岩田
「お祭りソフトだから」とおっしゃいましたが、
『モンスターズ』は“お祭りソフト”
というイメージなんですか?
犬塚
そうです。
だから竜王(※18)やハーゴン(※19)など、
歴代のボスも何もかも出てきます。
岩田
だからいままでの『ドラクエ』シリーズの
モンスターからラスボスまで、
選び放題の状態からスタートできたんですね。
つくり手として見ていると、
「思い切りがいいなあ」と思うんですよ。
犬塚
『ドラクエ』本編ではなかなか逸脱が許されない分、
スピンアウトでは許されるギリギリのところでチャレンジして、
堀井さんにぶつけるようにしているんです。
堀井
外伝だし、パロディ的な考えかたもあるんですよ。
「本編ではやれないけど、外伝っぽいのだったらいいか」とかね。
犬塚
もちろん、やりすぎて
堀井さんに難色を示されるケースもあるんですけど、
そのせめぎ合いですね。
岩田
じゃあ犬塚さんは、
どんどん踏み込んでいきながら
つくられているんですか?
犬塚
はい。そうでないとスピンアウトは面白くないですし、
なるべく尖らせるようにはしています。
岩田
では堀井さんにとっては、
スピンアウトタイトルでどんな手ごたえが出るかを
見ている面もあるんですね。
堀井
そうですね。
まあ・・・基本的にボクは出したがりではないんですけど、
強く「イヤ」って断れないんですよ。
犬塚
・・・そうでもないですけど(笑)。
一同
(笑)
堀井
システムに関してはガンガン言うけど、
モンスターを出す、出さないってところはね・・・。
岩田
サービス精神旺盛な堀井さんですから、
「お客さんが喜んでくれそうだ」って言葉に、
無性に弱いんですかね。
堀井
そうそう(笑)。
岩田
ところで、お祭りソフトをシリーズ化するとなると、
別の難しさが出てきますよね。
犬塚さんはそれとどう向き合ってきたんですか?
というのも、お祭りのスピンアウトは、
一度はうまくいっても、人気がつづいていく例って
わりと少ないと思うんですよ。
犬塚
『モンスターズ』の場合は
やや複雑な経緯をたどっているんです。
『テリー』が売れたから、
つぎに『モンスターズ2』(※20)、
その後『キャラバンハート』(※21)を出したんですけど、
どんどん本数が下り坂になってしまったんです。
それで「つぎはないな」って空気になったんですけど、
ニンテンドーDSが発表されたとき、
「このハードならリベンジできるかも」
ということで、『ジョーカー』(※22)シリーズで
リニューアルして、そこからコンスタントに
出すようになりました。
岩田
一度は存亡の危機を味わったわけですね。
堀井さんはどう見ていらっしゃったんですか?
堀井
『ジョーカー』のときは確か、
「いままでとは違うクールな主人公でいこう」
みたいな話をしたんだよね。
犬塚
そうですね。
それまでは、子どもたちが小学校卒業と同時に、
ゲームまで卒業してしまうケースが多いと感じていたんです。
でもそれだと非常にもったいないから、
ちょっとクールな主人公をもってきて、
小学生と中学生の橋渡しになるようなゲームを
イメージしてみようと思ったんです。
堀井
あと、ちょうど『VIII』(※23)が出た時期だったんですよ。
で、DSで『VIII』の据置型のような3D表現ができるということで、
「これならいける!」と思って、
GOサインを出した記憶があります。
犬塚
はい。とにかく新しいものは全部やろうとして、
DSのすれちがい通信(※24)やWi-Fi通信も、
『IX』(※25)でやる前に『ジョーカー』で試してみました。
岩田
もともとケーブル通信で対戦していた『モンスターズ』が、
DSの新しい通信機能を得てどう変わったのか、
それはのちに『IX』にどうインスパイアされたのかは、
ちょっと面白い話かもしれませんね。
犬塚
そうですね。
ただ『ジョーカー』と『IX』じゃ販売本数が違うので、
プレイヤーの爆発度はぜんぜん違いましたけど。
岩田
『IX』のすれちがい通信は
社会現象になりましたからね。
堀井
『ジョーカー』の1のほうでは、
それほどすれちがえなかったんだよね。
犬塚
そうなんですよ。
岩田
本当にすれちがい通信の手ごたえが出たソフトは、
『IX』からと言えるかもしれませんね。
『IX』で社会現象が起きたときには、
「すれちがいでああいうことをしたかったんだ!」って
任天堂の内部でもくやしがっていましたから(笑)。
だから、『IX』のような特別に多く普及するソフトでなくても
『IX』のようなことが起こるにはどうしたらいいかを考えて、
ニンテンドー3DSでは、いま遊んでいるソフトだけでなく、
最大12本のソフトで常時すれちがえるしくみが生まれたんです。
犬塚
あの3DSのすれちがい通信のしくみは、
今回の『テリー』でちょっと苦労しましたよね。
常時すれちがい状態なので
オンオフ感がなくなっちゃって、
いつ、何が起こっているのかが、
お客さんにわかりづらい状況になってしまったんです。
堀井
単に「すれちがっていますよ」と表示されるだけで、
誰かとすれちがいながら、自分が何のデータを
出しているのか、わかりにくかったんです。
すれちがい通信になるコマンドの流れもわかりにくかったので、
いろいろと要望を出して修正してもらいました。
犬塚
何が起きているのかわからないと、
お客さんは不安ですからね。
堀井
そう。「自分はいまこれを出しているんだ」
というのがはっきりわからないといけない。
犬塚
そこの調整には少し時間がかかってしまいました。
岩田
なるほど、『ドラクエ』シリーズ共通の
わかりやすさに到達するためには、一苦労あったんですね。
そもそも、『テリー』を3DSにリメイクする話は
どうやってはじまったんですか?
犬塚
堀井さんは覚えてないと思うんですけど、
じつは最初に堀井さんが言ったんですよ。
堀井
・・・そうだっけ?
犬塚
そうなんです(笑)。
『ジョーカー2』(※26)か
『プロフェッショナル』(※27)のあたりに・・・。
それで「だったらやりましょう」と話をしました。
堀井
あ、でもそれは多分、
3年後とか長いスパンのつもりで言ったと思う。
まさか、こんなに早く出すとは思わなかったんだよね。
具体的な話を聞いたときに「ええっ・・・1年後なの!?」
ってびっくりしたんだから(笑)。
一同
(笑)