操作をシンプルにするというのは、
誰にとっても入りやすくなるんですけど、
一方で、すぐにパターンが決まってしまって、
単調に感じてしまうというか、
深みを感じにくいというか、
そういうことが起こりやすくなりますよね。

そうですね。

その課題はどうやって乗り越えていったんですか？

僕は、試作期間の６か月が過ぎ、
このプロジェクトが正式にスタートしてから
プランナーとして参加したのですが、
やはりその課題に直面しました。

大森さんが参加したとき、
どの程度できていたんですか？

その当時はまだDSでつくっていて、
単純な横スクロールのコースと
ボスステージがあるだけで、
ボリューム的には３ステージくらいだったんですけど、
ジェイムスの考えたアイデアは、
シンプルでとても面白いと思いました。

面白いとは思ったけど、
どうすれば、商品として認めてもらえるような、
ボリュームなり、遊びの深さなりを実現できるかを
考えていく必要があったんですね。

そうです。
そこでバリエーションを出すために、
新たにギミックを足したりしてみたんです。

どんなギミックですか？

このゲームは、 リズムに合わせて
ステージ内の音符を拾い集めたり、
タイミングよく敵を倒すのが目的なんですけど、
ステージの上に叩くと音が鳴る、楽器の花を咲かせてみたんです。
敵ではないので、叩かなくてもいいんですけど・・・。

でも、叩かずにはいられないんですよね（笑）。

そうなんです。
楽器の花には、シンバルとかトライアングルとか、
太鼓のように、いろいろな種類があって、
それをリズムに合わせて叩くと
すごく気持ちよくなるんです。

通常流れているサウンドに
自分が叩いたシンバルとかの音が足されるので、
ハーモニーが生まれて、
すごく気持ちがいいんです。

開発中にテストをしていると、
うまいプレイヤーは、勝手に叩きにいって、
自分で難しいプレイに
チャレンジすることに気づいたんです。

つまり、うまい人は
自分で選んで難易度を高くするわけですね。

そうなんです。
なので、ジャンプしないと届かないような
ズルイところに、あえて楽器の花を置いたりして（笑）。

でも、自信のない人は、
それらをスルーしてもかまわないんです。
敵にやられて、ＨＰのハートがなくならない限り、
どんどん先に進めるようになっていますので。
もちろん楽器の花を叩けば、
スコアは当然高くなるんですけど。

だから、楽器の花を入れることで
それぞれの難易度で遊べるということなんですね。
この、「敷居は低くてやさしいけど、
腕自慢のプレイヤーも楽しめる」というのは、
『星のカービィ』シリーズと同じ構造ですね。

そうです。
あと、主人公はテンポくんといって、
もともと１人だけだったんですけど、
コースによって変化をつけるために、
操作性の異なる仲間を２人加えて、
途中で交代できるようにもしました。
そのように、最初につくったものに
どんどん足すようなことをしたんですけど、
それでもバリエーションがなかなか出せなかったんです。
そこで、いろんなジャンルの曲を入れてみました。

多彩なジャンルの音楽を採用したのは、
すごく効いている気がしますね。
曲調が変わると、がらっと
別のゲームになるような印象があります。

そうなんです。
最初は四拍子のステージで、
タン・タン・タン・タンという曲で、
その次は ロックっぽくスピードも速いステージにして、
というふうにやっていったんですけど、
途中で 三拍子のステージを入れたりしたんです。
そうすると、タンタンタン、タンタンタンとなって
ちょっと難易度があがったりするんです。
このように曲調を変えることで、
ゲームのバリエーションにつながりました。

曲選びに関しては、
どんなことを考えたんですか？

個人的には、テクノとか、
ヒップホップとかが好きなんですけど、
このゲームの世界観は、どちらかというと
ファンタジー系なんです。
なので、あまり現代っぽい音楽だと合わないんです。
そこで、シンフォニー系とか、
ジャズやカリプソ、行進曲のようなマーチ、
それにギリギリこの世界に合うということでロックとか、
いろんなジャンルの音楽を選びました。

それらを全部、オリジナルでつくったんですね。

はい。あと、意識したのはメリハリです。
新しいワールドに入ると、
「あ、さっきとは違う」と感じてもらえるような、
音楽的なメリハリもすごく大事にしました。
ところが実際に、通して遊んでみると、
それだけではまだ、
飽きてしまうところもあって・・・。

そうなんです。
プレゼン用のロムをつくったときに、
いろんな曲調のステージを、
１個のワールドに詰めてみたんですけど、
すごくバリエーションが出て、
そのワールドはとても面白くなったんですけど、
それが何ワールドも続くと・・・。

変化を感じなくなるんですね。

そうそう、そうなんです。

そこでワールドごとに
テーマを設けることにしました。

ひとつのワールドに
いろんなジャンルの曲を詰め込むのではなく、
ここはシンフォニーのワールドで、
次はロックのワールド、そのあとはカリプソみたいに、
ワールドをジャンルごとにつくりかえてみたんです。
すると、次のワールドに進むと
とても新鮮な気持ちで遊ぶことができたんです。
それで、スタッフたちも
「おお、これはいい！」ということになりまして。

そのとき、ゲームの完成図が、
ようやく見えたという感じになりました。

本当にそうでしたね。
あと、けっこう広い層の人たちに遊んでほしいので、
シンプルな遊びにすることを目標にして
このゲームをつくっていたんですけど、
やっぱりビデオゲームが好きな人とかにも
満足してほしいので・・・。

「ぬるい」とか言われないようにしたい、
ということですか？

そうそう、そのとおりです（笑）。
そこで考えたのが「 スピードモード」です。
テンポアップするだけで、
ものすごく難易度があがるんです。

テンポを速くするだけで、
まったく違うゲームに化けたんですね。

そうです。実際に触ってみると、
すごく面白くて「これはいける！」と思いました。
しかも、通常のモードでは簡単でも、
「スピードモード」で遊ぶと、
「あれ？ できないぞ？」ということになって、
それがけっこう悔しいんです。
結果、何度も挑戦したくなるという、
新しい効果も生まれたように思います。

その「スピードモード」は
最初から遊べるようになっているんですか？

いえ。もともとこのゲームには
ストーリーがありますので、
ワールドマップの順に遊んでいくんです。
ひとつのワールドをクリアすると、
ステージセレクトの画面が出てきますので、
そこで好きなコースの
「スピードモード」を選べば、
何度でも遊べるようになります。
ですから、腕に自信のある人は、
何度もチャレンジしてほしいと思います。

ゲームが得意な人も
満足できる遊びになったんですね。

はい。いろんな人が満足できる
ゲームバランスになったんじゃないかと思います。