多様性、公平性、インクルージョン
任天堂では、年齢、性別、国籍のほか、さまざまな社会的背景に関わらず社員が活躍しており、誰もが楽しめる娯楽づくりに取り組んでいます。
多様性、公平性、インクルージョンに関する考え方
任天堂は、人権を尊重し、人種、民族、国籍、思想、宗教、信条、出身、社会的身分、社会的地位、職業、性別、年齢、障がいの有無、性的指向、性自認、婚姻状況等に関係なく人材採用を行っています。お客様の趣味・嗜好の多様化が進む娯楽の世界にあって、多様な人材の活躍は、会社の総合力を高めるために欠かすことができません。すべての社員がそれぞれの能力を発揮し、お互いに尊重し合える職場を目指しています。
また、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」などの国際規範や国際基準を支持し、それらをもとに「任天堂人権方針」を制定しています。この方針は、社外の専門家からの助言を得たのちに、取締役会決議を経て制定されています。この方針は各国のコンプライアンス・マニュアルや、行動規範にも記載し、社員へ周知しています。任天堂(日本)では新入社員に対する研修にて内容を紹介しています。海外子会社においてもそれぞれ研修を行っており、例えば、米国任天堂では社員が毎年行動規範に関するトレーニングを受けています。また、サプライチェーンや取引先とやり取りをする社員に向けて人権に関する教育を継続的に行っています。欧州任天堂は、すべての新入社員に対して、人権の尊重、英国現代奴隷法※1 に関する法令遵守、差別の禁止や平等な待遇を項目として含んだ行動規範に関しての研修を行っています。これらの内容について復習する機会として、すべての欧州任天堂社員に向けた研修も定期的に行っています。任天堂オーストラリアでは、調達活動に関わるすべての社員に対して豪州現代奴隷法に関する研修を継続的に行っています。
任天堂人権方針
※1 現代奴隷法
人身売買、強制労働、性的搾取などの「現代の奴隷」に企業が加担することを抑制するために(英国をはじめヨーロッパ各国および豪州などで)施行されている法律。
社員の声 米国任天堂 シニアバイスプレジデント、人事本部長
多様性、公平性、インクルージョン
「企業の社会的責任」と同様に、多様性、公平性、インクルージョン(以上3つを総称してDEI)は個人または一つのチームだけで成し遂げられるものではありません。2015年に社員が一丸となってさまざまなEmployee Resource Group(ERG)というグループを結成したことで、米国任天堂におけるDEIの取り組みが大きく前進することとなりました。時を同じくして、正式に「多様性とインクルージョン」の戦略を組織化し、それを行動に移しました。主に人材に焦点をあて、ERG発展のための支援を続けました。
2020年には「理解を深めるためのフォーラム」という新しいプログラムを立ち上げました。このフォーラムは、お互いの話を聞き、共に学ぶことで、信頼を築くための場となりました。ある会話が別の会話につながり、今ではこのDEIフォーラムは、新しい観点を持ち寄った意見交換を通して、継続的に学びが得られる場へと成長しました。
2023年から、米国における奴隷制度の廃止を記念する連邦祝日「ジューンティーンス」(6月19日)を会社の新たな祝日としました。
米国任天堂は、社員同士はもちろん、お客様や地域社会とのよい関係を築くために、誰も排除されることのない居心地のよい環境づくりを進め、今後も一体感を重視した取り組みを続けます。
社内浸透
任天堂は、多様性を実現し、お互いが尊重し合う職場環境をつくるために、各国での事情に合わせて研修や社員への情報発信を行っています。
例えば任天堂(日本)では、社内ポータルサイトに多様な性のあり方について解説する記事を掲載したり、新入社員研修で多様性について考える機会を設けたりしています。
海外子会社でも、多様性に関する認識を高めるための取り組みを行っています。
米国任天堂 多様性、公平性、インクルージョンに関する研修を実施
米国任天堂は、さまざまな研修機会を継続的にオンラインおよび対面形式で社員に提供しています。例えば、社員が自由に見られるオンライン研修プラットフォームでは、ソフトウェアや独創的なものづくりのほか、さまざまなビジネス領域における業界の専門家が講師を務めるビデオ講義を多数提供しています。
また、DEIに関するフォーラムを四半期ごとに開催しています。このフォーラムは、難しい話題についての新たな知見や、ユニークな視点、米国任天堂の多様なコミュニティの経験についてより深く認識し理解するための機会を提供することで、DEIを推進するという米国任天堂全体の目標を達成することに貢献しています。最近のDEIフォーラムでは、DEIと米国任天堂における一つ一つの価値基準との関係性に注目し、DEIが米国任天堂にとっていかに重要かを示しました。各フォーラムの開催後は、直近のフォーラムで取り上げたトピックに関する資料や動画を追加で公開し、社員が利用できるようにしています。
