岩田
『マリオコレクション』というタイトルは
すんなり決まったんですか?
杉山
いや、タイトルもやっぱりいろいろ案が出ていて、
なかなか決まらなかったです。『マリオ三昧』とか・・・。
岩田
えっ? マリオ、ざ・ん・ま・い!?ですか?(笑)
森
はい(笑)。開発のはじめからそう呼んでたんです。
杉山
うん、『マリオ三昧』とずっと呼んでましたね。
岩田
それはちょっと衝撃ですよ(笑)。
杉山
もちろん仮称だったんですけど、
やっぱり『スーパーマリオ1、2、3』と『マリオUSA』が入ってますし。
森
しかも、『スーパーマリオ3』(※8)には
「バトルゲーム」を追加で入れて、
『マリオブラザーズ』(※9)が遊べるようになっているんです。
杉山
好きなだけ遊べるようにと
メニューから『マリオブラザーズ』を選べるようにして
入れたんです。
森
あーそうそう、あれ、開発中によく息抜きで遊んでました(笑)。
※8
『スーパーマリオ3』=『スーパーマリオブラザーズ3』。1988年10月に、ファミコン用ソフトとして発売されたアクションゲーム。
※9
『マリオブラザーズ』=1983年にアーケード版が登場し、同年9月にファミコン版が発売されたアクションゲーム。
岩田
『スーパーマリオ』の初期の10年くらいの、
すごく濃い歴史の部分が、ひとつに詰まったソフトだったんですね。
杉山
なので“マリオのゲーム三昧”を楽しんでほしいと(笑)。
でもタイトルに関しては、二転三転してなかなか決まりませんでした。
岩田
そうでしょう。このような商品のタイトルは難しいと思うんですよ。
誰が『スーパーマリオコレクション』にしようと
発案したのかは覚えてませんか?
杉山
最終的に宮本さんが言ったんじゃなかったかな・・・?
森
うーん、それはぜんぜん覚えていないんですけど、
僕は杉山さんがタイトル画面を描いてるのを見て、
「ああ、『スーパーマリオコレクション』に決まったんだ」と。
岩田
『マリオ三昧』が
『スーパーマリオコレクション』になったんだと(笑)。
森
なので「ちょっと残念だな」と思いました(笑)。
岩田
あははは(笑)。『マリオ三昧』のほうがよかったですか?
ちなみに、そうやって
17年前に発売された『スーパーマリオコレクション』が、
「スーパーマリオ25周年」を機に
「Wiiでこれを発売したいんだけど」と聞いたときの
最初の印象はどうでしたか?
杉山
正直、驚きました(笑)。
岩田
Wiiのお客さんにとって、
『マリオコレクション』というソフトは
どのように見えると思いますか?
杉山
とても新鮮なんじゃないでしょうか。
まったく知らない世代の人たちが、これで遊ぶというのは。
岩田
もちろん『マリオコレクション』を知らずに育った
若い世代の人たちにとって新鮮に感じていただけるでしょうし、
その一方で、かつて本気で遊びこんだ人や、
初代の『マリオ』はやったけれども、
『マリオコレクション』が出た頃はゲームをしていなかった方々も
Wiiを遊んでいらっしゃると思うんです。
いろんなお客さんに楽しんでいただきたいですよね。
杉山
はい、そう思います。
岩田
それでは最後の質問をして終わりにしたいと思います。
25年も前のクリエイティブである『スーパーマリオ』が、
多くのお客さんたちにとって、いまでも楽しいと
そう思ってくださる理由はいったい何だと思いますか?
・・・どちらが先にお話されますか?
杉山
じゃあ僕から。何年も楽しめる理由は
操作性の奥深さがあって、飽きさせないことだと思います。
森
ああ、先に言われてしまいました(笑)。
一同
(笑)
岩田
それは、久しぶりに押し入れから引っ張り出した
スーパーファミコンで、再び実感されたんですね。
杉山
はい。ついつい遊びこんでしまいましたので(笑)。
岩田
森さんはどうですか?
