3. 各家庭を回って配りたい

岩田

今回の『Wii Fit Plus』で
宮本さんがいちばんお客さんに伝えたいのは
どんなことですか?

宮本

やっぱりもっと気楽に楽しんでほしいと。
電源さえ入れてもらえれば、
もっと気楽に楽しめますから、ということです。
とりあえず電源を入れるところが
すごく高いハードルなんですけども、
電源を入れたあとの満足度は格段に上がってるので
とにかく電源を入れてほしいと思います。
『1』のときは、なんか面倒だなと感じて
途中でやめたお客さんも少なくないと思うんですけど、
一度はじめると、どんなふうに日々続くのかが、
きっと自分のカラダでわかっていただけると思います。

岩田

前作で「ここがちょっと面倒くさいな」と
お客さんに感じられたようなところは
がんばって全部取りました、ということなんですね。

宮本

はい、
いろいろバージョンアップしましたので、ぜひとも・・・。

岩田

だから電源を入れてもらえれば、
やるべきことが次々と現れて、
気がついたら何十分か運動するようなことに。

宮本

そうですね。
おすすめメニューがいちばんカンタンですから、
おすすめで30分やりたいとか、
今日は40分やりたいと思ったら、
ザーッとカンタンなトレーニングが出てきますから。
で、『1』のトレーニングでは、
1回ずつどんなトレーニングか説明してくれるし、
1回終わったらそのたびに評価してくれてたんですけど、
実際にジムのトレーニングというのは、
スムーズにずーっとつながっていくんです。
「軽く水をとってください」と言いながら、
どんどんどんどん次のメニューに進んでいくと。
今回の『Wii Fit Plus』では
そういう流れで、30分なり40分なりが
動くようになっていますので、
実際にレッスンに入ったような感覚で
使っていただけると思っています。

岩田

ちなみに、前作では48種類あった
トレーニングが、今回新たに追加されてますよね。

宮本

21種類のトレーニングが追加されてます・・・
でもここは、あまり強く言いたくはないんです。
というのも、そこの部分を強調すると
いわゆる続編だと勘違いする方もいらっしゃると思いますしね。
そもそも続編というのは、
基本的に前作に満足した人に
続きのデータを買っていただくものなんですね。

岩田

そうですね。

宮本

で、今回の『Wii Fit Plus』は
そういうふうには受け取って欲しくなかったんです。
最初に言ったように
「全員がこれにバージョンアップしてほしい」と。
そうすると「あなたのバランスWiiボードはもっといいものになる」と。

岩田

「あなたのバランスWiiボードが最新になります」と。

宮本

そうです。
「種目が増えました」とか言うと、
前のほうに満足していない人は、
種目が増えようが興味がないわけなので。
だから、興味のなくなった人でも
もう一度興味を持ってもらえるようになることが、
いちばん大事な要素と思ってつくりました。
ただ、実際のところは種目が増えて、
すごく楽しくなってるんですけどね。

岩田

種目を増やして、楽しくなるのは当然なんですけど、
いくら「トレーニング種目が増えました」と言っても、
いちばん届けたい人には、響かないだろうと。

宮本

はい。
だから、前作をつくって売った人間としては、
本当はお客さんのお家を1軒ずつ回って、
「すみません、これに入れ替えてください!」と
やりたいところなんですけど。

岩田

350万軒以上ですからね。

宮本

日本だけでもそうですから、世界も含めると
とてもじゃないけど回れないですよね・・・。
ただ、そういう意図は伝えたいんです。
それになんだかんだ言ってますけど、
続編としてみても楽しいんです。
→重心移動で測るゴルフのスイング診断や、
→羽ばたきながら空を飛ぶとか
新しい遊びも充実しているんですけど・・・。
 
そういうふうにPRをしてないだけで、
使ってしまうと『2』としても楽しいですし。
しかも珍しい商品になっていて、
『1』のトレーニングも全部入ってるんです。
『2』のなかに『1』を全部入るようなことは
普通はしないんですけど、
それだとやっぱり不便ですので。

岩田

だってバージョンアップですから(笑)。

宮本

はい(笑)。

岩田

でも話を訊けば訊くほど
これは、OSやビジネスソフトの
バージョンアップとおんなじだなあと感じました。
ですから、正直なところ、
「任天堂は、そんな商品を扱ったことないけど、どうしよう?」と
当初は、ちょっと悩んだくらいでした。

宮本

そうでした(笑)。

岩田

バージョンアップなので、
いま世の中の店頭に置かれている
『Wii Fit』はなくなって
全部が『Wii Fit Plus』になると。
そして、既に『Wii Fit』をお楽しみいただいている
みなさんを対象としたソフト単体については、
可能な限り、お買い求めいただきやすい価格にしようということで
販売の方向性が決まっていったんですね。

宮本

僕としては、このソフトを
たくさんの人に続けてほしいんです。
続ければ絶対にいいことはわかってますから。

岩田

しかも、前作をやっていたお客さんは
『Wii Fit Plus』を触れば
その価値をご理解いただけるということなんですね。
「肩こり・腰痛予防はどう」
「ストレス解消はどう」「冷え症はどう」
「お腹を引き締めるにはどう」
「二の腕を引き締めるにはどう」
というのを言われて、それをやっていれば、
効果が出てくると。
しかも、今日は30分時間があるから
30分運動をやりたいと思えば、
次から次へとトレーニングを出してくれてというのが・・・。

宮本

まるでフィットネスクラブに通ってるように
気軽に楽しめると思います。

岩田

ところで、宮本さんは
『Wiiスポーツ リゾート』(※6)
今回の『Wii Fit Plus』、
それに『New スーパーマリオブラザーズ Wii』(※7)の3本を
同時に進めていたんですよね。

※6

『Wiiスポーツ リゾート』= 南の島「ウーフーアイランド」を舞台に、12のレジャースポーツを楽しむことができる。Wii用ソフトとして、2009年6月発売。ちなみに、『Wii Fit Plus』のジョギングやサイクリング、パタパタ飛行などの舞台も、同じく「ウーフーアイランド」。

※7

『New スーパーマリオブラザーズ Wii』=4人同時プレイを楽しむことができる『スーパーマリオブラザーズ』シリーズの最新作。Wii用ソフトとして今冬発売予定。

宮本

その3本のなかでは
いちばん手がかからなかったのが
『Wii Fit Plus』なんですよ。

岩田

それはやっぱり、
何をどうすればよくなるのか、
最初からハッキリ見えてたからなんでしょうね。

宮本

そうなんです。
やりたいことが最初から見えていたと。
だから、おかげさまで僕は
『NewスーパーマリオブラザーズWii』に
パワーを注ぐことができています。

岩田

はい(笑)。
それにしても、
わたしは長い間ずーっと宮本さんの近くにいて
ずいぶん話をしてきましたけど、
まだまだ知らないことがあるなあと思いました。

宮本

岩田

いつも巻き尺を持ち歩いてるという話(笑)。

宮本

ああ、僕、量るの好きです。

岩田

(笑)。
量りフェチの宮本さんが
「毎日体重を量って、それをグラフにつけるのが面白い」
ということで『Wii Fit』を生み、
それを毎日続けられるようにということで
『Wii Fit Plus』をつくったということなんですね。

宮本

岩田さんも巻き尺を持ち歩いたらどうですか?

岩田

わたしは機械が勝手に記録してくれないと、
というタイプなので、
量りフェチの資格はなさそうです(笑)。

宮本

でも、本当に楽しいんですよ(笑)。