2023年から2024年にかけて、米国任天堂の使命や価値観を推進する日々の行動指針「Nintendo of America Practices」を、多様性やインクルージョンの視点から検討し、DEIフォーラムのテーマとの関連付けを図りました。例えば、「Nintendo of America Practices」の一つである「お互いを支え合う」を、「よりよい関係を築く」というテーマのDEIフォーラムと組み合わせて、インクルージョンに配慮しながら日々の行動を改善するための実践的な方法を示しました。それぞれのフォーラムで関連する「Nintendo of America Practices」の項目を取り上げ、社員がDEIと日々のコミュニケーションとのつながりについて理解を深められるようにしました。
米国任天堂は毎年、インターンシップ・プログラムを開催し、キャリアをスタートさせたばかりの人材が、米国任天堂のさまざまな部門や職能分野で夏期インターンシップに参加する機会を提供しています。このプログラムを通じて、米国任天堂におけるさまざまな背景を持つ人材同士の関わりが強化され、米国任天堂の価値観を支えています。
米国任天堂 社員によるグループ活動を通じた多様性のための取り組み
米国任天堂では、社員がすべてのお客様の視点と背景に配慮することにより、その活動において成果を上げることができると信じています。この点で積極的な役割を果たしているのが「Employee Resource Group(ERG)」です。ERGは、共通の背景や経験を持つ社員をつなぐ取り組みを行っており、現在、6つのERGが教育や経験を通じて会社の一体感を高める機会を創出し、毎年新たな方法で社員の結束と相互理解の向上に寄与しています。その一環として、米国任天堂は社内のさまざまなコミュニティについての認識を共有しています。自分とは異なる見方をお互いに学び合うことで、社内の文化には「多様性・公平性・インクルージョン」があって当然であるという環境を作ることができます。それが周囲の人々を笑顔にすることにつながります。
現在、米国任天堂では次の6つのERGが活動しています。
Asian, Asian American and Pacific Islander(API) は、米国任天堂で働くアジア・太平洋諸島系の社員とその支援者をサポートし、その活躍を応援するために、社員が学び合い、多文化的な視野を尊重する機会を生み出しているグループです。2023年度は旧正月と「アジア・太平洋諸島系の人々の文化遺産月間」を祝してチームの意識を喚起しました。また、東南アジアの正月の水かけ祭り・ソンクラーンに関するイベントや学習プログラムを企画しました。
Black at Nintendo Dialogue(B@ND) は、アフリカ系アメリカ人の経験に焦点を合わせた友好の場であり、社員は米国任天堂の内外で働く黒人の多様なコミュニティについて学んだり、支援したり、関与したりすることができます。B@NDは、地域での奉仕活動や社員エンゲージメント、採用活動を通じて、社内外の意識を高め、インクルージョンを促進しています。その一環として前年度に引き続き、2023年度は「黒人歴史月間」やジューンティーンス(奴隷解放記念日)の記念行事を通じて、共同体意識、文化、そしてアフリカ系アメリカ料理が料理の世界に与えた影響に重点を置いた活動を展開しました。
eNable は、障がいのある人をはじめサポートを必要としている人々のコミュニティを支援し代弁する米国任天堂内のグループです。グループのメンバーはボランティア活動に積極的に取り組み、地域レベルのパートナーシップの構築に多くの時間を費やしています。2023年度は、知的障がいのある人たちのスポーツ参加を支援するスペシャルオリンピックス・ワシントンなどの地域のNPOにボランティアとして参加し、スペシャルオリンピックスのアスリートを支援しました。
HOLA は、米国任天堂で働くヒスパニック・ラテン系アメリカ人を対象としたERGです。ERGのメンバーに加わっている社員に代表されるヒスパニック・ラテン系コミュニティを尊重し、その認知度を向上させる機会を見つけて、イベントの実施につなげるといった取り組みを推進することに注力しています。2023年度は「ヒスパニック・ラテン系アメリカ人文化遺産月間」にちなんで、社員向けのカフェでラテンアメリカの食事を提供し、9月の毎週木曜日にはラテン風カーディオダンスのアウトドアクラスを開催するなど、社内の意識醸成に努めました。
