社長が訊く
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社長が書面で訊く『リズム天国 ザ・ベスト+』

社長が書面で訊く『リズム天国 ザ・ベスト+』

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はじめに

※この記事は、『リズム天国』のプロデューサーのつんく♂さんに、
岩田が書面でインタビューをした内容をそのまま掲載しています。

岩田

つんく♂さん

任天堂の岩田です。

大変ご無沙汰しています。
いよいよ、『リズム天国 ザ・ベスト+』の発売が迫ってきました。

今日は、このソフトについて、お訊きしたいと思います。

先日、つんく♂さんが、母校の入学式で、
「沈黙のスピーチ」をされているのをテレビで拝見しました。
歌うことを仕事にしてきたつんく♂さんが、
声を失う決断をするというのはどれほどのことか、
第三者が想像することなどできるはずもありませんが、
順調な回復をお祈り申し上げております。

今回は、これまでのように、
お会いしてお話しする(※1)ことはできませんので、
「社長が『書面で』訊く」という形で、
このソフトに関するお話をお聞かせいただければと思います。

※1
お会いしてお話しする=過去、つんく♂さんは、『リズム天国』シリーズのプロデューサーとして「社長が訊く」に登場し、岩田と対談している。くわしくは、社長が訊く『リズム天国ゴールド』つんく♂さん篇社長が訊く『みんなのリズム天国』を参照。

岩田

最初に、近況について、
もし、お伝えいただけることがあれば、
お知らせください。

つんく♂

少々ご無沙汰しております。
岩田社長、お元気でしょうか?

私はご心配もおかけしましたが
今は元気にしております!
こうやって会話出来る事、うれしく思います。
どうぞよろしくお願いします。

最近は新しい『リズム天国』も出来上がり
ほっとしているところですが、
作詞、作曲の仕事もやっておりますが、
それこそ、ここ最近の私の近況等が
たんまり詰まった本の執筆が
最終段階に入ろうかといった所です。
ということで、何とぞよろしくお願いします。

岩田

今日は、このような書面形式での会話に
お付き合いいただいてありがとうございます。
これまで、『リズム天国』シリーズのソフトを
3つのハードでそれぞれ1作、
合計3作(※2)、過去にリリースしてきましたが、
つんく♂さんとしての手応えはどうでしたか?

※2
合計3作=『リズム天国』(2006年発売 ゲームボーイアドバンス用)、『リズム天国ゴールド』(2008年 ニンテンドーDS用)、『みんなのリズム天国』(2011年 Wii用)の3作のこと。

つんく♂

ハードが変わるごとにリズムを取る方法が
それぞれのソフトで異なる事はありました。
ただ押すだけのものから、タッチペンを使い、
Wiiリモコンを使うとか。

でも、リズムを体で感じるという意味では
全部共通していましたね。
どの作品も特徴があり、
作品としての手応えは充分に感じましたよ!

岩田

それはよかったです。
「リズム感は鍛えられる」という、
つんく♂さんの持論
は、
『リズム天国』シリーズのソフトでも、
しっかり手応えを感じられたでしょうか?

つんく♂

リズムは鍛えられますので、
この『リズム天国』シリーズによって
リズムが強くなった人も多いと思います。

一度、体にリズムが入ってしまえば、
クリア出来なかった面が何度でも
スラスラクリア出来るようになるわけで、
これはリズムが鍛えられた証拠です。

逆に言うと一回クリアしたのに、
次またクリア出来ないみたいなことが続くということは、
体にリズムがしみ込んでない状態で
何となくクリア出来てしまった結果ですね。
もっともっと練習すればいいわけです。

岩田

「体にリズムがしみ込む」という表現は
このゲームの遊びごたえと一致すると、私も実感しています。
その上で、今作、
『リズム天国 ザ・ベスト+』を開発する上で、
つんく♂さんが、いちばんこだわり、
大切にされようとしたところはどこですか?

