岩田
検索エンジンを使っておられる人はすごく増えましたけど、
検索エンジンが本来持っているポテンシャルを100としたら、
実際に利用している人たちの多くは、
そのうちの3とか5くらいしか
使っておられないんじゃないかとわたしは感じているんです。
韓
おっしゃる通りです。
岩田
わたしも、そんなに使いこなしているとは言えないので、
わたしが申し上げることではないのかも知れませんが、
検索エンジンというのは、
実はこんなこともできて、すごく面白いんだけども、
うまく使われていないので世の中にもっと広まればいいのに、と
韓さんが日頃から感じられていることはありませんか?
韓
はい、あります。
そのひとつは「ワンダーホイール」(※6)という機能です。
これは、検索結果ページの上部に表示される
「検索ツールを表示させる」をクリックして
サブウインドウを開くと使えるようになる機能です。
これで、たとえば「任天堂」を検索すると、
「任天堂」が中心にあって、その周りに「任天堂 採用」など
8個までのキーワードが表示されて、
ユーザーがどんな関連キーワードを検索しているかがわかります。
そこで気になる言葉をクリックすると
その周りにまた8個ほどのキーワードが表示されて・・・。
※6
「ワンダーホイール」=最初に入力した検索キーワードに関連する8個以内のキーワードを放射線状に表示させる機能のこと。2009年5月からサービス開始。「ワンダーホイール」について、詳しくはこちら。
岩田
連想ゲームのように、
どんどん新しいキーワードが展開されるようになっているんですね。
韓
はい。まるで生き物のように表示されていきますので、
ちょっとしたエンターテインメントの要素もあります。
ただ、われわれがプロモーションをしないということもあって、
世の中ではあまり知られていないのが実情なんです。
それから、「タイムライン」(※7)もぜひ試していただきたい機能です。
ここで「任天堂」を検索すると、
年代別に起きたことを調べることもできます。
※7
「タイムライン」=検索結果を時系列で表示することで、年表形式で閲覧することが可能。2009年10月からサービス開始。「タイムライン」について、詳しくはこちら。
岩田
なるほど。
韓
それに最近リリースしたなかで
使える機能のひとつが「リアルタイム検索」(※8)です。
これは期間指定で「最新」を選ぶと
たとえばTwitter(※9)やブログ、最新ニュースなどを
ほぼリアルタイムで表示します。
※8
「リアルタイム検索」=国内では2010年2月からはじまった検索サービス。「リアルタイム」だけでなく「24時間以内」「1年以内」など、期間を区切って検索することも可能。「リアルタイム検索」について、詳しくはこちら。
※9
Twitter=140文字以内の短い「つぶやき(ツイート)」を投稿して、情報を共有しあうインターネットサービス。アメリカのTwitter社が運営。
岩田
その機能はわたしも試してみましたけど、
まるで魔法のようですね。
ほんの数秒前につぶやかれたものが
検索エンジンにひっかかって表示されていくわけですから。
韓
まるで生きているような検索結果を
お楽しみいただけると思います。
こういった機能を使うときは、
サブウインドウを開く必要があるのですが、
検索窓だけでも、いろんな検索ができます。
たとえば「京都 天気」と入れると、
その日の天気がパッと出てきたりとか。
岩田
今日の天気をパッと調べられたり、
数字を打ち込めば計算ができる電卓機能もありますし、
そういうことをたまに人に教えたりすると、
「ええーっ、こんなことができるの?」と
けっこう驚かれたりするんですよね。
韓
そうですね。
「京都から東京」と入れるだけでも
乗り換え案内を調べられたりできますし。
で、最近はじめたサービスなので、
岩田さんはまだご存じないかも知れませんけど、
宅急便の伝票番号を入力すると、
配送状況がパッと出てくるんです。
岩田
ええーっ、そうなんですか?
