1. 「RPGをつくりたい」
岩田
本日はニンテンドー3DSソフト
『世界樹の迷宮IV 伝承の巨神』のお話ということで、
アトラス(※1)の小森さんと金田さんに
お越しいただきました。
今日はよろしくお願いします。
小森・金田
よろしくお願いします。
岩田
まず、これまでの『世界樹の迷宮』シリーズ(※2)とのかかわりと、
今作で何を担当されたかというお話を
小森さんからお願いします。
小森
はい。シリーズディレクターの小森です。
『世界樹の迷宮』は6年くらい前、
立ち上げの段階の企画書を見せてもらい、
とても興味を惹かれたので、「是非に!」と
スタッフに立候補して参加したタイトルです。
『II』(※3)と『III』(※4)ではディレクターでした。
今作もプロデュースおよびディレクションを行う予定だったのですが、
ほかの商品と開発時期が重なってしまい、
「どうやって進めていこうか」というときに、
金田が「やります!」と手を挙げてくれたので、
彼にディレクターを任せることにしました。
岩田
では、金田さん、お願いします。
金田
はい。その話のつづきになりますが、
ディレクターを担当した金田(かなだ)です。
ディレクターというかたちでは
本作がはじめての参加となります。
ほぼ完成、というところまでこぎつけました。
岩田
これまでのシリーズにもかかわられていたんですか?
金田
はい。『I』でバトルシステムの
アドバイザーを担当していました。
そのときは『カドゥケウス』シリーズ(※5)の
ディレクションもしていたので、
僕が『カドゥケウス』をつくっている隣で
いつも『世界樹の迷宮』がつくられている・・・
という状況でした。
岩田
わかりました。ありがとうございます。
さて、本作『IV』の話を訊く前に、
まずは『世界樹の迷宮』をつくってこられたおふたりの
バックボーンをお訊きしたいと思います。
まずは小森さんにお訊きしますが、
小森さんがビデオゲームとかかわった
キッカケは何でしたか?
小森
僕の世代はみんな同じだと思うんですけど、
小学校低学年のころ、ファミコンに熱中しました。
友達とカセットを持ち寄って遊んで、
というのが新鮮な体験でした。
岩田
当時、“テレビの中で自分の操作したものが動く”
というのは、とても衝撃的でしたよね。
小森
はい。とくに夢中になったのが
『ドラゴンクエスト』(※6)です。
自分がゲームのキャラクターとなって
冒険するのがすごく楽しくて、
それが楽しい原体験になっています。
中高生になったら、
今度はテーブルトークRPG(※7)にはまって・・・。
岩田
あ、そちらにいかれましたか。
小森
はい。学生時代は美術部だったんですけど、
美術室を“テーブルトークRPG部”にしていました(笑)。
『D&D』(※8)を皮切りに
数多くのテーブルトークRPGを遊ぶ学生生活でした。
岩田
美術部そっちのけですか?(笑)
小森
はい(笑)。学校でテーブルトークRPGを遊び、
家でコンピューターゲームを遊んでましたね。
なので、卒業後の進路を考えたとき、
自分の好きなことを仕事にしたいと考えたのですが・・・。
当時はそういった仕事を見つけることも難しく、
結局、普通に地元で就職しました。
岩田
「ゲームが好きだけど、趣味としてつき合っていくしかない」
と一度は決断したわけですね。
小森
そうだったんですが、
でもやっぱり「違う」と思って、
3日でその会社をやめました(笑)。
で、地元ではなく京都まで足を運んで仕事を探して
無事、ゲーム会社を見つけて入ることができました。
そこへ出社したら、
前作の仕様が書かれたノートを1冊、ポンと渡されて、
「次のゲームの企画はきみひとりで考えなさい」と言われて。
「ええ? ゲームってすごいつくりかたをするなぁ」と思いながら、
ひとりで仕様書を書いて、独学でつくりかたを覚えていきました。
岩田
それはいまの時代に比べて
「ひどい目にあった」とも言えるし、
「すごく恵まれていた」とも言えますよね。
小森
個人的にはすごく恵まれていたと思っていて、
いま、自分が新人にいきなり
「ゲームを一本つくってみて」なんて言えないですし、
「当時の上司はいい人だったなぁ」と思っています(笑)。
岩田
『ドラゴンクエスト』に夢中になったり、
テーブルトークRPGに深くはまったりしたことは、
小森さんのゲームづくりに影響を与えたと思いますか?
小森
そうですね。RPGというジャンルが好きになり、
「大好きだったRPGをつくりたい」と
考えるようになったのはその影響です。
なので数年後、関西に支社があったアトラスを受けたんです。
アトラスなら『真・女神転生』(※9)をつくっていたし、
RPGをつくれると思ったので・・・。
岩田
じゃあ、アトラスに入って、
すぐ念願のRPGをつくれたんですか?
小森
それが、アトラスでRPGをつくっていたのは
なんと・・・東京本社でした。
一同
(笑)
岩田
関西ではつくっていなかったんですか?(笑)
小森
はい・・・(苦笑)。
それでしばらくは格闘ゲームをつくっていました。
でも、もともとRPG以外のゲームも好きでしたから、
仕事には楽しく取り組みつつ、
「いつの日かRPGをつくりたいな」
と祈っていました。