3. イベントも「次世代感」
岩田
このゲームは特産品や、洋服など、
たくさんの物量をつくらないといけないところがありますが、
その物量との戦いはどんな感じでしたか?
高橋
まず「ネタ帳」というものをつくって、
開発スタッフ全員に自由に書き込んでもらいました。
服のネタ、帽子のネタ、
コンテンツのネタ、Miiの台詞・・・
ありとあらゆるネタをスタッフ全員から募集して、
最終的に5500以上のネタが集まりました。
岩田
5500以上ですか? 膨大な量ですね。
高橋
はい。その中から厳選してネタを採用しました。
岡本
前作と違う点は、ひとつのものをつくる時間が
圧倒的にかかることでした。ひとりでつくったら
人生を捧げなければいけない、みたいになるので(笑)。
だから納期から逆算して、担当者の人数を考えて、
協力会社さんにもご協力いただきました。
岩田
なにせアイテム一つひとつにも
「次世代感」を求められますからね。
イベントをつくるのも大変だったと思いますけど、
どうやって進めていったんですか?
高橋
前作同様、中川(正宣)さん(※6)が
がんばってくれました。
岩田
はい、中川さんというのは、
岡本さんたちと同期で、前作の『トモコレ』でも
面白いネタをどんどん思いついては開発して、
それを「きっと誰かがゲームの中に
なんとか入れてくれるに違いない」と、
ものすごく信じている、
いわば自由奔放なプログラマーですよね(笑)。
普通はそういうつくりかたでは、
製品には入り切らないんですけど、
一見脈絡のないものでも、面白かったら
全部入ってしまうのが『トモコレ』なんですね。
今回もディレクターの指示もないのに
中川さんがいろいろとつくってくれたんですか?(笑)
高橋
そのとおりです(笑)。
岩田
そのつくりかたは、
いまのゲームづくりとしては、
相当ユニークですよね。
坂本
でも中川さんのつくったものが、
『トモコレ』のトーンを決めたともいえるので、
「持ちつ、持たれつ」という感じだと思います。
岩田
『トモコレ』は岡本さんのアートセンスと、
中川さんの破天荒なつくりかたから
生まれたともいえるんでしょうね。
中江
一応、中川さんのために言っておきますと・・・
ちゃんとやるべき仕事はやっていて、
その余った時間で自由につくってもらってます(笑)。
岩田
そうなんですね。
それを励みにがんばっている感じが、
なんだかすごく伝わってきます(笑)。
高橋
中川さんは前作の『トモコレ』以降、
物理演算のアルゴリズムを覚えたみたいで、
それを使って、よい意味で
“しょうもない”ネタをつくっていました(笑)。
それと、3DSならではの新しい技術を使って、
イベントのネタをたくさん考えていたようです。
岩田
イベントも「次世代感」なんですね。
その言葉と、実際の表現とは
イメージが必ずしも一致しないんですけど、
やっていることは、「次世代」ですよね。
高橋
そうですね。
それから絵的にぜんぜん「次世代」じゃないんですが、
中川さんがMiiをドット絵にする手法を発明しました。
昔のドット絵のRPGみたいなイベントに仕立てて、
ゲーム内で1プレイ100円で遊べます(※7)。
岩田
そういうことの積み重ねで、
『トモコレ』になっていくんですね。
高橋
はい。コンセプトは前作と変わらず
「究極の内輪ウケ」ですから、
達成するにはいろいろなネタを
入れる必要がありました。
坂本
それに今回は前作があったから、
中川さん以外のプログラマーも
試作品を持ってきてくれて、
いくつか採用したものもありましたよね。
岩田
みんな、『トモコレ』のノリをつかんでいましたか?
高橋
そうですね。
つかんでいる部分もあれば、
ちょっと違う部分もありました。
すごく微妙なニュアンスなんです。
「Miiがしゃべっている内容が賢すぎる」とか(笑)。
岩田
中江さんは、前作で
プログラマーのまとめをしていたときと、
今回、企画側でかかわったときと、
何がいちばん違いましたか?
中江
前作は、ゲームの方向性が
ほとんど見えていない状態から開発をはじめたので、
どのような状況になっても対応できるように
なるべくシンプルなかたちでつくっていってました。
でも今作では、ゲームの方向性がある程度わかっていたので、
周りのプログラマーさんとも相談しながら
最初から可能な限り具体的なかたちにして
開発を進めていきました。
岩田
「企画」といっても、今回はいわば設計の
「橋渡し」的な役割を担当していたんですね。
中江
はい。だから、坂本さんからの提案でも
「それは技術的に難しいです」
みたいなことも、会議でやりとりしました。
坂本
よく会議をしていたんです。
この3人で、ほぼ毎日、
1年ぐらいやっていました。
岩田
3人で1年間、毎日ですか?
坂本
はい。それが面白かったんです。
しんどくもあったんですけど(笑)。
それぞれの視点でどう解決すべきかを、
根気よく考えないといけなかったので。
中江さんは技術的なことにくわしいので、
むしろさらにハードルの高そうなことを
提案してくれることもありました。
「そんなことできるの?」って感じの・・・。
岩田
「構造を詳細に把握している人が会議にいる」
というのは強みですね。
高橋
そうですね。
それに前作では、Miiが部屋でうろうろしたり、
DSやWiiで遊んだりしている雰囲気を
中江さんがつくり上げられたんです。
だから、今作でもその雰囲気を引き継ぐうえで、
プログラマーさんやデザイナーさんに
微妙なニュアンスを伝えてもらえましたので、
まさに「橋渡し」的な感じでした。
岩田
でも、それぞれ持ち味と役割が違う、
面白い3人チームですね。
坂本・高橋・中江
(顔を見合わせながら)そう・・・ですね。
高橋
だいたい、坂本さんが無茶を言って・・・。
岩田
坂本さんは「無茶を言う役」なんですか(笑)。
高橋
それで僕が「やたら心配する役」で・・・。
坂本
で、中江さんが「やれますね!」って。
中江
・・・か、止めるか、ですね(笑)。
岩田
じゃあ中江さんは・・・
「どうにかする役」ですかね(笑)。