りにはなっても、
自分としてはしっくりきていなかったんです。
ところが、主役を替えることでハッキリと
「ルイージのゲームです」
と言うことができますので・・・。

岩田

説明しやすくなりましたよね。

竹本

そうなんです。
やっと説明がつくゲームになると思いました。
それからは自分自身も仕事に乗って、
すごくつくりやすくなりました。

手塚

(うれしそうに)ああ、よかった。

竹本

(笑)

手塚

実際に、ルイージに替えて
よかったことがいくつもありました。
マリオでつくっていたときは
そこそこ難しい遊びになってしまっていて、
自分としても「ちょっと難しいかな?」
と思うようなところもあったんです。
ところがルイージに替えると、
やっぱり操作も変えないとね、ということで、
つくり直してみたら、それまでは難しかった場所が
そうでもなくなったりしたんです。

岩田

ジャンプ力もアップしますしね。

手塚

ええ。その結果、
ほどよいバランスになりました。
それに、もともと追加コンテンツということで
ダウンロード版だけでいいと思ってたのですが、
パッケージ版も出すことになりまして・・・。

岩田

手塚さんは、任天堂の世界中の営業部隊から
「ぜひパッケージ版も出してください」
と、頼まれたんですよね?

手塚

はい。その時「本当にやるの?」
と思ったんですけど(笑)。

岩田

まったく想定していなかったんですね。

手塚

はい。自分としては
「追加コンテンツをみんなに知ってほしい」
ということしか頭にありませんでしたので、
それをパッケージにするなんて・・・。
でも、いろいろと考えてみると、
そういう広めかたもありなんだと思いました。

岩田

パッケージ版も出すことで、
『New マリオ U』を遊んでいない人たちにも
触ってもらえる機会が増えるわけですからね。

手塚

そうなんです。
それまでは『New マリオ U』を遊んだ人だけが対象で、
しかも「もっと遊びたい人」だけだったのが、
パッケージにすることで、
『New マリオ U』を遊んだ人だけでなく、
まだ遊んでいない人も対象になる、
というところがすごく大きいと思いました。

岩田

でも、主役をルイージにしたことで、
マルチプレイをするときのプレイヤーキャラを、
新しく考えないといけなくなったんですよね?

手塚

トッテン(※9)ですね。

※9
トッテン=『New スーパーマリオブラザーズ U』で登場した新キャラクター。キノピオの家からアイテム盗み出しコースでマリオと追いかけっこをする。敵をすり抜けて逃げるのが特徴。

岩田

どうしてトッテンを選んだんですか?

竹本

ルイージを主人公にすると決めた時点で、
手塚さんにはまず
「マリオは絶対に出したくないです」
という話をしていたんです。

竹本3

岩田

情報開発本部のふだんの会話では
絶対にありえない話をしてますね(笑)。
「マリオは絶対に出したくない」だなんて。

竹本

そうですね(笑)。
「キノピオを3人出してもいいんじゃない?」
という話も出てきたんですけど、
さすがにキノピオ3人が同時に出てくると
わけのわからない画面になってしまいますし、
「せっかくだから、新しいキャラを使いたいです」
と、しつこく手塚さんに言い続けていたんです。

岩田

竹本さんがしつこく言わなかったら、
なんとなくキノピオ3人になってたんですか?

手塚

ああ・・・たしかに
そうなっていたかもしれないですね。

竹本

そこで、キャラクターを
いちから見直してみることにしました。
そもそも、このシリーズには
たくさんの敵が登場しますけど、
仲間になるようなキャラが少ないんです。

岩田

例によってピーチは最初からプレイヤーと離れ離れで
救いに行く対象ですしね(笑)。

竹本

はい(笑)。
なのでトッテンしかいないと。
というのも、『New マリオ U』には、
トッテンを追いかける遊びが入ってますけど、
このキャラを、「敵をすり抜ける」性能のまま
プレイヤーキャラとして使えるだけでも
おもしろいのではないかと思いました。
そこで、試しにつくってみようということで、
プログラマーさんに頼んだのですが、
最初は「本当にトッテンでやるんですか?」
という反応だったんです。

岩田

プログラマーは乗り気ではなかったんですね。

竹本

そうなんです。
ところが実際につくってもらったら、
それを見せてくれる前に、
そのプログラマーさんから電話がかかってきて、
「トッテンが使えるのって新鮮な感覚です!
 コースセレクト画面を歩いている姿もおもしろいですよ」
と、うれしそうに話してくれたんです。
その声を聞いて、手塚さんには
トッテンを推しまくるしかないと思いました。

岩田

手塚さんの了解をとる前に、
とりあえずつくってみたんですね。

竹本

はい。そこで、
手塚さんにトッテンの試作を見せながら
「敵との当たり判定がないということは、
 初心者向けとしてもイケるんじゃないでしょうか?」
という話をしました。

手塚

そう。ちょうどその頃、
「初心者の方向けの仕様も必要やね」
という話をしていたんですけど、
その要望にトッテンがピッタリ合ったんです。
なので、宮本さんがよく言う・・・。

岩田

「アイデアとは
 複数の問題を一気に解決するもの」(※10)

※10
「アイデアとは複数の問題を一気に解決するもの」=『ほぼ日刊イトイ新聞』で紹介された宮本(茂)の言葉。くわしくは、「アイデアというのはなにか?」を参照。

手塚

まさに、トッテンで
問題が解決できると思いました。
じつはここだけの話、1人用でも
トッテンで遊べるようにもしてあるんです。

岩田

たしか、5月のニンテンドーダイレクト(※11)で紹介した時は、
複数プレイのときだけトッテンが使える、
という話をしましたけど・・・。

※11
5月のニンテンドーダイレクト=「Nintendo Direct 2013.5.17」のこと。

手塚

あのあと、仕様締め切りの頃でしたので
「隠し操作でもかまわないから、
 初心者の方が快適に遊べるように」と、
1人用でも遊べるように仕込んでみました。
それでトッテンの出しかたなんですけど、
むかしのゲームには、隠しコマンドがありましたよね。

手塚3

岩田

はいはい。隠しキャラを
隠しコマンドで出したりしました。

手塚

あえて具体的には言いませんが、
コースに入るときに“あること”をするだけなので、
おそらくかんたんに見つかると思います。

岩田

そこは、お客さんにぜひ見つけてください
ということなんですね。

手塚

はい。そのような隠しコマンドって、
最近のゲームではあまり入れませんでしたので、
ちょっと懐かしい思いをしながら、
自分で見つける楽しさも
味わってほしいと思っています。