森
杉山さんに言われてしまいましたが、
僕もやっぱり操作性の話になります。
自分が当時、『マリオUSA』の絵を描いたとき、
何度も何度も開発中のソフトをプレイして、
“引っこ抜く”ということの
生理的な気持ちよさをすごく感じたんです。
岩田
確かに『マリオUSA』の“引っこ抜く”には驚きましたよね。
わたしも当時「こんなことをゲームにするのか」と思いましたから。
しかも、引っこ抜いて、投げるというネタが
組み合わさっていくじゃないですか。
ただ、地面に埋まっているものを引っこ抜くだけじゃなくて、
相手の上に乗って抜いたりとか、そのような展開が、
「いいネタというのは掛け算ができるんだなあ」と、
当時、すごく感じたことを覚えています。
杉山
それに、“引っこ抜く”とは言っても
やってるうちにすごく心地よい感じになるのは、
やっぱり『マリオ』のテイストなんですよね。
森
そうなんですよ。
ボタンを押したら、自分に何かが返ってきて、
押すこと自体が楽しい、抜くこと自体が楽しいということを
『マリオUSA』をつくっているときに感じていて、
『マリオ』シリーズが長く愛され、支持される理由のひとつとして、
そのような生理的な操作感の気持ちよさがあり、
しかも、たぶん、どの『マリオ』シリーズでも
それを大事にしているからなんだと思っています。
岩田
ありがとうございました。
今回、Wiiで出る『スーパーマリオコレクション』には
初期の2Dマリオのゲームが収録されていて、
2Dアクションゲームの発展が見られるようなものにもなったと思います。
2Dアクションゲームが持つ根源的な面白さは
ちょうどあの時期に集中して発見され、発明され、
ゲームとしてまとめられていったように感じているんです。
しかも、『スーパーマリオ』の誕生から25年経ったいまも、
『マリオ』シリーズは「おかげさまで元気でいられます」と
ハッキリ言うことができて、
それはどこまでが偶然で、どこまでが幸運で、
どこまで努力の結果、引き寄せたのかというのは誰にもわかりませんけど、
ひとつ言えるのは、あの当時、
みなさんのチームがすごい鉱脈を掘り当てたということは
確かではないかと思うんです。
杉山
そうかもしれないですね。
岩田
娯楽というのはやっぱり“飽き”と闘うものなので、
古くなるんですよね、すぐに。
ただ、そうなんですけど、人が何かをすると返ってくるとか、
なにかうまいタイミングで跳び越えられると
すごく気持ちがいいというのは、
根源的な面白さがそこにあるからなんだと思います。
杉山さんが17年前のカセットを押し入れから引っ張り出すと、
すぐにちゃんと遊べてしまうような何かが、
そこにはあるんじゃないかと思います。
杉山
そうですね(笑)。
岩田
あ、ところで、杉山さん、人文字写真には写りましたか?
杉山
人文字・・・ですか?
岩田
今回の『マリオコレクション』には
「スーパーマリオヒストリー 1985-2010」という
ブックレットとサウンドトラックCDのオマケが付いてきて、
そのブックレットのほうに掲載する写真を撮るために
みんなで集まったでしょう?
杉山
あー、はいはい、テニスコートに『マリオ』スタッフが集まって
屋上から撮った写真ですね。はい、僕も入りました。
岩田
残念ながら、
『マリオ』スタッフ全員というわけにはいかなかったんですけど、
みんなとてもいい表情をしていて、すごくいいなと思いました。
このブックレットやサウンドトラックCDも含めて、
一人でも多くの人に2Dマリオの楽しさを
味わっていただけたらうれしいですね。
本当に今日は急にお呼びしてすみませんでした。
森
こちらもいろいろ思い出せましたので、楽しかったです。
岩田
ありがとうございました。
杉山・森
ありがとうございました。