社員対談1プランナーに求められること軸丸慎太郎✕天野裕介
制作企画系の仕事をしている2人に、プランナーとして、どのように仕事に向き合えばいいのか、話をしてもらいました。
おもしろくするために
軸丸プランナーの仕事のひとつに、ゲームをおもしろくすることがありますけど、天野さんはその「おもしろい」ことについて、どのように考えていますか?
天野「おもしろい」って、主観の要素が大きいんですよね。自分でおもしろいと思っていても、他の人はおもしろくないと言うかもしれないし、なので、僕が最初にアイデアを出すときは、「おもしろい」とか「おもしろくない」というのはいったん措いておくんです。で、あとからスタッフみんなでおもしろくしていくようにしています。
軸丸任天堂のゲーム作りの現場では、「手触りが大事」だとよく言われますよね。なので、僕は「手触りがいい」とか「なんとなく触っていておもしろい」みたいなものができたら、理屈はあとで付けられる、と思っているんです。
天野そうですね。例えば、あるアイデアを実現するために、プログラマーと2人で試作を作っていて、それがある程度、触り心地のいいものになったら、ゲームのなかでの理屈を付けて、それからようやくデザイナーに発注することも多いですしね。
軸丸そもそも、早い段階でデザイナーに発注して絵を付けてしまうと、おもしろくなったような錯覚を起こしてしまうんですよね。ところが、試作を作っているときに、動いているのが四角いものであっても、自分のなかでは脳内補完をしていて、ちゃんとしたキャラクターが走っていたりしますしね。だから、絵を作るよりも、まずは手触りを追求することが、おもしろさにつながるように思いますね。
アイデアの点と点を結ぶ
軸丸ところが、最初の段階からおもしろいと思えるようなことはあまりなくって、手探りでおもしろくしていくようなところがありますけど、どうがんばってみても、ひとつのアイデアがなかなか手触りのいいものにならないこともありますよね。
天野そういうときって、やっぱりアイデア自体が弱かったり、そのアイデアを使って何かを作るための根拠が足りていなかったりすることもあると思うんです。
軸丸で、ずっと実験を続けていても、なかなかおもしろくならないこともあって……まわりのスタッフからは「これ、どうするんですか?」と責められたりしますよね。そんなとき、天野さんはどうするんですか?
天野自分で答えを見つけるまでは耐えるしかないですね。アイデアというのは、点としてバラバラに存在させるのではなく、全体のなかのシステムとして機能するように、点と点がちゃんと線で結ばれるようになるまで考え尽くす、ということを、自分の仕事の基準にしているんですね。だから、それこそお風呂に入ったときも、ずっと考え尽くすことを続けていると、いずれ点と点がつながり、さらにその線が別の線とつながって、解決方法が見つかっちゃうんですよね。
軸丸なるほど。僕の場合は、ひとつのプランを試そうとするとき、うまくいった場合と、うまくいかなかった場合を絶対に考えるようにしています。というのも、プログラマーに発注した時点で、次のプランを用意しておかないと、その人の仕事が空いちゃいますからね。
自分のアイデアに自信を持つ
天野アイデアについて、僕が確信を持って言えるのは、プランナーとしてひとつのアイデアを出したときに、それに対して自信がなかったりすると、必ずあとで破綻してしまうということなんです。
軸丸やっぱり自分が考えたアイデアに対して、自信を持つことが大事ですよね。自分のなかで確たる自信があれば、線引きもはっきりすることができて、例えばプログラマーから「ここは譲れませんか?」と聞かれても、「すまん。そこは譲れない」とはっきり断ることもできますし、何よりアイデアを自分のなかで整理できていないと、ほかの人に指示ができないところもありますしね。
天野そうですね。誰よりもそのアイデアについて考えて、ちゃんと整理できたからこそ、人に対してしっかり説明できるようになるんですね。それに、プログラマーから「こう変えたい」と言われても、「この機能を変えることはできないけど、それさえ守ってくれれば、ほかのやりかたでもいいよ」と言えますしね。
軸丸ところで天野さんは、新人のときからプランナーとして自信があったんですか?
天野あるわけないじゃないですか(笑)。入社当時は、ゲームってどんなふうに作ったらいいのか、まったく知りませんでしたし、自信はなかったのですが、だんだん仕事に慣れてくると、「自分ってけっこうできるじゃん」と完全に調子に乗っていましたね。ただ、その頃やっていた仕事というのは、先輩の用意してくれた素材を組み合わせる作業が多かったので、そのうち、自分から最初のアイデアを提案して完成まで持っていく仕事をやり始めると、だんだんと上手くいかなくなっていきました。完成するイメージがチームメンバーに伝わらない状態になるというか……。はじめの頃は、プランナーって、おもしろいことを考えたら、勝手にモノができあがってくるものだと漠然と思っていたんですけど、やっぱり甘かったです。先輩たちは、かなり細かな仕様書を書いたり、きっちりとした設計図を用意したりしていましたので、「そこまでやらないとあかんのか……」と思うようになり、それを見よう見まねで、プログラマーやデザイナーに指示をするようになってから、プランナーとしての自信が次第についていったように思いますね。
軸丸だから、先輩のやりかたを見て覚えることも大事だということなんですね。