つんく♂

とにかくシンプルに。操作は簡単に。キャラに頼らない。
ゲームそのものにリズムがあって面白ければ良い。
続編と考えず、この作品しか知らない人でも楽しめるもの。
難しいゲームをつくってはいけないということ。
そのあたりでしょうか。

あと、いちばん最初の『リズム天国』の時に、
「つんく♂プロデュース」っていうのを
発売まで隠しておこう!ってテーマでやってきた癖があって、
今回も発売前のいつまでだまってればいいんだっけ・・・・
みたいな変な癖があったような気がします。

堂々と「今回も当然つんく♂プロデュースなんだよ~」
って、話していいはずなのに・・・(笑)。

岩田

ああ~、確かに「つんく♂さんプロデュース」
っていうのを発売まで隠しておこう!ということ、
初代の時にご相談していましたね。
今回は、隠す必要もないのに、
おとなしくしすぎていたかもしれませんね。
ところで、つんく♂さんは、今作には、
どのような関わり方をされたのですか?
今までのシリーズと同じ部分、
敢えて変えた部分があれば、お聞かせください。

つんく♂

う~ん。基本的には
今までと大きくは変わってないですね。
後半、話せなくなってからは
スタッフ経由でのやりとりも増えましたが。

僕が曲先行でつくったものに
ゲームが入っていくパターンと、
ゲームの構成ありきで、
そこに音楽を付けていくものがありました。

あと、任天堂さんから来る独特の譜面というか
かけ声用リズム譜みたいなのが来て、
それのリズム譜に曲を乗せてくってのもありましたね。
おもにゲーム序盤用の曲がそうですね。

岩田

これまで通り、深く関わっていただけたことで、
安心されたシリーズファンのみなさんも多いと思います。
つんく♂さんと任天堂のスタッフの協業も、
どちらが先手を出すかは、その時次第なんですね。
今回のソフトで、つんく♂さんが出されたアイディアの中で
お気に入りのもの、
任天堂のスタッフが出したアイディアの中で、
つんく♂さんに気に入っていただけたものがあったら、
紹介していただけませんか?

つんく♂

音楽でもそうですが、
オリジナル作品に対抗するのって
とても難しいのですが、テーマを残しつつ、
新たにつくった「カラテ家」
「しろいおばけ」シリーズの音楽づくりは
意外に難航した分、思い入れも強いですね。

ゲームとしても音としても
思いっきりきまくるのは「カメレオン」ですね。
アドレナリンも出まくります。
音とゲームの融合って感じです。

岩田

「カメレオン」は、TVCMでも取り上げていますから、
既にご存じのお客様も多いと思います。

つんく♂

あとは節目節目に登場する
「リミックス」での音楽ですね。
書き下ろしで唄アリのものも多いので、
ここはゲームをつくるスタッフと
我々音をつくるスタッフとの駆け引きというか、
合作の本領というか。
俺らこんなイメージで音つくってるのに、
なんでそんなゲームなんやねん!
ってマジで良い意味で裏切ってくれるのが
本当に心地よくって。
普通はもっと音に引っ張られるでしょ!
って思うんですが、そんな事をお構いなしに
ゲームをつくったスタッフにおける
見せたいところ、やらせたいところを、
ふんだんに織り込んでくるのが超気持よかったです。

岩田

こういう合作形式での制作では
お互いに「裏切られた」と思うくらい意外に感じるところに
魅力が出てくるのが醍醐味ですよね。

つんく♂

「I'm a lady now」という曲は
ニューヨークで出会った方に作詞を依頼しました。
世界を意識した英語曲を
6歳の少女が歌うという企画があったり。

「その一粒の大きな涙には」という曲は
メロディも歌詞もすごく気に入ってたもので、
大橋光という石川県出身のシンガーに歌ってもらいました。

「ときめきのストーリー」はセンチメンタルですね。
曲としても夕暮れの黄昏感が出てて
その曲を歌う歌手達も、
新鮮な唄を歌うに相応しい人選をいたしました。

任天堂さん側のこだわりによって導かれたのは
「クラスメイト」って曲ですね。
ゲームをかなりやり込んでいくと出会える曲ですが、
最初からかなり具体的なイメージがあって、
「どんなゲームになるのかな?」って思ったら
あらびっくり、こんなことになるなんて~
感動で涙が出そうになりました。
ここでの唄もなんとなく甘酸っぱくって、
そんなに上手くない感じがめちゃいい感じで、
ハマってると思います。

