岩田
DS版の『どうぶつの森』(※1)が出て丸3年になり、
首を長くしてお待ちになっていたお客さんも多いと思います。
最初にみなさんがそれぞれ何を担当したか、話してもらえますか。
※1
DS版の『どうぶつの森』=2005年11月発売の『おいでよ どうぶつの森』。シリーズ4作目で、初めての携帯ゲーム機版。
野上
情報開発本部 制作部の野上です。
ディレクターとしてゲーム全体の構想から
通信関連の仕様作成などを行いました。
毛呂
同じく制作部の毛呂(もろ)です。
今作では、サブディレクターとして
システム関連の仕様作成やデバッグなどを担当しました。
小林
制作部の小林です。
今回はグラフィックデータ全般の監督・監修などの
デザインディレクターを担当しました。
京極
制作部の京極です。
どうぶつたちの行動や会話に関する仕様の作成や
メッセージを書いたりと
シーケンスディレクターとして参加しました。
岩田
ではまず、この企画がどうやってはじまったか、
野上さん、話してください。
野上
はい。DS版の仕事が終わったあと、
『Wii Sports』をはじめとする
Wiiソフトの開発にしばらく関わって、
その後、本体機能の「似顔絵チャンネル」の開発を担当していました。
岩田
「似顔絵チャンネル」は行きがかり上、
野上さんも巻き込まれてしまったんですよね。
野上
しかも、「2ヵ月で形にしなさい」って(笑)。
で、その「似顔絵チャンネル」の開発がひと段落したあと、
本体機能のサポートをしていたのですが、
「そろそろ次の『どうぶつの森』を考えなければ」
というプレッシャーを感じつつ、
なかなか手が空かないので「どうしよう?」
という感じだったんです。
岩田
わたしはWiiの本体機能の会議に頻繁に顔を出していましたので、
「似顔絵チャンネル」を担当してもらっていた頃は、
野上さんと打ち合わせをすることが多かったんですが、
なかなか「似顔絵チャンネル」関連の仕事が終わりそうに見えないので、
「いつ『どうぶつの森』はできるんだろう?」って
心配していたんですよ。
野上
そこで、本体機能の仕事がひと段落した
2006年の12月からプロジェクトをスタートさせました。
そのときは、「似顔絵チャンネル」の
アフターケアのような仕事が残っていたんですが
それと並行して『どうぶつの森』をつくりはじめました。
岩田
つまり、開発期間はほぼ2年ということですね。
最初にWiiという新しいゲーム機を目の前にして
これで『どうぶつの森』をつくることになったとき、
野上さんは何をいちばん意識しましたか?
野上
やっぱり、すごく意識したのはWiiConnect24(※2)です。
幸いにして「似顔絵チャンネル」の仕事に関わったときに
WiiConnect24を使ってどんなことができそうか勉強できましたし。
※2
WiiConnect24=インターネットに常時接続し、最新情報やメッセージなどを自動的に取得するWiiのネットワークサービス。
岩田
あの仕事を頼んだのはムダじゃなかったんですね。
実は、最初から『どうぶつの森』のことを考えていて
「似顔絵チャンネル」の仕事をお願いしたんです、
って言えればカッコイイんですけど、
Wiiの本体機能は、時間に余裕のない中で、
いろんな関係者を巻き込みながら進んだので、
そんなことを考える余裕はなかったんですよ(笑)。
一同
(笑)
野上
でもそのときに、Wiiの本体機能を使えば
どんなことができるのかしっかり研究できましたので
それをどうやって『どうぶつの森』に活かそうかと、
まず、そこから考えはじめました。
岩田
Wiiの本体機能の活かし方については
後ほどお訊きすることにして、
毛呂さんはどうやって巻き込まれたのですか?
毛呂
わたしはDS版のときも
システムディレクターとして関わっていて・・・。
岩田
じゃあ、ごく自然な形で。
毛呂
そうです。野上さんと同じように
Wiiの本体機能の仕事が一段落した時点で
自然に関わることになりました。
岩田
小林さんは?
小林
僕もDS版に関わっていたのですが、その仕事が終わったあと
『Newスーパーマリオブラザーズ』のお手伝いをして
『Wii Sports』と『はじめてのWii』、それと並行して
「似顔絵チャンネル」のグラフィック担当をして、
それが終わってから・・・。
岩田
人使いの荒い会社ですねえ・・・
わたしが言うのもナンですけど(笑)。
小林
そのあたりの仕事が終わったあとに巻き込まれましたので
他の人と同じようなタイミングですね。
岩田
ムダなく、仕事をシフトできたんですね。
宮本(茂)さんは口癖のように「人生にムダなし」と言ってますし。
京極さんは、『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』のときにも
「社長が訊く」に出て
もらいましたね。
京極
はい。その『ゼルダ』のお仕事が
2006年の晩秋の頃に終わって、
ゆっくり冬休みをとっていたんですが、
その頃に「次の『どうぶつの森』をよろしく」という感じで
わたしも・・・巻き込まれていきました(笑)。
岩田
京極さんのメインの仕事はスクリプト・・・、
つまりキャラクターのセリフを考えたりする仕事ですけど
『ゼルダ』から『どうぶつの森』って
落差があまりにも大きくありませんでしたか?
京極
そうですね。ノリが全然違いますし。
でも、ボリュームに関しては
自分的にはあんまり違いがなくって、
どっちも大変でした。
岩田
しかも、ローカライズ、
つまり海外版へ翻訳する作業のことを考えると、
世界各国の文化に合わせて調整する要素も多いので、
『ゼルダ』よりも、むしろ大変なんだそうですね。
京極
とくに今回は全世界でほぼ同時に発売するということもあって
NOA(Nintendo of America)の人から
「Wii版の『どうぶつの森』はいつ届くんですか?」って、
何度も問い合わせが来ていたんです。
岩田
NOAとしても『どうぶつの森』のテキスト量が
尋常でないことはわかっていますからね(笑)。
だから、事前にローカライズの体制を
しっかり整えておく必要があったんですね。
それでは、話を元に戻しましょうか。
スタッフも集まり、いよいよWii版をつくることになったとき、
DS版とのしがらみとかありませんでしたか?
野上
それはもちろんありました。
ですが、前作のことはいったん忘れるようにして
フラットな状態からはじめることにしました。
そもそも『どうぶつの森』って
1人で遊んでも十分に楽しめるように
考えてつくっているソフトなんです。
岩田
オレはこれをコンプリートするぞ、とか
わたしは素敵な部屋をレイアウトしたい、とか
お客さんが自分の評価軸を決めて
それぞれの楽しみ方ができますからね。
野上
でも、DS版を出してから、
「『どうぶつの森』は通信でつなげないとおもしろくない」って
言われるようになったんです。
岩田
でも、それだけじゃないんですよね。
野上
はい、通信で人と人がつながると
より楽しくなることは間違いありません。
でも、誰もがそのように遊べるわけではありませんよね。
だから、1人で遊んでくださってもいいんです。
でも、本当に誰ともつながずにいるのと、
「いつかは人とつながるかもしれない」と思うのとでは、
遊ぶ時のモチベーションは変わってきますよね。
人とつながり合うことで
このゲームのおもしろみはどんどん増していきますし、
インターネットにつながることで
このゲームの魅力は2倍も3倍にもなると思っています。
岩田
魅力を2倍にも3倍にもするための大きな軸が
先ほど野上さんが話そうとした
「WiiConnect24を活かす」ことなんですね。
野上
そうです。
その「WiiConnect24を活かす」ことを含めて
今回は4つの新しい軸を考えました。