岩田
今作をつくりはじめた最初の段階で
ヨッシーが登場することになって、
林田さんはどう思ったのですか?
林田
まず、魅力を感じました。
ひとつのステージをマリオで遊ぶというのと、
ヨッシーで遊ぶという、
遊びのかけ算が生まれると思いました。
また、新しいものをつくるなら
操作面でも新しいことをしたかったのですが、
ヨッシーはポインターを使って操作をしますので、
その意味でもとてもいいマッチングになりますから。
岩田
最初は「出がらし状態でした」と言っていたはずなのに、
いきなりポジティブに考えられるようになったんですね。
林田
はい(笑)。
岩田
ヨッシーの操作ははじめからスッとできたんですか?
元倉
操作に関しては初期に仕様書を書いて、
それとほぼ同じです。
岩田
では、ポインターを使って、狙って食べるようなアクションは
最初からあったんですね。
元倉
はい。で、引っ張るアクションはあとから入れました。
岩田
その引っ張るアクションについては、
このゲームについて話していたときに
このゲームを代表する新しい魅力として、
宮本さんから自慢されました(笑)。
宮本さんは、めったにこういうことを言わない人なので、
私はすごく印象的に覚えているんです。
ぎゅー、すぽん、みたいに引っ張ったり引っこ抜いたりするアクションは、
「これまでにちょっと味わったことのない新しい感覚なんだ」と。
早川
もともと引っ張るアクションは、
1箇所だけに入っていたんです。
ところが宮本さんに「これはいい」と言われて、
敵と戦うときに応用させたりとか、どんどん展開させていったんです。
林田
それに、ヨッシーが食べるアクションだけでは
お客さんの想像の範疇ですから、
どうしてもいろんなことをやりたくなってしまうんです。
元倉
そこで変身も、“食べる”をキーワードにして
どんどん追加していきました。
たとえばバルーンヨッシーをつくったのは
もともと小泉さんが言い出したことがキッカケなんですよね。
小泉
いや、あれは僕がたとえ話で言っただけなんです。
「フルーツを食べたらどういう性能か、わかりやすいように、
たとえばあるものを食べたらプクッと浮いたりするとか」
そういうたとえ話をひとことだけつぶやいただけなんですけど、
気がついたときには、あんな姿になってしまいました(笑)。
早川
今回のヨッシーの変身のポイントは
食べた瞬間に何かが起こるということなんです。
林田
ですから、
唐辛子を食べさせてすぐにダッシュしたりとか(笑)。
元倉
そうやって、いろんな変身をつくったんですけど、
一方で、みんなの愛情もすごかったんです。
岩田
みんなの愛情というのは?
元倉
ヨッシーに対する愛情です。
開発スタッフやマリオクラブ(※7)の人たちとか
NOA(Nintendo of America)の人たちもそうでしたね。
とにかく、ヨッシーのことが大好きな人たちが
操作に関しても、「これは違う」とか
「ヨッシーはこんなにジャンプをしない」など、
熱い感想をいろいろ書いて送ってくれるんです。
※7
マリオクラブ=マリオクラブ株式会社。任天堂の開発中ソフトのデバッグやテストプレイを行う。
林田
なかには「俺のヨッシーとは違う」というのもあって(笑)。
岩田
「俺のヨッシー」ですか?(笑)
みんなのなかにそれぞれ「俺のヨッシー観」があって、
その人たちのヨッシー愛に合わせるような戦いがあったんですね。
元倉
はい。ただ、人それぞれに
『ヨッシーアイランド』(※8)とか
『ヨッシーストーリー』(※9)とか、
元になるソフトが違うんです。
岩田
そこで、みんながそれぞればらばらに
好きなようにヨッシー愛を語ってしまうんですね。
それは大変でしたね(笑)。
早川
それに遊びのポイントも違うんですよね。
「ふんばるところがいいんだ」という人もいますし、
「乗り捨てるのがいいんだ」という人もいますし、