Nintendo Women and Allies の目的は、有意義な関係の構築、学びと成長、会社の事業全体に重要な視点をもたらすことを通じて、女性の支援、地位向上、尊重を図ることです。2023年度は「女性史月間」を記念して米国任天堂の女性リーダーによるディスカッションを開催し、リーダーシップと成長に関する女性リーダーの考えを紹介しました。
Rainbow は、米国任天堂におけるインクルージョンを促進し、LGBTQ+コミュニティの結束を強化する活動を展開しています。2023年度は、社内のLGBTQ+当事者と支援者が経験や視点、助言を共有するコーヒータイムを設けました。
任天堂オーストラリア 食の文化的多様性イベント
任天堂オーストラリアには、さまざまな文化的背景を持つ社員がいます。多くの文化で食が中心的な位置を占めるという認識から、社員が交流しながら民族や文化の多様性について学び、認識できるよう2023年8月に食の文化的多様性に関するランチイベントを開催しました。それぞれの文化を代表する料理を持ち寄り、15カ国30種類の料理を楽しみました。
さまざまな文化の料理を試食する任天堂オーストラリアの社員
社員のためのインクルーシブな職場環境整備
任天堂は、女性社員が十分に能力発揮できる環境を整えていく重要性を認識しているほか、どのような個性を持つ社員であっても、すべての社員一人ひとりがいきいきと気持ちよく働き、能力を発揮できる職場づくりを行っています。
任天堂(日本) インクルーシブな職場環境づくりに関する取り組み
任天堂(日本)は、すべての社員一人ひとりがいきいきと気持ちよく働ける職場環境をつくりたいと考えています。この考え方に基づき、「パートナーシップ制度」を導入しています。この制度は、婚姻関係に相当する同性パートナーがいる社員について、社内制度において婚姻と等しく扱うものです。事実婚関係にある異性カップルについても、社内制度において、法律上の婚姻と同等に扱っています。また、社内のハラスメントに関する規程において、性的指向・性自認に関する差別的な発言や、いわゆる「アウティング」※2 行為を明確に禁止しています。そして、研修を通じて「悪意のない言動であっても当事者に大きな精神的苦痛を与える可能性がある」ことについて注意喚起し、気持ちよく働ける職場環境づくりへの理解と協力をすべての社員に対して呼びかけています。
2024年4月には、性的指向や性自認の多様性に関して全社員向けと管理職向けのeラーニングをそれぞれ実施しました。
今後も、社内制度の整備や研修の実施などを通じて、社員一人ひとりが最大限に能力を発揮できる環境づくりを続けていきます。
※2 アウティング
他人の性的指向や性自認を本人の了承なく第三者に公表すること。
任天堂(日本) 高年齢者の安定雇用
任天堂(日本)は、社員が家庭や健康などの事情にあわせて長く働くことができ、それぞれの価値観に合わせた定年後の人生設計をサポートできるように、2022年3月から働き方に関する新しい制度を導入しました。50歳以上の正社員総合職は、週休3日制や、一日の勤務時間を短縮できる制度を活用することで、個人の希望に合わせた柔軟な働き方を選択できるようになりました。それに加えて、兼業・副業の許可範囲を拡大し、趣味などの社外活動に対して会社が支援を行うことで、将来の選択肢を増やす機会を持てるようにしています。また、節目となる年代ごとに将来のライフプランをともに考えたり、人事制度への理解を深めたりするための世代別研修を実施しています。
働きがいのある職場づくり
任天堂は、社員が働きがいを感じながら前向きに仕事に取り組めるように、各種制度を整えているほか、社内でのコミュニケーションを通じた健全な職場環境づくりに努めています。
ワークライフバランス
任天堂では、社員が仕事と個人の生活とのバランスをうまく取ることができるように、制度の充実や利用促進などに努め、社員が最大限に能力を発揮できる環境を提供する努力をしています。
任天堂(日本)は、子育て支援制度の拡充や育児休業取得の促進に積極的に取り組んでいます。海外子会社も、働きやすい職場環境のため、制度の充実に努めています。海外子会社の取り組みについては、「任天堂のCSRに関するQ&A:社員との関わりについて 」もご覧ください。
任天堂(日本) 育児休業関連の施策
2020年4月に施行された改正女性活躍推進法に基づき、女性の育児休業取得率実質100%を継続するとともに、2021年度からの5年間の累計において、男性の育児休業取得率を50%以上に上昇させる目標を設定しています。2019年6月からは施策の一つとして、出生の届け出があった社員に対して、個別に育児休業等に関する制度の周知を行い、育児休業の取得促進に努めています。また、2022年10月に施行された改正育児・介護休業法に従い、出生時育児休業(産後パパ育休)を創設しました。
任天堂(日本) 仕事と生活の調和を支援するための施策
