5. 「大型アップデートは最大のお祭りである」
岩田
さきほどの魔法の迷宮のように、
今回の1.3の大型アップデートで
プレイヤーの間で話題になっていることって
何がありますか?
齊藤
バージョン1.3では
自分の家の庭で花を育てられて、
その花で装備品に
カラーリングできるようにしたんですけど、
それがいま大流行しています。
岩田
流行があるというのも、オンラインならではですね。
藤澤
ゲーム内の一角にライブカメラが設置されていて、
その様子がニンテンドー3DSの『冒険者のおでかけ便利ツール』(※20)や
サイトの「目覚めし冒険者の広場」で見られるんですけど、
そこに自分の姿を披露しにみんなやってくるんです。
見たことないような装備に身をつつんで・・・。
岩田
自分だけのオリジナルカラー装備で
まるで朝の情報番組の背景に映り込むように、ですか?(笑)
齊藤
そんな感じです(笑)。
わたしは、マリオとルイージを見ました。
岩田
へえ~、そこまでカラーリングで似せられるんですか?
齊藤
そうですね、これがまた再現度が高いんです。
『IV』のアリーナ(※21)や『VI』のテリー(※22)など、
シリーズの過去作品のキャラクターに扮した人もいて、
スタッフも感心していました。
藤澤
テリーはすごかったですね。
「ここまでできるんだ!?」って思いました。
岩田
たぶん、それは『どうぶつの森』の
マイデザイン(※23)に通じるものがありますね。
「どうしたらこんなことができるんだ?」って
開発スタッフが思うくらい、
時間と手間をかけてくださっているという。
藤澤
“愛”が感じられますよね。
岩田
あの世界はもはや、つくり手とお客さんの
クリエイティビティーが競争関係になるくらいの
次元になってきている気がします。
しかもお客さんのほうが、
圧倒的に人数も多いわけで。
藤澤
デザインに限らず、本当にいつも
僕らの想像を軽々と超えてきます。
この7か月間でだいぶ学びはしましたが・・・。
岩田
でもこの1週間でまた、
驚かされているわけですよね。
藤澤
そうですね、本当に(笑)。
齊藤
ある意味、理想的なことだとも思うんです。
お客さんが自身で新しい遊びを発見できることが
おもしろいゲームの条件でもあるわけで、
そういう要素をいかに盛り込めるかが
つくり手の腕の見せどころだと思うんです。
藤澤
バージョン1.3では、ちょっと新しい試みで、
「○分キャンドル」(※24)や
「おにごっこキャップ」(※25)といった、
「使いかたはご自由にどうぞ」という
アイテムを用意しているんですよ。
それを使って鬼ごっこやかくれんぼをするもよし、
あるいはまったく別の使いかたを
考え出してもらうもよし。
岩田
それもきっとまた、
予想もしなかった使われかたをして
驚くんでしょうね。
藤澤
だといいですね。
今後はそういった、プレイヤーさん自身が、
遊びをつくれる道具を支援するという考えかたが、
ひとつのコンテンツの方向性になりうると考えているので、
そのあたりも充実させていきたいです。
岩田
いま『X』を遊ばれているみなさんは、
一般的に毎日どんなスタイルでゲームの世界と
つきあってくださっているんでしょうか?
もちろん、幅広くいろんな方が
いらっしゃるとは思いますが。
齊藤
本当にさまざまですけれど、
毎日遊んでくださっている方は、
平均すると1時間ちょっとくらいですね。
もちろん30分以内の方もいれば、
数時間ずっと遊び続ける方も入れての平均です。
藤澤
毎日30分でも、だいたいひととおり
見て遊んでもらえるつくりにはなっているんです。
岩田
逆にいえば、それぞれのお客さんの
自由になる時間にあわせた遊びかたができる
つくりになっているわけですよね。
藤澤
そうですね。特徴的なのは、
平日の遊びかたと、休日の遊びかたを
うまく使い分けて遊んでもらえてる感はありますね。
岩田
やっぱり、週末は多いんですか?
藤澤
多いです。だいたい平日は
夜10時くらいがピークなんですが、
休日はそのピークが長時間帯続く感じです。
そういう傾向を見ると
「やっぱり日本のRPGだなあ」と感じますね。
齊藤
バージョン1.3が出た最初の週末は、
同時接続の数も、ゲーム発売月当初に近い
ペースで伸びていました。
藤澤
そうですね。去年の10月くらいをピークに、
メインストーリーをクリアされた時点で
ゲームから離れた方がいらっしゃったと思うんですけど、
その方たちが戻ってきて、
またその時の水準に戻っているので、
新しい方も増えつつ、
一度離れた方も戻ってきているという、
すこぶる順調な状態ですね。
岩田
へぇー。オンラインゲームで、
一度離れた方がまた戻るというのは、
けっこうめずらしい現象なんじゃないですか?
齊藤
たしかに、めずらしいと思います。
「毎日長く遊ぶほどおもしろい」というのが
これまでのオンラインゲームだと思うんですけど、
『ドラゴンクエストX』に関しては、
一度離れて、ほかのことをやっていた方が
「あっ、バージョンアップしたんだ、
じゃあ、またやってみようかな」
というふうに帰ってくる方が多いですね。
岩田
では、大型アップデートを
一度離れた経験者のお客さんにどうお知らせするかが、
今後重要なポイントになってくるわけですね。
藤澤
そうなります。
はじめての大型アップデートの時は
僕たちもまだ手探りだったんですが、
バージョン1.2からは、
「大型アップデートは最大のお祭りである」
と位置づけました。
そのために、サブタイトルを付けて、
ダイジェストの予告映像をつくって
お祭りを盛り上げる要素としたんです。
これから新しいステージがはじまることを強調して、
開発・運営もプレイヤーのみなさんと一緒に、
盛り上がっていこうと。
岩田
あの予告映像は、
わたしも見ていてワクワクしました。
藤澤
ありがとうございます!(笑)
本当に開発の佳境でギリギリでねじこんだので、
かなり重い作業ではあったんですが。
もともとスタッフの有志で、
「公式サイトに来てくれた人だけでも
見てくれたらいいね」
という思いでつくりはじめたんですが
ニンテンドーダイレクトで放映(※26)いただけて、
つくったスタッフも感激していました。
齊藤
あれは本当に、ありがたかったです。
藤澤
ああいった場で流してもらえると、
お客さんの反応がリアルタイムで
伝わってくるのがうれしいですよね。
「見ていて涙がでてきた」と言ってくださる方もいて
「そんなに楽しみにしてもらえてたんだな」と。
開発と並行してつくるのは大変なんですけど、
こうなるともう、引き下がれなくなりますね(笑)。
岩田
でもそれは『ドラゴンクエスト』が
脈々と背負っているものでもあるわけですから。
藤澤
そうですね。
齊藤
そういう意味では、今後は経験者だけでなく、
まだ遊んだことのない人に向けてのメッセージも
込めたいなと思っています。
今回でいえば『IV』のBGMが流れたり、
トルネコ(※27)が登場したりといった、
過去作品をイメージさせる要素を
ちりばめていたんです。
岩田
自分の知ってる『ドラゴンクエスト』との
つながりが見えてくると、
興味もがぜん、高まりますからね。
藤澤
まだ遊んだことのない方に、
「おっ!?」と注目していただいて、
新たにこの世界に入ってきてもらうことも
ひとつの目的なので、そういった点にも
今後も期待してもらえたらと思います。