岩田
他社さんの製品、
例えばスマートフォンやタブレット型コンピューターに
つなげるにはどうしたらいいんですか?
福元
もちろん、Bluetoothに対応した商品であることが前提で、
任天堂としては動作保証はしていないのですが、
キーボードの「Fn(ファンクション)キー」を押しながら
スイッチを入れて、スマートフォンなどのほうで認識させると、
すぐにつながるようになります。
岩田
つまり「ペアリング」をするんですね。
福元
はい。他社さんの製品につなぐ場合は
ペアリングする必要があります。
もちろん、お客様がすぐに遊べるように
『ポケモンタイピングDS』のソフトとキーボードは
出荷する前にペアリングしてあります。
桑原
実際に、他社さんのスマートフォンとつないでみると
キーボードで打った文字がすらすらとそこに表示されて、
「ここまでかんたんに長文が打てるようになるなんて!」と、
メチャクチャ便利に感じます(笑)。
岩田
なるほど(笑)。
それでは最後に、お客さんに対して
「ここに注目していただきたい」というポイントがあれば、
ひとことずつお願いします。
太田
スタンドのときにもお話ししましたが、
キーボードについても、「より安全に」ということは
とても強く意識してつくりました。
踏んづけたり、水をかけるような試験は
もちろん何度も繰り返し行いましたし、
たとえば誤って床に落下させても、
キートップははずれないようになっています。
それに、小さなお子さんの小さな手でも、
とても押しやすいキーの間隔になっていますので、
「キーボードって触っていると面白いな」と
たくさんのお子さんに感じていただけるとすごくうれしいです。
福元
わたしは今回、回路設計という
目に見えない部分を担当したのですが、
この開発に関わっていて気づいたのが、
キーボードってすごくキーが多いなあと。
たぶん、任天堂の製品のなかでも・・・。
岩田
スイッチがいちばん多いでしょうね(笑)。
福元
そんなにいっぱいキーが付いていますので、
いくつかのキーを同時に押しても誤作動しないよう、
わたし自身、「そこまでやるか!?」とビックリするくらい
繰り返し試験を行いました。
しかも、キーの押しやすさに関しては、
強すぎず、軽すぎずという
微妙な触り心地までこだわって調整しましたので、
ぜひ、実際に触って確かめていただきたいと思います。
桑原
わたしがまず、お客さんにお伝えしたいのは、
これでタッチタイピングを習得していただきたいということです。
それも、小学校低学年のうちから
どんどん打てるようになっていただけるとうれしいですね。
それに今回、このキーボードは
『ポケモンタイピングDS』の周辺機器として
世の中に出ていくのですが、このソフトだけにとどまらず、
このキーボード自体の可能性にも目を向けてほしいと願っています。
岩田
桑原さんが会議の席にキーボードを持ってきているのは、
議事録を打てるから、という理由だけでなくて、
実は社内の開発者にアピールするためなんでしょう?
桑原
あ・・・はい、実はそうなんです(笑)。
「携帯ゲーム機とキーボードは合わないんじゃないの?」
という先入観が世間一般にはあるように思うんです。
でも、こうやってキーボードがワイヤレスでDSとつながり、
キーを叩くだけで、DSに文字が入力されるのは
とても不思議で面白いんです。
ですから、お客さんからも
「キーボードを使って、こんなことをしてほしい」
という要望を寄せていただけるとありがたいですね。
岩田
そもそも、キーボードのアルファベットの配列は、
左上からQ、W、E、R、T、Yと並んでいるので
「QWERTY(クワーティ)配列」と呼ばれてますけど、
これは昔の手動式タイプライターが、
レバー状の活字をポーンと押し出してタイプする構造でしたので、
たくさんのレバーが絡まないようにするために
あえて速く打てないようにつくられた配列だと言われているんです。
にも関わらず、一度定着してしまうと
スタンダードになって、ずっと生き残りますので、
タイプするのに決して効率がいいわけではない配列が、
いまになっても脈々と使われ続けているんですよね。
速く打てないようにした配列で、
世界中の人が今でもタイピングをしているのですから
不思議なことですよね。
今回の商品は一般に市販されている
Bluetoothのキーボードと同じくらいの値段ですし、
このゲームを遊んでいるうちに、
お子さんはもちろん、タッチタイピングに
興味のあるような大人の方も、
「いつの間にかタッチタイピングができるようになりました」
と言ってもらえるお買い得な商品になったと思います。
ちなみに(株)ポケモンの石原さんからメールをいただいて、
「僕はちゃんと打っているつもりだったんだけど、
小指の使い方がよくなかったというのが、これでよくわかりました」
というのが、すごく印象的だったんです。
やっぱり正しい指の使い方を覚えると、
タイピングのスピードは明らかに速くなるんですね。
これからの社会で、タッチタイピングができることは、
けっこう価値のあるスキルだと思いますし。
なので、このソフトを通じて、
「日本のある世代の人たちのタイピング能力は
明らかに、あのソフトが変えたよね」と、
後世に言われないかな、というのが、
わたしの密かな野望です(笑)。
福元
実際、小さなお子さんに集まってもらって
このソフトのモニターをとったんですけど、
30分くらいで基本的な打ち方は覚えるようになってました。
岩田
え?30分でですか?
福元
はい。最初は人差し指だけで打っていたお子さんも、
しばらくしたら何本かの指を使えるようになっていて、
なかには小指を使ってるお子さんもいたんです。
それも幼稚園の年長さんとか、
小学1年生くらいのお子さんだったんです。
岩田
今回はポケモンをつかまえるという動機がありますから、
習得するのがきっと早いんでしょうね。
福元
そうですね、ほんとうに驚きました。
岩田
今回のソフトは、タイピング練習ソフトというだけでなく、
ゲームとして、十分楽しめるようにつくっているというのが、
この商品のもうひとつのポイントですから、
次回はその部分に関して、ソフトの開発に関わった石原さんや
ジニアス・ソノリティさん(※5)から
しっかりお話をお訊きしたいと思います。
今日はみなさん、お疲れさまでした。
一同
ありがとうございました。
※5
ジニアス・ソノリティ=『ポケモンコロシアム』(GC)や『ポケモントローゼ』(DS)、『ポケモンバトルレボリューション』(Wii)などを開発してきた、ソフト会社。2002年設立。