社長が訊く
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社長が訊く『ニンテンドー3DS』ソフトメーカークリエーター 篇

社長が訊く『ニンテンドー3DS』ソフトメーカークリエーター 篇

第18回:『世界樹の迷宮IV 伝承の巨神』

目次

4. RPGを思い出す旅

岩田

『世界樹の迷宮』にとってDSという2画面のハードは、
上画面にダンジョン、下画面に地図を描いていくという
ゲームのシステムとすごく相性がよかったと思うんです。
こういう使いかたは、企画段階から決まっていたんですか?

小森

はい。『世界樹の迷宮I』の開発当初から
DSでつくることを想定していて、
「昔は、方眼紙に地図を描いたよね」って話をしていました。

岩田

確かに、昔はマップを自分で描いていたのに、
いまはコンピューターがやってくれるわけですから、
あえて自分の手で地図を描くことに
なつかしさと新鮮さがあるんですよね。

小森

はい。自分も聞いたとき、
ゲーム機の画面に地図を描くというのが
独創的だと感じましたね。

岩田

こうやって誕生した『世界樹の迷宮』が、
つくり手の方たちが考えていた以上のものに育ちました。
そこで『II』『III』とシリーズを重ねるうえで、
それぞれテーマにしていたことは何ですか?

小森

『II』に関しては、『I』をつくったあと、
お客さんの反応が大きくて非常にうれしかったんですが、
改めて振り返ると、「もっと面白くできる」と思ったんです。
だから『II』はコンセプトは変えずに、
より遊びやすくつくるようにしました。

岩田

迷いなく、つくれたんですね。
そして『III』はどうだったんですか?

小森

ええっと、そこではどうしていくべきか深く考えました。

岩田

『I』と『II』でやりつくしたから、
「このままシンプルなままでいいのか?」
という葛藤が出てきますよね。

小森

はい。でもあまり手を加えると
コンセプトから外れてしまうし、非常に悩みました。
最終的には、「変化がないとお客さんが飽きるのでは?」と考え、
“驚きを与える変化”をテーマに新要素を加えました。

岩田

狙いどおりの手ごたえは出ましたか?

小森

はい。
発売前は変化に戸惑うような声もありましたが
発売後、遊んだお客さんからは
「ああ、やっぱり『世界樹の迷宮』だった」
という意見をいただけて、非常に安心しました。

岩田

語ってくれる方がいるゲームって幸せですよね。
そこから本当にエネルギーをもらえますから。

小森

はい。「楽しかった」という声が聞こえてくると、
本当に「やった!」ってなります。

岩田

さて、いよいよ『IV』の話に入りますが、
最初はどのようにはじまったんですか?

小森

「『IV』を3DSでつくろう」という思いは、
『III』の開発のおわりごろからありました。
「3DダンジョンRPGを3DSでつくる」というのは、
どう考えてもベストな組み合わせですから。

岩田

ちょっと大げさですけど、
「『世界樹の迷宮』のために、3DSをつくったんじゃないか?」
というくらいベストマッチですよね(笑)。

小森

はい(笑)。
でも、いざつくるタイミングで僕が忙しくて、
うまく進めなかったんです。
ただ運よく、金田の手が空いていまして。
本人も「興味がある」という返事だったので、
『IV』は金田にディレクターを
やってもらうことになりました。

岩田

でも金田さんも初代にかかわっていて、
同じ価値観を共有してきたからこそ、
委ねることができたんですよね。

小森

そうです。
可能であれば自分がつくりたいという思いは
当然あったのですが、不可能となったとき、
金田なら大丈夫だろうと考えました。
それに金田に任せることで、
「僕もお客さんとして楽しめるかな」
と思って任せました(笑)。

岩田

それで、金田さんにまわってきました。

金田

・・・はい。

岩田

ファンのみなさんの期待も大きいですね。

金田

もう・・・両肩が外れるほどのプレッシャーで・・・(苦笑)。
ディレクターが変わったことに対する
不安の声も上がると思いましたし、
シリーズ4本目は節目、という感じがするんです。

岩田

確かに4本目は重要ですね。

金田

はい。
しかも、しばらく『カドゥケウス』ばかりつくっていて、
RPGをつくるのは久しぶりだったんです。
・・・心臓手術の方法は覚えたんですけど。

一同

(笑)

岩田

結局、変えない部分と、
あえて変える部分を決めなきゃいけないですよね。
変えないと新しくないし、変えすぎると
「『世界樹の迷宮』じゃない」と言われてしまいますから。

金田

そうなんです。
具体的には、「遊びかたをしぼりすぎない」とか、
お客さんには、「答えではなく選択肢を与える」とか、
「つくり手はあくまで空間をお客さんに提供する」
という根幹的な考え方は、変えちゃいけないところです。
だから、マップも描きかたに決まりがないんです。
慣れている人は角しか描かなかったり、
逆にきちんと描く方もいたりします。

岩田

描く人によって性格が出ますよね。

金田

はい。こちらから決めつけないことが大事だと思うんです。
それに加えて、今回なりの“古き良きRPG”を考えたときに、
先ほど小森が言った“探索”“戦闘”“成長”に加えて、
“探して見つけて広がる世界”というのも、
RPGの魅力のひとつだと僕は思っていましたので、
『IV』にはそういった部分も注ぎ込もうと思いました。

岩田

はい。

金田

じつはディレクターに決まってすぐ、
当時の先輩に声をかけて大阪に遊びに行って、
大学とか、当時、新聞配達をしていた辺りを
ドライブしてまわる旅をしたんです(笑)。

岩田

ああ、それは
“自分がRPGを遊んでいた時代を思い出す旅”
ということですね?
その場に行くと、いろいろ思い出しましたか?

金田

ええ。遊んでいた当時の空気を思い出しました。
「RPGの本質的な面白さをどう再現しよう」
と考えたとき、『IV』の仕事に入る前に、
純粋にRPGを遊んでいた
当時の自分に帰りたかったんです。
1泊だけの突貫旅行でしたけど、
旅行してホントによかったです(笑)。