愛のポイントも異なるんです。
※8
『ヨッシーアイランド』=『スーパーマリオ ヨッシーアイランド』。スーパーファミコン用ソフトとして、1995年8月に発売されたアクションゲーム。
※9
『ヨッシーストーリー』=NINTENDO64用ソフトとして、1997年12月に発売されたアクションゲーム。
小泉
なかには「ヨッシーには乗っちゃダメです」
という人もいて。
岩田
そこまで言う人もいたんですか(笑)。
小泉
「ヨッシーは操作をするメインキャラクターでしょう」と。
それはたぶん『ヨッシーアイランド』のことだと思うんですけど、
「だったらマリオはどうするの?」と(笑)。
岩田
マリオを置き去りにしてはいけませんね(笑)。
早川
ところが、みんなの要望をどんどん付け足していくと、
ヨッシーは最強になってしまうんです。
足は速いし、ふんばりはすごいし(笑)。
林田
何でも食べるし(笑)。
乗り捨てもできるし、ということで。
小泉
だから、「万能すぎるから面白くない」と
宮本さんからも指摘されました。
岩田
遊びにいい意味での緊張感がなくなるんでしょうね。
小泉
はい。そこでヨッシーにまつわる
いろんなオブジェクトや敵とかを深く掘り下げるようになりましたね。
林田
あとヨッシーに関することで言うと、
実は今回、10年ぶりに録音し直したんです、
戸高(一生)さん(※10)の声で。
※10
戸高一生=任天堂情報開発本部サウンドチーム所属。『ヨッシーストーリー』や『どうぶつの森』シリーズ、『Wii Music』など数多くのサウンドを担当。
岩田
戸高さんの生声ですか?(笑)
林田
はい。新ボイスです。
それで戸高さんにお願いしたとき、
「大丈夫かなあ」と不安がっていたんです。
というのも10年もたっているので
ヨッシーが年取ったと言われないかって(笑)。
一同
(笑)
林田
でも大丈夫でした(笑)。
岩田
そんなふうにヨッシーをつくりながら、
林田さんと元倉さんもどんどん
テンションが上がっていったんですね。
林田・元倉
はい(笑)。
岩田
ヨッシーの他には
どんなことで盛り上がっていったのですか?
早川
まず、テンポよく遊べるようにと
ワールドマップを採用することを序盤で決めて、
途中から星船マリオを入れることにしたんです。
岩田
マリオの顔をした星船が今回出てくるんですよね。
それはどうして採用することにしたんですか?
元倉
これも小泉さんが書いた企画書が元になっているんです。
岩田
(企画書を見て)あ、ホントですね。
5年前に書かれた企画書に星船マリオの構想があったんですか。
元倉
ええ。前作をつくっているときも
小泉さんは「顔の惑星をつくろうよ」と
しつこいくらいに言い続けてましたよね。
小泉
僕はマリオの顔の惑星をプラットホームにしたいと、
口を酸っぱくして、いろんなところで言ってたんですけど、
当時は誰も振り向いてくれなかったんです(笑)。
岩田
みんなが忙しいと、たまにそういうことがありますよね。
わたしも経験がありますけど、
ずっと言い続けているのに、みんなが聞こえないふりをして(笑)。
小泉
「また何か言ってる」みたいな感じで。
でも、しつこく言ってたのでたぶん覚えてくれていたんだと思います。
元倉
マリオの顔の惑星をつくることにしたのは
その上を歩けることがわかったからなんです。
岩田
マリオの顔の上を歩ける? 地形として?
元倉
そうです。マリオの顔は帽子とか
複雑な形状をしているのですが、
それでも自然に歩くことができるとわかったんです。
岩田
システムの上で、
そういうことが実現できるということですね。
小泉
もちろんふつうのロケットの形にしてもよかったんですけど、
ワールドマップで見たときに、
マリオの顔だと、自分がどこにいるのか
パッと認識しやすかったんですね。
それに、冒険を終えて、ひと休みする場所としても
マリオの顔が合っていると思いました。