任天堂(日本)では、10:00~15:00をコアタイムとしたうえで日々の出退勤時間を各自でコントロールできる制度を導入しています。この制度の目的は、社員のワークライフバランスを促し、業務効率や生産性を向上させ、任天堂を取り巻く環境の変化に対応することです。社員からはこの制度について、「海外との時差を考慮して出勤時間を調整するなど、これまでより柔軟な働き方ができるようになった」、「育児や介護を行う上で、送迎の時間調整がしやすくなった」といった声が上がっています。また、勤務終了後、翌日の勤務開始時間までに少なくとも9時間以上のインターバルを確保しなければならないとする「勤務間インターバル制度」も社内ルールとして導入しています。
仕事と生活の調和を支援するための制度の一例(任天堂(日本))
出生時の短時間勤務制度
出生後8週間以内の28日間について、育児に軸足を置きつつ、一定の範囲での就業が可能
育児休業
子どもが満2歳になるまで取得可能
※
正社員(一般職)は満3歳
育児のための短時間勤務
子どもが小学校3年を修了するまでは1日2時間まで勤務時間の短縮が可能
※
正社員(一般職)は小学校6年修了まで
子育て休暇
育児を理由に、子どもが小学校3年を修了するまでは1年間につき、子どもの人数に関係なく5日間まで取得可能
※
正社員(一般職)は小学校6年修了まで
育児特別休職
居住地が国内遠方の配偶者に同行する場合、子どもが小学校6年を修了するまで、3年間を限度として取得可能
海外配偶者同行休職
配偶者の海外勤務等に同行して、5年間を限度として取得可能
再雇用
育児または介護などを理由に退職し、その後再就職を望んだ者について所定の手続き後、再雇用を実施
介護休業
対象者1人につき通算24か月を限度として取得可能
※
正社員(一般職)は36か月
介護休暇
介護を理由に1年間につき、対象家族が一人であれば5日間、2人以上であれば年10日間取得可能(1日・半日・時間単位)
介護・特定疾病を対象とした短時間勤務
介護・特定疾病の事情がある場合、最長36か月、1日2時間までの勤務時間の短縮ができ、時短取得時にはコアタイム外の在宅勤務も可能
介護・特定疾病を対象としたコアタイム免除
介護・特定疾病の事情がある場合、最長36か月、コアタイムを免除し任意の時間に出社勤務可能
リフレッシュ休暇
一定の勤続年数に達した社員に対して特別に休暇を付与
年次有給休暇保存
有給休暇の未使用分のうち一定限度を保存して利用可能
半日有給休暇
付与された有給休暇日数の範囲であれば、利用回数や条件に制限なく半日休暇の取得が可能
上記のほか、法律で定められている制度はすべて備えています。
任天堂(日本) 育児座談会を実施
任天堂(日本)は、子育て支援の一環として毎年、育児中の社員を対象とした「育児座談会」を開催しており、「復職後の生活と仕事」「小学校低学年の育児と仕事」などをテーマに話し合いをしています。育児と仕事の両立を可能とするためには、制度面の整備にとどまらず、同じ立場の社員同士でさまざまな情報を共有し、相談できる場が必要だと考えています。
2023年度の育児座談会には育児休業中の社員も含めて約70名が参加しました。育児経験のある社員からのアドバイスを聞き、座談会を通じて育児の悩みや仕事との両立について語り合いました。
参加者からは例年と同様に好意的な感想が上がりました。今後も継続していくとともに、育児と仕事の両立のために、よりよい環境づくりに努めていきます。
社員エンゲージメント
任天堂は、独創性・柔軟性に富んだ明るくいきいきとした職場づくりを目指しています。会社と社員のコミュニケーションはもちろん、社員同士の関わり合いを活発にする取り組みを実施し、会社と社員、社員同士が相互に理解し信頼し合い、貢献し合える職場づくりに努めています。
任天堂(日本) 社内コミュニケーション
任天堂(日本)では、社内のコミュニケーションを活性化させるための工夫を講じています。
例えば、社長からの情報発信を積極的に行うため、社内広報サイトに月1回程度の頻度で社長のメッセージを掲載しています。
また、年に一度の人事評価のタイミングで会社への提案を行うことができる仕組みを設けており、提案することを通じた当事者意識の醸成、提案力の向上を目指しています。社員の会社に対する提案は社長がすべて目を通しており、会社が行う改善施策の中には、こうした取り組みから得た社員の意見が積極的に取り入れられているものもあります。また、提案内容の傾向や多く見られた提案について社員にフィードバックしています。
ほかにも、社員同士のコミュニケーションを活性化させるために、社内ポータルサイト内に社内向けの自己紹介サイトを設置しています。社員は任意で自分のプロフィールを編集・掲載することができ、お互いに業務経験や趣味などを理解することで、業務上の円滑なコミュニケーションにつながっています。
社員の声 欧州任天堂 人事部長
働きやすい職場づくり
