岩田
そういったなかで今回、
「主人公にMiiを使ったパーティゲームをつくってみませんか」
というテーマが、NDキューブさんに舞い込んできたわけですよね。
最初にその話を聞いたとき、みなさんは何を感じましたか?
池田
NDキューブに入って今回の話を聞いたとき、
「これは面白そうだ」と思いました。
絶対に面白いものができると感じましたし、
ぜひやってみたいと思いました。
岩田
「いいテーマが来た」と思われたんですね。
池田
ええ、最高のテーマだと思いました。
岩田
西谷さんはどう感じましたか?
西谷
『マリオパーティ』は
好きなキャラを使って遊べるのが魅力なんですけど、
Miiを使った場合、自分や友だちといっしょに
遊ぶ感覚がとても強くなると思いました。
岩田
Miiは自分や家族、友だちの分身ですからね。
西谷
はい。実際に『マリオパーティ8』(※7)では、
卓球ゲームとかでMiiをちょっと使用したんですね。
それがすごく楽しくて、今回の話は
「待ってました」という感じで、すごくうれしかったです。
※7
『マリオパーティ8』=2007年7月に、Wii用ソフトとして発売されたパーティゲーム。
岩田
提案した側はどうだったんですか?
佐藤
実は、今回の提案をする前に
「Miiを使うとどんなことが面白いのか」ということを
いくつか考えたことがあったんです。
そしたら「Miiに変な格好をさせたら面白い」とか、
そういうことばかりを考えてしまうんです。
『マリオパーティ』におけるマリオの扱いでは迷わなかったのに、
Miiの扱い自体に迷ってしまうところがあったんです。
廣瀬
そうなんですよね。
わたしは以前、
Miiを使ったゲームのお手伝いをしたことがあって、
そのときに着ぐるみを着せたりとか、
いろんな格好をさせるとけっこう楽しかったんです。
でも、今回改めて社内で確認してみると、
Miiの扱いに関してはルールがあることがわかりました。
佐藤
やっぱりMiiというのはお客さんの分身ですから、
お客さんが嫌な気持ちにならないように、
しっかり配慮することが大切だということを
Miiの扱いに関するルールとして決めているんです。
岩田
不快な目に遭うということを強調して見せることで、
笑いを誘うような、そんなキャラクターとして
Miiを使うことはダメだということなんですね。
佐藤
そうなんです。
岩田
最初に「最高のテーマ」だと感じた池田さんは
実際に開発がはじまってどう思われましたか?
池田
実際につくりはじめてみると、
佐藤さんも廣瀬さんも言われたように
いろんなルールがあるんだなぁと感じました。
岩田
最初はつくりやすいテーマだったと思ったのに、
実は大変だったということなんですね。
池田
はい。『マリオパーティ』をつくっているときは、
マリオのテイストやマリオの世界観を守らなきゃいけませんでしたが、
逆にそれを守っていれば、どんな使い方もできたんです。
岩田
それにマリオは思いのほか、大らかな世界観で、
絶対にダメなことはもちろんあるんですけど、
本当にダメなことは意外と少ないんですよね。
池田
そうなんです。たとえば火山があって、
マグマが噴火していてもいいし、宇宙に行ってもいいしと、
わりと自由度が高かったんですけど、
Miiの場合、それが逆で、
考え出すとどんどん深みにはまってしまったんです。
最終的には、一瞬、浮いたりとかもしますし、
現実の人間ではあり得ないようなことも
認められるようになりました。
そこは、たぶん廣瀬さんがわれわれの知らないところで
調整してくれた結果なのかなと思います。
岩田
任天堂とNDキューブさんとの橋渡し役だった
廣瀬さんは、どのような交渉をしたのですか?
廣瀬
まず、担当の人に相談したあと、もし「ダメ」と言われたら
「どうしたらいいですか?」と細かく細かくその理由を聞いて、
それをNDキューブさんに修正してもらうようにしていきました。
岩田
Miiでいろんなことが実現できたのは、
廣瀬さんの交渉力に助けられたところがあるんでしょうね。
西谷
それは大いにあったと思います。
マントをつけて、宇宙も飛べるようになりましたし(笑)。
岩田
Miiの扱い方にルールがあるから、
どんな舞台じゃいけないとか、
どこに行ってはいけないとか、
本当はそういう問題じゃないんですよね。
廣瀬
そうなんです。今回はパーティゲームですので、
バラエティの豊かさが求められる部分で
いろんなことを許容してもらえるようになったと思います。
岩田
ところで池田さん、
もともと『Wii Party』は
もっと早く出す予定だったんですよね。
池田
ええ・・・はい。『Wii Party』の開発には
思いのほか時間がかかってしまいました。
こんなに遅れるとはまったく思っていませんでした。
岩田
でも、『マリオパーティ』シリーズのほとんどは
毎年のように発売されてきたわけですよね。
パーティゲームの開発に関しては
とても経験のある人たちが今作に関わってきて、
開発が大幅に遅れてしまったのは
何が原因だったと思いますか?
池田
それは・・・。
岩田
あ、責めているわけではないんです(笑)。
結果的にすごくいいものができたと思っていますし。
池田
はい(笑)。・・・遅れてしまったのは
Miiのこと以外に大きな課題があったからでした。