5. 新しい王道RPGへの挑戦
岩田
まだ体験版は触れていないけど、
このゲームに興味があるという方に、
『BRAVELY DEFAULT』はどういうゲーム、
と説明されますか?
浅野
そうですね・・・。その方と、
どれだけコミュニケーションがとれるかにもよりますが、
一番短い言葉で言うのなら、
「スクウェア・エニックスの新しい王道RPGです」
ということになりますね。
もうちょっと時間があるなら、
「シナリオは『ロボティクス・ノーツ』(※19)の
林さんが書いていて、音楽は
Sound Horizon(※20)のRevoさんが書いていて、
ビジュアルは『FF12』(※21)、『タクティクスオウガ』(※22)の
吉田明彦が担当しています」と言うと思います。
さらにもうちょっと時間があるなら、
「通信でいっしょに遊ぼう!」と言いますね(笑)。
岩田
1人で遊ぶゲームだけれども、通信を使って、
1人遊びの幅が広がる新しいゲームってことですね。
林さんは同じ質問をされたら、何て説明しますか?
林
「新しいんだけど、
なつかしい感じのするRPG」というのが、
シナリオ担当からの説明かなと思います。
岩田
なつかしい気持ちを味わうのも、
RPGの役割として期待されていると同時に、
新たにRPGをプレイする方については、
どう考えておられますか?
浅野
『ドラクエ』『FF』を遊んだことがある方だったら、
ストレスなく遊べるように設計しています。
システムが複雑ではないですし、
バトルも何の説明もなく遊べるように意識しました。
ただ、普通になぞるだけでは、
ターン制コマンドバトルをつくり直すだけになるので、
今回、ひとつ入れたものが、
「ブレイブ&デフォルト」という新システムです。
基本的に誰でも遊べるターン制コマンドバトルですが、
BP(ブレイブポイント)を使って
数ターン分の先の行動を連続して行える「ブレイブ」と
防御に徹してBPをためる「デフォルト」を組み合わせて
ターンをコントロールできるんです。
自分、相手、自分、相手・・・と、
決まったパターンで殴り合うのではなく
数ターン先の行動まで一気に行えるようにすることで、
爽快感や駆け引きが生み出せないかと思ったんです。
岩田
これ、ターン制としては反則なくらい、
思いきった仕組みですよね?
浅野
そうですね(笑)。「ブレイブ」は、
数ターン先の行動までいっぺんに入力するので、
コマンド入力のわずらわしさを少しでも軽減しようと
左手だけでもコマンド入力できるようにもしています。
岩田
ターンを前借りすると、
連続して行動できる代わりに、
そこから先、自分が何ターンか
行動の選択肢がなくなってしまうので、
そこに新しい戦略が生まれるんですよね。
無茶もできるし、無茶したばかりに後悔することもある。
リスクとリターンが成立しているので、
仕組みとして、すごく面白いと思います。
浅野
ありがとうございます。
イメージもしやすいですし、
プレイヤーのプレイスタイルにも
合っているのかなと思ったんです。
一度に行動したい方もいれば、ターンの貯金をして、
まとめて後払いしたい方もいるでしょうし。
岩田
すぐ前借りする方と、
ためる方とでは性格が出そうですね(笑)。
後ろから見ているだけで、タイプがわかりそうです。
浅野
はい、そうなんです。すごく出ます(笑)。
「どうしても倒せないんだけど」って人がいて、
バトルのやりかたを見ていたら、
「そりゃ、一気に払ってばかりいたらダメだよ」って(笑)。
岩田
性格がわかるという話も、
発売後の話題の広がりとしては面白そうですね。
ちなみに、この企画がスタートしてからいままで、
振り返ってみて、どう見えますか?
浅野
企画がはじまってから2年ぐらいたっていますけど、
この2年間、長かったです(笑)。
ただ、新作の王道RPGをつくるというのはチャンスでしたし、
ARの取り組みも、何作もつくった体験版も、
お客さんとキャッチボールしながら磨き上げるやりかたも、
考えうる、あらゆる手を尽くしたつもりです。
だから発売が怖くもありつつ、とても楽しみです。
岩田
わかりました。
では最後に、おふたりからお客さんへの
メッセージをお願いします。
先に林さんからいいですか?
林
はい。最初に浅野さんから
『BRAVELY DEFAULT』のお話をいただいたときから、
キャラクターすべてをいかに魅力的に見せるか、
ということに、そうとう力を尽くしました。
魅力的なキャラクターたちが織りなすドラマを
とてもこだわってつくっているので、
そこに何かビビッとくるものがあれば、
一度体験版でプレイしていただきたいですし、
ぜひソフトが出たら買っていただきたいな、と思っています。
岩田
ありがとうございます。
では、浅野さん。
浅野
はい。林さんにはかなり無茶ぶりをしましたが、
音楽担当のRevoさんにも、かなりの無茶ぶりをしました・・・(笑)。
そのような状況のなか、
吉田明彦も、開発担当のシリコンスタジオも、
自分の要求以上に頑張っていいものを出してくれたので、
新規のRPGとして、胸を張れるものになったと思います。
お客さんからもご意見をいただきつつ、
いっしょにつくったものですから、
ぜひ遊んでもらえればうれしいです。
岩田
ありがとうございます。
いままでいっしょにお仕事をしたことがなかった
持ち味がまったく違うおふたりが、
こういうご縁があって、いっしょに仕事をして、
そしていまの時代に新しい王道RPGをつくるという、
決してやさしくないチャレンジを、
時間をかけてやり切ったという感じがします。
幸いにもいま、3DSが世の中で勢いがあり、
新たなRPGが世の中に受け入れられるチャンスだと思いますので、
たくさんの方に届くようにお手伝いしたいと思います。
今日、これを読んでくださった方に、
「RPGをつくる人はこんなことを考えているんだ」と
興味をもってもらえたらいいですね。
浅野
そうですね。
岩田
こういう話って、
商品の魅力を届けるのはもちろんですが、
自分たちがつくってきたことに対して、
話をしながら整理することにも
意味があるんじゃないかと思うんです。
それに未来のつくり手になるかもしれない誰かに、
「こういう仕事って魅力があるなぁ」
と思ってもらえたらうれしいですよね。
今日は、また違った角度からお話を訊けて、
楽しかったです。
浅野
ありがとうございます!
一同
ありがとうございました。