私が欧州任天堂で勤め始めたのは20年以上前のことです。当時、2人の子どもがまだ幼く、子どもが病気になって看病が必要なときなどは会社が柔軟に対応してくれました。現在、人事部のディレクターという役職についている私は、仕事とプライベートのつり合いが取れる職場環境をつくり続けていくことをとても大切にしています。私たちは、個々の社員の力を引き出すインクルーシブな職場文化を持ち続けるよう努めており、機会均等に配慮する雇用主として、性別や民族性、障がいの有無、性的指向などを問わずどんな人をも任天堂ファミリーに歓迎します。すべての人に居場所があるのです。
同様に、社員が持つ才能を育むことも大切にしています。職務を通じて会社に貢献することで人は成長すると信じており、任天堂でキャリアを積むにあたって早い段階から責任のある仕事を任せるよう心掛けています。また、人事部では将来のリーダーを育成するために、管理職に就く社員向けのトレーニングも実施しています。
そして、現在職に就こうとしていて、欧州任天堂でのキャリア展望について自身ではまだ意識をしていない才能ある人材とのコミュニケーションにも注力しています。その一環として、リクルートイベントに参加したり、地元の大学と連携して当社の雇用機会についてのアドバイスを行ったりしています。
人事部は社員に対してさまざまなサービスを提供しており、社員が欧州任天堂で働く中で生じるすべての問い合わせについて、信頼される窓口となることを目指しています。労働時間や給与明細に関する質問に限らず、個人的な質問や心配ごとにも耳を傾けています。
欧州任天堂で働くすべての人にとってよい職場を築き上げ、社員を笑顔にすることを目標にしています。
欧州任天堂 社員主導の取り組み「Nintendo FIT」
「Nintendo FIT」は、健康とパフォーマンスの促進、ストレス軽減、社員の満足度向上を目的とした、欧州任天堂の社員による社員のための取り組みです。インターネットなどの手段を通じて、欧州の全オフィスの社員も可能な限りNintendo FITの活動に参加できるようにしています。
2023年度は、オンラインと対面のヨガセッション、ランニンググループ、欧州任天堂(ドイツ)のフィットネスルームでのサーキットトレーニングといった活動が提供されました。サッカーやバスケットボールなどのスポーツイベントに参加するために、社内ポータルサイトで社員自身が新しいスポーツチームを結成することもできます。
欧州任天堂(ドイツ)の社員は毎年6月に、フランクフルトで開催される5.6キロのレース「J.P. Morgan Corporate Challenge」に参加することができます。このイベントのウォーキング、ジョギング、ランニングの各部門に参加する社員のために、Nintendo FIT運営チームは専用のトレーニングセッションを用意し、イベント後には祝賀会も開催しています。
2023年のJ.P. Morgan Corporate Challengeに集まった 欧州任天堂社員
欧州任天堂 「イベントハブ」を利用した交流と研修
2022年、欧州任天堂(ドイツ)は社内ポータルサイトに「イベントハブ」というセクションを追加し、社員が興味に応じて空き時間に参加できる交流イベントを独自に企画したり、申し込んだりできるようにしました。イベントハブでは、フランクフルトオフィスのスポーツ用グラウンドを予約し、サッカーや卓球、バスケットボールなどの試合を開催できるほか、「社員エリア」に備え置かれたNintendo Switchや自分のゲーム機を使って仲間と協力プレイを楽しんだり、ボードゲームで対戦したり、勉強会や読書会を開催したりすることもできます。イベントハブをきっかけに、編み物クラブやサッカーチーム、週に一度夜に開催されるボードゲームの会など、さまざまな活動が生まれました。
イベントハブでは、社員が他の社員のために研修やワークショップを開催することも可能です。現在または過去の実例としては、護身術の講座や工芸ワークショップ、定期的なランニンググループなどがあります。社員主導の研修に加えて、会社も社員のビジネススキルを高めるために、「ハイブリッド型会議の進め方」、「レジリエンス-自分の資質を発見し強化する方法」といった研修を実施しています。また、欧州任天堂ではさまざまな背景を持つ社員が働いているため、社員には欧州と日本の文化の両方に関する研修を受ける機会を設けて、相互理解とつながりを深めています。社員がさまざまなテーマについて学べるように、イベントハブで受講できる研修は定期的に変更されています。
イベントハブは、欧州任天堂の社員が成長し、ネットワークを広げ、新しい趣味を発見し、仲間と情熱を共有する機会を提供するだけでなく、社員が気軽に集まり、交流を楽しむ場にもなっています。
欧州任天堂 バーチャルコーヒーブレイク