韓
このサービスはいまのところヤマト運輸さんだけなんですけど、
「ヤマト」に続けて、伝票番号を入力するだけで
配送状況がわかるようになっているんですね。
岩田
そのへんがGoogleさんの面白いところですね。
お客さんがお持ちの自分のコンピュータのなかに
検索エンジンが入っているわけではなく、
検索エンジンはインターネットの側、
いわゆる「あちら側」にあるので、
お客さんが自分のコンピュータのプログラムを更新していなくても
いつの間にか新しい機能が追加されていたりするんですね。
韓
われわれのミッションでいちばん重要なポイントは、
ユーザーが欲しがっていることを
最速の時間で提示することなんです。
ところが、検索窓を使ってそんなことができるということが
実はあまり知られていないのが、ちょっと残念だったりします。
岩田
気づいた人は便利に使っているけれども、
気づかない人は気づかないままになっているんですね。
韓
そうです。
ですから、「小さじ1をccで」と打ち込むだけで
簡単に容量が調べられたりもしますけど、
平均的に見たときに、まだそれほど使われていないんです。
岩田
実際に、ちょっと高度な検索を使う方は、
アクセスされる世界中のものすごい数の人たちの
どのくらいの割合なんですか?
韓
正確な数字までは把握していないんですけど、
少ないと思います。
理由はいくつかありまして、
もともと知らなくてできないという人が大多数なんですけども、
知っていても、けっこうみんな基本的な検索しかされないんです。
なぜかと言うと、まず基本的な検索をやってから
調べたいことをどんどん狭めていくやり方が一般的なんです。
岩田
なるほど。ですから、わたしとしては今回のソフトで
「検索エンジンを使えばこんなこともできるんだ」ということを、
お客さんにお伝えできたらいいと思ってるんです。
韓
おっしゃる通りですね。
このゲームを遊んだお客さんであれば、
AND検索やフレーズ検索などを
楽しみながらご理解いただけると思いますし、
世の中のトレンドがわかるGoogleトレンド(※10)に関する認識も
おそらくわかるようになると思います。
※10
Googleトレンド=特定のキーワードの検索数が、時間経過とともに、どのように変化しているかをグラフで表示するサービス。また、国別・地域別でも検索数の割合を見ることもできる。国内では2008年にサービス開始。「Googleトレンド」について、詳しくはこちら。
岩田
ですから、たとえば「この言葉は何月に検索が多い」とか、
「どの地方でこの言葉が検索されることが多い」とか、
そういったことまで調べられることがわかったら、
そこから自分の興味がさらに湧いてきて、
いろんなことに拡がるキッカケになると思っているんです。
韓
その意味で、Wiiはとても幅広いお客さんの支持を得ていて、
われわれとしてもそうありたいと考えているのですが、
そのネックになっているもののひとつがキーボードなんです。
岩田
キーボードアレルギーの方はかなり減ったとはいえ、
まだまだなじみのない方が多かったりしますよね。
韓
そうなんです。
できるだけ最大限にユーザーに使ってもらえるようにすることが
われわれのいちばんのチャレンジだと考えていまして、
そこではじめたのが「音声検索」(※11)です。
岩田
AndroidやiPhone(※12)といった
スマートフォンで使えるアプリですね。
※11
「音声検索」=電話に向かって話すだけで、Google検索ができるサービス。2009年12月にサービス開始。
※12
AndroidやiPhone=AndroidはGoogleが開発した携帯端末用のOS。日本では数社が対応機種を発売している。iPhoneはアップル社が開発し、国内ではソフトバンクが販売している多機能携帯電話。
韓
はい。これを使えば、しゃべるだけで検索結果が返ってきます。
これは個人的な感覚ですけども、
とくに漢字を使う日本などのアジア圏では、
入力方法に関するレボリューションになると思っているんですね。
岩田
もともとタイプライター文化の国に比べて、
漢字文化圏のわたしたちは明らかに不利なんですよね。
韓
漢字に変換するのにも時間がかかりますし。
そのように、Googleはいろんな技術を持っていますので、
今回の『安藤ケンサク』だけでなく、
今後もいろんなかたちで
任天堂さんと協力していけるといいなと思っています。
岩田
こういうご縁もありますので、
何か面白いことができるといいですよね。
韓
はい、ぜひお願いいたします。
岩田
今日はありがとうございました。
韓
こちらこそありがとうございました。