山上さん、そういう実績と定評がある
ガンバリオンさんとおつきあいしてみて、
どんなふうに感じましたか？

単に『ワンピース』だけが好きというのではなくて、
そもそもガンバリオンのみなさんは
『週刊少年ジャンプ』という少年漫画誌が大好きなんですね。
わたしたちもそれなりに知識を持って挑もうとするんですが・・・。

とても太刀打ちできないんですね。

はい。いまの作品だけでなく、
１０年前、２０年前、３０年前の作品についても、
すさまじく、くわしいんです。
その片鱗を感じたからこそ、
「お願いするならここしかないだろう」と
感じたんですけど・・・。

生半可な知識では「ジャンプ愛が強い」とは言えないんですね。

わたしたちのグループで
いちばんジャンプ愛があるのは中野さんだと思っていたのですが、
実際に話しだすと「すごい、すごい」と。

ガンバリオンさんから上がってくる企画書は、
シーンのチョイスがすごく上手なんですよ。
「それぞれのタイトルについて熟知されているな」と感じられたので、
安心してお任せできると思いました。

ただ『ジャンプスーパースターズ』は
精神的にもプレッシャーのかかる大変な企画でしたよね。
以前、山上さんが
「中野さんはプレッシャーに強いから
　このプロジェクトを任せられます」
って言っていたのをすごく覚えているんです。

まあ・・・ぜひともやってみたいということではじめましたが、
実際にスケジュールがすごく厳しくて・・・。
つくりはじめてすぐに、体験版を用意する必要があったんです。

ちょうどジャンプフェスタ^（※10）に
体験版を出さなきゃいけなかったんです。

開発が夏くらいにはじまって、３〜４カ月で体験版をつくりました。

そこから１年も経たずして
ゲームを完成しないといけなかったんです。
毎週がしめきりのような毎日で、当時僕のそばにいた後輩から、
いつも僕が夜１０時以降も長電話をしているものだから、
「あ、また恋人から電話がかかってきた」って言われるくらい、
ずーっと電話をしていた覚えがあります（笑）。

ふたりの電話がすごく長いのは、その頃からなんですか。

はい。すごく長かったと思います。

毎日、２時間はしていました。

とにかく中身を決めていかないといけないから、
各案件を保留にできない状態だったんです。

芳賀が電話口で、最初は「はい、はい」って返事をしているんですが、
だんだん「ふんふん・・・」ってため口になっていくんです（笑）。

そうでしたね。
大変失礼な口のきき方をしてしまいました・・・。

いえ、僕はぜんぜん気にしていないです。
恋人だから大丈夫です（笑）。

（笑）

芳賀さんは、なぜ乗りこえられたと思いますか？

そうですね・・・あの企画に関しては、
キャラクターがたくさん出ることがよろこばれる、
というところがハッキリしていたので、
力を注ぐべきところは見えやすい企画でした。
しめきりが決まっている以上、決める踏ん切りがつきましたし。

あれは、しめきりがないと終わらないプロジェクトですよね。
ジャンプ愛を無制限につめこんでしまいますから。

そうです。そのおかげで完成したと思います。

中野さんと芳賀がギリギリまでつめこむので、
山上さんから「ここの仕様は切るべきです」
というご相談もありました。

ああ、ありましたね。
スタッフはどんどん苦しくなるほうへ舵を切るんですよ。
さすがにリスクが高すぎるものについては、
「やめたほうがいい」って言わなきゃいけないんだけど、
どのタイミングで言うべきか、山倉さんと相談していたんです。

ガンバリオンさんの企画書で印象的だったのは、
漫画が毎週連載されているなか、もっと前からゲームをつくるので、
どうしてもゲームが完成した時点では、
漫画にくらべて古くなって旬のものが入れられないんです。
そこで企画書には、必殺技にひとつ空欄があって、
「ここは最新号の必殺技を入れる」ということなんですね。
それもひとつだけでなく、いろいろなキャラにあるんです。
そういうところが芳賀さんはすごいなと思いました。

それは『ワンピース』をつくりつづけて習得した技なんですね。

そうです。連載を毎週読んでいるとちょうど波があって・・・。

ああ、伏線をはっているから、「このころ新しい技が出る」とか、
流れが読めるんですか。

そうです。だからスケジュールでここまでは待って、
ここで出なかったら、既存のものを入れる、
というふうにつくりました。

かなり綱渡りだったと思います。

はい。ただ『ワンピース』でやっていたからかもしれませんが、
それはわりと手段として当たり前のもの、という認識でした。

なるほど。
それを見て、山上さんがハラハラするわけですね。
中野さんはもうすっかり、ガンバリオンさんに
恋人として取り込まれていますから（笑）。

十分に信頼関係を構築できていたんじゃないかなと思います。

そうですね。この組みあわせでやると、
中野さんはガンバリオンさんの人になっちゃうので（笑）。

そう、それはわたしもすごく感じていました。
今回のプロジェクトも同様で、プレゼンにきたときの中野さんは、
「ガンバリオンを代表してきました」みたいな感じでしたから。

そうだったんですね。
染めていたんですね（笑）。

いつのまにか、ガンバリオンさん色に・・・はい（笑）。