欧州任天堂では、普段の仕事の範囲を超えて社員が交流し、同僚と会う機会をつくるために、人事部がバーチャルコーヒーブレイクを開催しています。希望者は簡単な登録を済ませるだけで参加でき、抽選によって社員3~4人ずつのグループに分かれます。参加者は会話を楽しんだりネットワークづくりをしたりし、お互いのことをより理解することができます。このコーヒーブレイクはドイツ、オランダ、ベルギー、イタリアで好評を博しており、参加者はこれまでに合計1,000杯以上のコーヒーをともに楽しんでいます。
欧州任天堂・任天堂オーストラリア 社員の子どものためのイベント
任天堂の一部の拠点では、社員の子どもたちのためにさまざまなイベントを開催し、保護者が毎日働いている職場を見学する機会を提供しています。
欧州任天堂(ドイツ)の人事部は、2023年6月に「キッズデー」を開催しました。本社オフィスでのイベントに子どもたちとその両親、祖父母の合計約200人が参加し、ガイドが案内するオフィスツアーやゲーム大会、写真撮影を楽しみました。さまざまな遊び場に加え、フェイスペインティング、アート・クラフト体験が用意されたほか、パスタランチがふるまわれ全員が社員食堂に集まって食事を楽しみました。
任天堂オーストラリアでも、子どもたちに楽しみながら将来のキャリアの選択肢を考えるヒントにしてもらうことを目的に、「Bring Your Child to Work Day」というイベントを毎年開催しています。2023年のイベントは、任天堂オーストラリア社長の挨拶、オフィスツアー、Nintendo Switchのゲームプレイといった内容で、40人以上の子どもが参加しました。
こうしたイベントを通じて社員とその子どもたちを笑顔にしながら、子どもたちがキャリアについて考え始めるきっかけづくりができればよいと考えています。
欧州任天堂の「キッズデー」イベントで子どもたちと一緒にゲームを楽しむ社員
オフィスづくり
任天堂は、社員が働きやすいオフィスづくりに努めています。
欧州任天堂(ドイツ) 社員の働きやすさ・機能性・環境への配慮を重視したオフィス
欧州任天堂(ドイツ)の本社は、社員の働きやすさ・機能性・環境配慮を重視して、以下のような設備・機能を有しています。
メディア機器を効率的に利用できるようにデザインされた会議室
DGNB※1 のゴールド認定の要求事項を満たす設計
漁網をリサイクルして作られたカーペットなど、環境面での持続可能性を考慮した備品を使用
サッカー場・卓球台・バレーボールやバスケットボールなどに利用できる多目的競技場
おもちゃや絵本、休憩・授乳に使える椅子などの備品をそろえた、子どもの面倒を見ながら仕事ができる親子用ルーム
Wi-Fiが使用可能な緑地やテラスエリア
フィットネスルーム
ユニセックス・バリアフリートイレ(すべての階に設置)
エネルギー高効率な冷暖房装置
建物外部における日照防止パネルの設置や窓の開閉を可能にする設計
高さを調節できるデスクなど、人間工学に基づく家具類
※1 DGNB
Deutsche Gesellschaft für Nachhaltiges Bauen(ドイツ持続可能建築協会)による建築物評価制度。環境への影響を低減しているかという観点のほか、費用対効果や不動産価値の維持などの経済的側面、室内の快適さや誰にとっても使いやすいデザインなどの社会的および機能的な側面などさまざまな側面から建築物の持続可能性を評価する。
任天堂オーストラリア 職場環境の整備
任天堂オーストラリアのオフィスは、社員の健康や福祉、アクセシビリティや環境面などに配慮し、社員にとってより快適なワークスペースとなるようデザインされています。快適な座席レイアウトを実現したほか、オフィス内に観葉植物を多く設置して雰囲気の向上を目指しています。また、建物内のアクセシビリティも重視し、エレベーターや、障がいのある方に対応した設備を備え付けています。また、オフィスの環境負荷を低減するため、空調の効率性を向上する外窓用のソーラーフィルムや、人がいない時に自動的に消える照明の設置など、オフィスの環境パフォーマンスを向上させています。
人材の育成・開発
任天堂の競争力の源泉は、社員一人ひとりの力です。社員の能力を最大限に引き出し活かすことが、長期的に会社の総合力を高め、任天堂で働く一人ひとりの意欲の向上にもつながると考えています。
任天堂が大切にするもの
任天堂は、娯楽を通じて世界中の人々を笑顔にするために、「社員に求める人材像」として、独創性・柔軟性・誠実さという「任天堂DNA」を大切にし、継承しています。
「任天堂DNA」に基づく任天堂(日本)の人材戦略とそれを支えるための取り組みについて、詳しくはこちら をご覧ください。
また任天堂(日本)では、「任天堂DNA」と一般的な社会人として守るべき「行動規範」に基づき編集した「社員心得」を全社員に配付して行動の指針にしています。