これらの曲は、
ぜひゲーム中で確認してもらえればと思います。

あと、やはり僕的にも任天堂さんチームにしても
「カラテ家」にはとてもこだわりが強く、
曲を何度提出してもなんかしっくりこなかったり、
任天堂さんのリクエストのまま曲をつくると
「ちょっとイメージ違うんやけどなぁ」なんて思いながら
2、3度やり取りしてやり直しをしましたね。

2回目に提出した「カラテ家」用の曲が
マイナーでギターが激しかったんですが、
あまりにも激しくってイケてるので、
最初の方に登場する「カラテ家」でなく
終盤戦に出てくる方に使用されたり・・・。
まあ、そんないろいろあって
出来上がったゲームだと思います。

岩田

「カラテ家」の音楽づくりが難航した、
というのは、こういうことだったんですね。

つんく♂

新しいゲームとしては、
「失恋ベアー」がなんとも言えない哀愁感があって、
リズムゲームに出てくるキャラか!って
つっこみたくなるほど味のあるゲームとなりました。

岩田

「失恋ベアー」もTVCMで取り上げられていますけど、
見ているだけで哀愁が伝わってきますよね。

では、つんく♂さんから、このソフトの
アピールポイントを教えてください。

つんく♂

『ベスト』というタイトルが付いてますが、
新作もたっぷりですし、
「アドバンス版は触った事がない!」
なんて世代にとっても、
新しくこのソフトに入っていますので、
新鮮な気持で楽しんでもらえますし、
また、複数人で行う協力プレイ(※3)
とても充実してると思います。

※3
複数人で行う協力プレイ=『リズム天国 ザ・ベスト+』には、みんなで協力してクリアしていくゲームモードを収録しており、ソフトが1本あれば最大4人まで一緒に遊ぶことができます。

岩田

単なるベスト版ではないことは、
私も強調しておきたいです。
最後に、この記事を読んでくださっている
読者のみなさんに、
つんく♂さんからメッセージをお願いします。

つんく♂

読んでいただきましてありがとうございました。
まだまだ書き足りないこだわりや、
エピソードも山ほどありますが、
とにかくこの新しい
『リズム天国 ザ・ベスト+』を手にとって
家族や仲間と楽しんで頂きたいと思います。

自然とあなたのリズム感が
きっと鋭くなっているはずです!
岩田社長もありがとうございました!

岩田

今後も、一緒に、世の中の人たちが
楽しんでもらえるものをつくっていきたいですね。

ご協力、ありがとうございます。

おわりに

岩田

つんく♂さんには、発売が迫る中、
急に書面で訊かせていただいたのですが、
快くお引き受けいただき、そして、
お元気な様子が伝わってきて、大変うれしく思いました。
つんく♂さんに、この場を借りてお礼申し上げます。

最後になりますが、
このソフトの体験版の配信についてお知らせします。
『リズム天国 ザ・ベスト+』発売当日より、
体験版を3DSの「ニンテンドーeショップ」から
無料でダウンロードいただけます。
このソフトは、携帯ゲーム向けの『リズム天国』としては初めて
4人まで協力プレイを楽しめるようになっているのですが、
体験版同士による協力プレイもできるようにしました。
複数人での『リズム天国』協力プレイも、とても面白いので、
1人で楽しむのはもちろん、
この機会にぜひ、協力プレイも、
たくさんの方にご体験いただきたいと思っています。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。