5. 新しい世界、新しい出会い

岩田

最後に、楽しみにしてくださっているお客さんたちに、
メッセージをお願いしたいと思います。
増田さんからお願いします。

増田

はい。今回のシナリオに関しては
自分もいくつかを設定しているのですが、
シナリオをまとめたのが松宮稔展(としのぶ)なんです。

石原

松宮さんは、『金・銀』以降の『ポケモン』の
シナリオやキャラクター設定を担当しています。

増田

その彼に対し、僕は今回
「お前は天才だ!」と言い放ってしまったんです(笑)。

岩田

“天才”ですか?
それはどういう部分でそう感じたんですか?

増田

プレイヤーをうまく誘導しながら、
プレイヤーの感情を盛り上げて、
伝えたいメッセージをきちんと言えていることや、
うまくイベントを構築して、ジムリーダーや
プラズマ団のキャラクターを立てているところです。
なので、いままでと違うシナリオになっていると思いますし、
情報を入れることなく、まっさらな状態でプレイしていただいて
エンディングまで行ったときの感想を聞けるのを楽しみにしています。

岩田

いち早く感想を聞きたいんですね。

増田

本当はここで言っちゃいたいくらいなんですけど(笑)。

岩田

ここでは言えませんね(笑)。
では、杉森さん。

杉森

これまでのシリーズですと、パーティをつくるときに
見慣れたポケモンを混ぜてしまったりとか、
どうしても好みや信頼感や馴染みがあったりということで
そうなるとは思うんですけど・・・。

岩田

最初に博士からもらえるのは
新作が出るたびに新しいポケモンになりますけど、
それ以外は自分があてにしているポケモンで
そろえてしまいやすいんですね。

杉森

「やっとピカチュウ出た!」みたいなことで、
つかまえた瞬間に手持ちに入れたりということを
いままではやっていたと思うんですけど、
今回はポケモンが全部新しくなりましたので、
そういうことが一切ない世界なんです。

岩田

新しい出会いがそのぶん生まれるということですよね。

杉森

そうです。でも、ある種、心細い部分もあると思うんですけど、
そうやって1作目の『赤・緑』を遊んだときの気分で、
また新しい出会いを楽しみながら、そこからまた
お気に入りのポケモンを見つけてもらえればいいなと思っています。

増田

家族みんなでやっても、「こんなヤツが出た」とか、
全員知らない状態なので、けっこう楽しめると思うんです。
タイプにしてもそうですし。

岩田

みんなが同じスタートラインからはじめることができるんですね。

増田

そうです。初めての人とベテランがいっしょになって
ワクワクすることができると思います。

岩田

最後に石原さん、お願いします。

石原

今回、遊び方のバリエーションが多いのですが、
まず最初は、大きな道をまっすぐ進んでいただきたいと。
『ポケモン』の王道である、最初にポケモンをもらって旅に出て、
ストーリーを楽しみながら、エンディングを迎えるということに関しては
これまでで最もていねいに道筋をつくってあると思います。

岩田

「迷わせない」ということもテーマにしていますよね。

石原

はい。間違いなく最後までたどりつけて、
そして達成感があるというつくりをベースとしているんです。
でも、いろんなポイントがあって、脇道にそれたい人はそれられるし、
行くところまで行ってから、脇道にそれたいという人もいるでしょうし、
興味があるときにやってもらえればいいんですけど、
そこでのひろがりや深さはものすごくあります。

岩田

いろんなものがたっぷり用意されているんですね。

石原

そうです。自分の欲求に応じて、
「こんな感じで遊んでみよう」とか、
「こういうふうにアプローチしてみたら、こういうことが起きた」とか、
そういうところでの自由度と、しっかりしたストーリーを楽しむということが
デュアルで味わえるゲームになりましたので、
みなさんに思う存分に楽しんでほしいと思っているのですが、
正直、究めるにはそうとうタフなゲームにもなっています(笑)。

岩田

それは増田さんからお客さんへの
“挑戦状”のようなものなんですね(笑)。

増田

はい(笑)。

石原

僕も最初はツタージャ(※16)でプレイして、
2回目をミジュマル(※16)で、3回目をポカブ(※16)
プレイしているんですけど、3回もプレイしているのに、
まだ5分の1くらいしか遊べていない感じがしているんです。
まだあれをやってない、これもやってない、
ポケモンドリームワールドはやってない、ということがいっぱいあるんです。

※16

ポカブ・ミジュマル・ツタージャ=ゲームのはじめに、主人公が1匹だけ選んでもらうことができるポケモンの名前。

岩田

それに発売されてから、周りにたくさん遊ぶ人が出てきて、
社会の話題になったときに、
何が起こるのかというのはまだ味わっていないですからね。

石原

そうなんです。そこを味わわないと
なんか味わいつくした気にもならないし、
まだ足りないというか、もうちょっとちゃんと体験しないと、
正しく語れないみたいな、そういうボリューム感があるんです。
そこをぜひ、できるだけ深くまで味わってほしいなと。

岩田

かんたんに遊びつくすことなんか
できっこない感じがわたしにもしているんです。

石原

そのくらいてんこ盛りになったと思いますね。

岩田

それでは最後にわたしからもひとこと。
その昔、クリーチャーズ(※17)という会社ができたとき、
当時はわたしもクリーチャーズの取締役のひとりでしたから
その役員会で石原さんとよくお会いしていた頃だったと思うんですが、
石原さんが『ポケモン』がまさに世の中で受け入れられていく過程のなかで、
「いろんなものと“つながる”ということを徹底的に大事にするんだ」
と話されていたのを、すごくよく覚えているんです。

石原

はい。

※17

株式会社クリーチャーズ=ポケモンカードなどを制作するほか、『生活リズムDS』などのソフト開発などにも関わる。会長は石原恒和氏、社長は田中宏和氏。本社・東京。

岩田

それで今回、増田さんたちの話を訊いていると、
「よくもまあ“つながる”ということを
ここまでいろいろと徹底して大事にしましたね」と。

増田

(笑)

岩田

その“つながる”という、
ひとつの究極のかたちが今回の『ポケモンブラック・ホワイト』の感じがしていて、
石原さんが自分で3回も遊んでいるのに
まだ5分の1しか遊んだ気がしないというのは、
『ポケモン』というのは、もちろんシナリオを遊んで
ひとりで遊ぶのも楽しいゲームなんですけど、
それはたぶん全体の遊びのごく一部にすぎなくて、
周りに遊んでいる人がいっぱいいて、
その人たちとつながりはじめると、どんどん面白くなる遊びなので、
クリアしたら、はい終わり、というゲームではないんですね。
それを実現したのは、“つながる”を意識し続けた結果なんだと、
今日お話を訊いて、改めて感じました。
 
あと、杉森さんの
「最初に思い切って行ってもらえばもらうほど、
同じだけブレーキを踏んでも遠くに行けるし、
ハードルが高ければ高いほど、ちゃんと高く跳べるんですよ」
という言葉もすごく印象的でした。
大変なことをしているんだけど、
大変なことを楽しんでいる感じで、いいチームだなあと思いました。
発売されてからの反響が、楽しみですね。
みなさん、本当にお疲れ様でした。

一同

ありがとうございました。