海外子会社においても「Code of Conduct」を作成し、社員への啓発を行っています。
人材の育成・開発のための取り組み
激しい環境の変化に対応し、「娯楽は他と違うからこそ価値がある」という「独創」の精神を大切にし、お客様に良い意味で驚いていただける商品やサービスを提供し続けていくことは、決して容易なことではありません。これからも、いまだかつてない楽しさを実現し続けるために、任天堂は各地域で人材の育成・開発に取り組んでいます。
任天堂(日本)では、社員が社内の仕事を理解し、業務の連携や自らのキャリアパスについて考える一助として、社内ポータルサイト上に「部署紹介」のページを設け、各部署の業務内容やその部署での業務を通じて身につく知識や能力、キャリアパス例などを紹介しています。
任天堂(日本)におけるそのほかの取り組みについて、詳しくはこちら をご覧ください。
海外子会社においても、人材の育成・開発のための取り組みを実施しています。例えば欧州任天堂では、さまざまな言語を母国語とする社員が一緒に働いているため、共通言語として使用する英語に加え、ドイツ語や日本語(必要に応じて)の研修を用意することにより、社員が不自由なくコミュニケーションを図れるようサポートしています。
このほか、米国任天堂では、社内の求人情報が社内ポータルサイトに掲載され、すべての社員がアクセスして確認できるようになっています。社員はこのページを通じてさまざまな業務についてくわしく学び、採用担当者や採用マネージャーと話し合って詳細を知ることができます。ある職に応募した社員には、面接と評価のプロセスを通じて、公正な選考が保証されています。
米国任天堂の社員は入社後に、米国任天堂の大切な考え方を身に着け、さらには笑顔を届けるという使命を果たすための日々の行動指針である「Nintendo of America Practices」の説明を受けます。「Nintendo of America Practices」は、「お互いに支え合う」「尋ね、聞き、学ぶ」「前へ進む方法を探る」「配慮して行動する」の4つから成り立っています。米国任天堂では、2023年の秋に、「Nintendo of America Practices」をパフォーマンス管理や新入社員の研修に取り入れました。また2024年春には、すべての社員とリーダー向けに「Practices Foundations」という必須の研修を導入しました。
欧州任天堂では、すべての求人情報が社員向けのキャリアポータルサイトに掲載され、欧州全体の社員が閲覧・応募できるようになっており、地域横断型の社内公募制度としています。
任天堂オーストラリアでも、求人情報を社内に掲載して必要なスキルを持っている社員からの応募を呼びかけており、社員が経験を広げ、自らのスキルを開発する機会を提供しています。
職場の安全衛生
任天堂は社員がいきいきと働き、能力を発揮し続けるためには、心身の健康維持が不可欠だと考え、業務内容や地域の特性に合った施策を実行しています。
職場の安全衛生の確保
任天堂(日本)では、「安全衛生規程」のもと、快適な職場環境をつくるために、事業所ごとに衛生委員会や安全衛生委員会を設置しており、毎年「年間安全衛生推進計画」を作成し、活動を行っています。委員は、その過半数が従業員代表※1 の推薦に基づいて選任されており、定期的な社内巡視のほか、健康診断結果の改善を目指す取り組みを通じて、社員に対する啓発などを行っています。健康診断などの重要な健康関連施策の結果は、人事部から経営層へ適宜報告されています。また、労働災害を防止するため、法令で定められた作業区分に応じて作業主任者を設けるとともに、緊急時に対する対応手順を定めています。
各委員会は、救命講習や防災体験講習の受講や、労働安全衛生に関する情報を部内展開することなどにより、全社的な意識の向上に努めています。
海外の子会社も、職場環境向上のため労働安全衛生に関わる法令の遵守状況について内部監査を実施するなど、職場の安全衛生の維持に努めています。
※1 従業員代表
各事業所の社員の過半数を代表するものとして信任投票により選任され、労使協定の締結などを行う。
任天堂(日本)年間安全衛生推進計画
基本方針
法令を遵守し、職場の安全衛生活動に積極的に取り組み、教育、啓蒙を通じて、個々人の安全と衛生意識を高め、自立的な安全衛生活動を通じて、安全・快適な職場を形成します。
活動方針
①安全衛生に関わる法令の遵守、②予防的な安全衛生活動の強化を柱に、年間を通して継続的に安全衛生活動を推進していきます。
重点施策
安全衛生管理体制の維持
予防的健康支援
作業環境の維持管理
安全衛生教育・行事
快適な作業環境の維持
任天堂(日本) 「階段を使おう週間」の実施
任天堂(日本)の本社棟の衛生委員会では、2023年10月に「階段を使おう週間」を実施しました。この取り組みは、2022年に導入したラジオ体操の毎日定刻実施に引き続き、運動不足の解消のため社員の健康増進意識を向上させることを目的に行いました。
