芦田 |
はい。私は、Wii本体とコントローラのデザイン、
ほかにパッケージやロゴのデザインなどを担当しました。
|
岩田 |
芦田さんは、スーパーファミコンのころから
任天堂のハードのデザインを担当してきたわけですけど、
Wiiのデザインで心がけたところはなんだったんでしょう。
|
芦田 |
まず、Wiiのデザインを考えるうえで、
社内でハードについてのいろんな意見を聞いていくと、
さきほどの高本の話にもありましたが、
とにかくみんな、テレビのまわりを
もうこれ以上ごちゃごちゃさせたくないんだと。
それは大きさだけではなく、形の意味でも。
たとえばニンテンドウ64というのは形として曲面が多くて、
置く場所が限られてしまう機械なんですね。
ですから、大きな目標のひとつは、
置きやすいデザインにしなくてはいけないということでした。
一方、ゲームキューブについての意見で多かったのは、
やはり、これは「おもちゃのデザイン」であるというものでした。
もちろん、それは意識してやったことで、
任天堂のハードというのは、スーパーファミコンのころからずっと、
「おもちゃである」ということに対して
非常に意識的にデザインされてきたんです。
AV機器としてのデザインを無視していたわけではありませんが、
どちらかといえば、おもちゃというか
娯楽としてのデザインにウェイトを置いてきた。
けれども、いまはユーザーの年齢層も変わってきていますから、
おもちゃとしてのデザインの軸と、AV機器としてのデザインの軸の
両方のバランスを見ながら作っていかなくてはならないと思ったんです。
|
岩田 |
そこにも、矛盾するふたつの命題がありますね。
|
芦田 |
そうですね。
おもちゃになりすぎると、テレビのまわりに馴染まない。
AV機器になりすぎると、娯楽のデザインとしておもしろみがない。
そんななかで、少しでも幅広いユーザーの方に使っていただくために
出てきたキーワードというのが「嫌われないデザイン」でした。
強烈な個性のあるデザインというよりも、
Wiiは誰からも嫌われないマシンにしたい。
おもちゃでもなく、AV機器でもなく、
まるでひとつのインテリアのように置かれるものにしたかったんです。
そのためにぼくがやったことのひとつは、
社内でWiiのデザインチームを結成することでした。
これまでのハードのデザインというのは、
どちらかというとあるひとりのデザイナーが中心にやってきたんです。
けれども、Wiiのデザインにおいては、
社内の若いデザイナーを集めて、
さまざま意見を吸い上げることにしました。
もちろん、それでいまの形がすんなり完成したかというと
そうではないわけですが……。
|
岩田 |
Wiiのデザインができていくうえで
ターニングポイントになったのはなんだったのでしょう。
|
芦田 |
はっきりと方向が決まったのは、
本体とスタンドの組合せを思いついたときでした。
というのも、まず、Wiiには
「DVDケース2、3枚分」という具体的な目標がありました。
DVDケースを目標に作っていくと、
やはり本体の基本的なデザインは直方体になるんですね。
ところが、どうしても直方体をデザインするだけでは
行き詰まってしまうんです。その、直方体ですから(笑)。
そんななかで、若いデザイナー達がスタンドを作って、
それと本体を組み合わせることで
本体が直方体でも、さまざまな新しい形が表せることがわかったんです。
|