岩田
『Wii Fit』は、健康をテーマにしたソフトということもあって、
女性の方々にも、大変興味を持っていただいているようです。
最初の女性スタッフとして、チームに参加した柴田さんは、
仕事をやっていて、どんなことが印象に残っていますか?
柴田
ある時期、全体的に透明感のあるクールな感じになって、
温かさがなくなってきたことがありました。
『Wii Fit』は、リビングに置かれるものですし、
家族みんなでそれを楽しむということになると、
もうちょっと温みのあるものがほしいなって。
そこで、「カレンダーの色を変えてください」とか、
「スタンプの種類を増やしてください」とか、
尾山さんをつついたりしてました。
岩田
「温かみを足す係」だったんですね(笑)。
岩田
ゲームらしいものをつくるのは
任天堂は得意ですからね(笑)。
柴田
そうですね。それで絵柄もどんどん決まっていったんですけど、
どちらかというと男の子寄りになっていたというか、
女性がちょっと入りづらいと感じていました。
そんなとき、ディレクターさんから
「保坂さんと考えてみたら」
という話がポロリと出たので、保坂さんと組んで、
「フープダンス」を担当することになりました。
「こうするとカワイイよね」なんてやりとりをしながら(笑)。
岩田
「フープダンス」は2人が中心になって進めたんですね。
柴田・保坂
「キラキラした感じを出そうよ!」って(笑)。
一同
(笑)
岩田
「キラキラした感じを出そうよ」って、
男だとなかなか言えない表現ですね(笑)。
保坂
フープを回したら、光が降るようにすると、
キラキラしてカワイイよねって。
柴田
ティンカーベル(※14)が飛んだときに出る、
妖精の粉みたいなものを出したいよねって。
※14
ティンカーベル=「ピーターパン」に登場する妖精のこと。
岩田
そのキラキラ感は、音で補われている印象がありますね。
先ほど、女性スタッフの要求が高かったと
宮川さんが言ってましたけど、その話になるんですね(笑)。
柴田
そうです(笑)。「♪シャンシャン」がほしいですって
宮川さんに、しつこく言い続けてたんです。
宮川
あったほうが良いのはわかっていましたので
音をつくってみたんですけど、
彼女たちはなかなか納得してくれなかったんです。
一同
(笑)
保坂
「♪シャンシャン」の音が消えないように、
フープの回転音をおさえつつ、
でも回転音は目立たせてくださいって、
宮川さんにお願いしたんです。
宮川
もうめちゃくちゃな注文でしょう(笑)。
「フープダンス」では、いろんな音が鳴っていて、
先ほども言いましたけど、ゲームが進行すると、
にぎやかなサウンドになっていくようになっています。
音を入れる隙間がどんどんなくなっていく中で、
「♪シャンシャン」も鳴らしてという注文もきて、
「それはムリです」とハッキリ断ったんですけど、
彼女たちは聞き入れてくれませんでした。
岩田
それでなんとか隙間を見つけて
「♪シャンシャン」をねじ込んだんですね(笑)。
宮川
ホントは「♪シャンシャン」の音よりも、
フープが回転する音のほうが重要だろうと思っていたんです。
でも、スタッフの間では、「♪シャンシャン」が印象に残っていたようで、
それをはずしたら、必ずブーイングが出るだろうなって。
柴田
そういった意味では、やらせていただいてよかったですね。
でも、カワイイ部分を強調するあまり、
男の人に引かれてしまっては絶対にダメだと思いましたので、
コミカルな方向にもっていくようにしたりして、
そのへんの調整はしっかりとしました。
岩田
任天堂カンファレンスでは、宮本さんが、
「フープダンス」をデモで使いましたよね。
森末慎司さん、中井美穂さん、相沢沙世さんらが実際にプレイして、
楽しそうにやってるのを見ると、独特の感動があったのではないですか?
柴田
すごくうれしかったですね。
初仕事だったのに、あんなに大きな舞台で披露されて、
しかも、有名人の方々にプレイしていただいて・・・。
岩田
腰を回す動きは、人によってこんなに個性があるのかとも思いますし、
だからこそ、人がやってるのを見るのがおもしろいんですね。
保坂
ところでわたし・・・、
実は本物のフープを回すことができなかったんです。
でも「フープダンス」を調整するためには
何千回と回す必要があったんですね。
で、毎日のように調整を繰り返していたら、
本物のフープも回せるようになったんです!
全員
ほ〜〜っ!
岩田
それはいい話ですね(笑)。
わたしは「フープダンス」を初めてやった翌日に、(腰を押さえながら)
「あっ、痛い・・・」という感じが、とてもうれしかったです(笑)。
「フープダンス」以外には、どんなものに関わったのですか?
柴田
岩田
それは大いにありえます。子どもさんが親御さんに対して、
『マリオギャラクシー』や『スマブラX』をねだる姿は
大いに想像できるんですけど、
『Wii Fit』をねだる姿は想像できないですよね。
でも、もし『Wii Fit』が家にあったら、
親御さんが子どもさんと一緒に遊んだことがきっかけになって、
いつの間にか子どもさんが友達を連れてきて、
一緒に楽しんでる姿が想像できるんですよね。
柴田
わたしにとってはそういうことがすごく新鮮でした。
その導入部分になるゲームがひとつあったらいいなと思ったときに、
「バランスMii」を担当してほしいと言われたので、
お母さんがリビングで変なポーズをしていて、
「お母さん、何やってるの?」「あなたもやってみない?」
という光景をイメージしながらつくっていました。
保坂
わたしは、
「フープダンス」や「踏み台リズム」のほか、
「バランススキー」や「バランススノボー」の
旗の配置の仕事もしていました。
当然、実際に自分で滑って調整をしなければいけないので、
日に100本くらい滑るような感じで、
仕事が終わる時間には「もうへとへとー!」みたいな(笑)。
一同
(笑)
岩田
毎日、体育会系の特訓を受けるような感じですね(笑)。
これはいままでの開発とはまったく違いますよね。
保坂
隣では「筋トレ」を調整していたんですけど、
床に寝っ転がって、はぁはぁ言いながらやっていて・・・。
岩田
だから開発現場がちょっと汗くさくなったんですね(笑)。
保坂
たしかに、ちょっと・・・くさかったですね(笑)。