期間中に社内ポータルサイトで告知したほか、期間終了後も各階のエレベーター付近に活動を周知するポスターを常時掲示するなど、階段を利用するきっかけ作りに取り組んでいます。
衛生委員会や安全衛生委員会では今後も健康関連の情報発信や施策の実施に努めます。
心身の健康維持
任天堂(日本)では、心身の不調を予防するためのサポートを充実させています。例えば、社員一人ひとりが主体的に健康を維持していくことを支援するために、産業医・保健師による「健康相談室」を開設し、誰でも自由に心身の悩みや気がかりな点を相談できるようにしています。
心の問題に対しては、産業医らによる面談やセルフケアの支援によるメンタルヘルス支援体制を整え、予防・早期発見に努めています。
また、予防的な健康管理の強化を重要な活動の一つとし、生活習慣病予防健診等の受診率向上に向けた取り組みを継続的に実施しています。また、万一病気やケガが原因で長期休職や退職する場合、長期休職時の生活支援金や休職期間満了退職時の退職支援金制度があります。さらに福利厚生制度として、GLTD(Group Long Term Disability)保険※2 に加入しています。
海外の子会社においても、社員の健康維持をサポートするさまざまな施策を行っています。
※2 GLTD保険
業務内外問わず、病気やケガが原因で退職となった後仕事に復帰できない場合に、月収の一部を最長65歳まで補償するもの。
任天堂(日本)が実施している健康施策の一例
長時間労働者に対する面談の実施
長時間労働による健康障がい防止のために、希望者に加え、時間外労働が一定時間を超える社員全員に対して調査表による健康チェックを実施し、産業医が面談を行う運用としています。産業医は、社員の健康障がい防止のために、本人および会社に対して適切な助言指導を行っています。
婦人科検診受診率向上に向けた取り組み
婦人科検診で高い実績をもつ病院と法人契約を行い、時期や年齢に関わらず、優待価格で検診が受けられるようにしています。
メンタルヘルスケア
ストレスチェック(こころの健康診断)を導入しており、社員のこころの健康状態を振り返る機会を設けています。結果に応じて、産業医もしくは提携している外部業者のカウンセラーとの面談を実施し、早期フォローに努めています。 休職中の社員に対しては、産業医が定期的に面談を実施しています。また、復職1か月前には、通勤訓練や生活リズムの記録など、社員がスムーズに復職できるようなサポートも行っています。さらに、復職後にも、産業医による定期的な面談を行うことによるフォローや、時間短縮勤務制度などを設けています。
感染症に対する予防
新型コロナウイルス感染症やインフルエンザに関する情報を社内ポータルサイト上で案内し、社員の認識を高めるとともに、警戒レベルに合わせて対策を周知しています。
また、海外渡航者に対しては、渡航先における衛生情報の提供を行っています。海外赴任者に対しては赴任前後に家族も含めて健康診断や感染症の予防接種を行っています。
米国任天堂 社員の健康の確保のために
米国任天堂は健康増進関連のサービスを対面とオンラインの両方で提供しています。サービスの内容は徐々に充実を図っており、それについて社内ポータルサイト記事やメール、自宅宛の郵便を通じて、従業員に継続的に告知しています。
例えば、社員を支援するプログラム「Employee Assistance Program」を通じて、社員全員が対面またはオンラインのカウンセリングを無料で利用できるようにしました。また、会社が提供する医療保険に加入している社員には米国任天堂の健康センター(CareATC)を通じて、一次診療、処方薬、理学療法、カウンセリング、コーチングなどのケアやメンタルヘルスサポートを対面またはオンラインで受けられるようにしました。これらのサービスの多くを、無料もしくは最小限の自己負担額で提供しています。
欧州任天堂 社員向けの相談窓口によるサポート
欧州任天堂は、社員向けにさまざまな相談窓口によるサポートを提供しています。2022年4月、欧州任天堂は外部のサービス提供業者と提携して、社員を支援するプログラム「Employee Assistance Program(EAP)」を立ち上げました。EAPは、仕事や職業生活、家族や人間関係、心と体、ライフバランス、健康、人生に関わる重大な問題、法律・金融関連のトピックなど、多岐にわたる分野で欧州全体の社員からの相談に応じ、それぞれの相談内容に適したアドバイザーを紹介しています。
このカウンセリングのほかにも、 Nintendo FIT という取り組みの中で、カウンセラーを招いてストレスや家族の問題など日頃の悩み事について相談する機会を設け、社員が日常生活の困難を乗り越えられるよう支援しています。