制作企画系で入社した私は、まず『スプラトゥーン2』のチームに参加し、追加コンテンツ『オクト・エキスパンション』の開発に関わったあと、『あつまれ どうぶつの森』のチームに合流することになりました。ただ、入社2年目ということもあり、はじめは何もわからないことだらけのスタートで、不安とワクワクの毎日でした。
そもそも『どうぶつの森』シリーズの開発は、“遊び”を作るというよりも、“遊び場”を作っている感覚に近いところがあります。このゲームでは、どうぶつとの会話を楽しむのもよし、釣りやムシ取りに夢中になるのもよし、部屋や服のコーディネートを楽しむのもよし、といったように、人それぞれの楽しみ方があります。ただ、その“遊び場”の自由度があまりに高すぎると、だんだん何をすればいいのかわからなくなってしまう人も出てきます。
そこで、自由な遊び場の道しるべとなるものを作ることになり、「たぬきマイレージアプリ」が生まれました。プレイヤーが何をやったらよいか迷ってしまった時に、「こんな遊びもあるんだ」と気付いてもらうキッカケとなるような情報を提供するという方針のもと、私はプランナーとして、その開発を担うことになったのです。たとえばメールで情報を通知したり、目標を達成するとバッジがもらえたり、その達成度をゲージの形で可視化するなど、いろいろな案を試してはやり直す日々が続きました。
そうやってたくさんの試行錯誤を繰り返した結果、最終的にスタンプカードというかたちに落ち着きました。そこからは、「ハッピーバースデー!」など数値目標では表せない“思い出”のような項目も織り交ぜたり、一つ一つのカードにたぬきちの言葉で説明を載せるといったアイデアが生まれ、徐々に温かみのある画面へと仕上がっていきました。
制作の過程では、お気に入りだったアイデアを捨てないと前に進めないことがあります。はじめは名残惜しく、捨てる勇気が湧かないこともありましたが、いまでは「可愛い子には旅をさせよ」の精神で、固執していたアイデアにも気兼ねなく「バイバイ!」と言えるようになりました。可愛いアイデアたちは、日の目を浴びるまでメモ帳のなかを彷徨っています。
さらに、スタンプをゲットすると、ご褒美でプレイヤーが「肩書き」を名乗れるようにするというアイデアも生まれました。2語のランダムな言葉の組み合わせで「肩書き」を作れるようにするべく、開発チームの掲示板を使っておもしろいキーワードを募集してみたところ、1000個近いキーワードの案が集まりました。
組み合わせによる言葉遊びは好評で、パスポートだけで使うのはもったいない、ということになり、どうぶつたちの噂話や、通信時の画面でも使用することになりました。どうぶつの会話を担当しているのは別のプランナーなのですが、ひとつのネタをキッカケに、セクションの垣根を越えて別の遊びへとつなげる、つまり遊びのアイデアを派生させるということもまた、ゲーム開発をする上で大切なことだと実感しました。
『どうぶつの森』シリーズは、「コミュニケーション」というジャンルのゲームです。これは、どうぶつたちとのコミュニケーションはもちろん、人と人とのコミュニケーションも大切にしているということを意味します。私たち『どうぶつの森』シリーズの開発者は、遊び場のなかに、コミュニケーションのキッカケとなるいろいろな種を蒔いているようなところがあり、その結果、多くの人たちの間で、楽しい会話の花が咲くようになればよいなと考えています。