ひたすら考え、作っては試してひたすら考え、作っては試して

徹底的に運動について考える

「フィットネスとRPGを融合させたゲームを作ろう」というお題から、『リングフィット アドベンチャー』の開発がはじまりました。一般的にフィットネスというのは長続きしないという声がよくありますが、RPGのおもしろさを導入することができれば、楽しみながら続けていけるのでは、という考えが出発点となっています。

初期のバトル画面

開発当初は、リング状のコントローラーである「リングコン」は存在していませんでしたので、Nintendo SwitchのJoy-Conを両手で持ってできる運動を検討することからはじめました。そうして最初に試作したのが、ジョギングとパンチを交互に繰り返しながら先に進む、というゲームでした。でも実際にプレイしてみると新しい体験を感じることができず、私はこのままではマズイ、と強く感じました。

そこで、まずは運動関連の本を徹底的に読みあさり、フィットネスの情報をたくさん自分に詰め込むことにしました。京都の大型書店に通っては、フィットネス関連の本を探したり、ネットで動画をチェックしたりするようなことを行いました。運動、というテーマに対して、「誰よりもまずは徹底的に理解しよう、そこにヒントが必ずある」という強い思いが私の中にありました。その思いがあったからこそ、運動に関する研究を夢中になって続けることができました。

研究の結果、想像以上に数多くの運動があることに気づき、「バトルをたくさんの魅力的な運動の“入れ物”にしたい」と考えました。ちょうどチーム内では、Joy-Conを手足に巻き付けて、さまざまな身体の動きを認識する方針に変更したタイミングでもありました。

絶対におもしろい道が見つかるはず

問題は「数多くの運動を、現実的にどうバトルに組み込むか」でしたが、そこは「動き方のパターンで数種類に分類する」ことで解決しました。
具体的には、「ポーズを維持し、戻す」「連続して動き続ける」「動かずブレないで一定時間耐える」という3種類のパターンの実装から始め、スクワット、腕たて伏せ、腹筋ひねり、ヨガなど10種類弱の運動を、実装したパターンの中に流し込むようにして、ゲームに組み込みました。

いままで「RPGのバトル」の手段として用いられていないような、数種類の運動を駆使して敵と戦う私の姿をみた他のチームの方から、「今までにない新しいものを見た!」と言ってもらえたとき、「これはいける!」と強い確信を持つことができたのです。

バトル試作中風景
ヨガを取り入れた試作画面

その試作を土台にバトルの開発を進めたのですが、そんなときに持ち込まれたのがリングコンの試作品でした。Joy-Conを手足に巻く形式では、解決が難しい問題を複数抱えていた中で、まさに渡りに舟のような話で、チーム内で相談し、採用することとなったのですが、そのあとがまた大変でした。リングコンがあることで、できることの幅が大きく広がったため、試してみたいことも大幅に増えたのです。

製品版バトル画面

その後もさまざまな試行錯誤を繰り返し、『リングフィット アドベンチャー』はついに完成しました。難しい問題に何度もぶつかりましたが、いける!と最初に感じた感触を疑うことは開発期間中に本当に一度もありませんでしたね。
その都度「絶対に道はある」と信じて考え、情報を取り入れ、試作を作り、フィットネスを試してまた考えるというサイクルを、個人でもチームでもひたすら繰り返しました。
その結果、世界中の人々が楽しみながら運動できる今までにない新しいソフトが完成した、と感じています。
文字通り、「汗の結晶」ですね。

社員略歴

鈴木企画制作部/2009年入社
2009年「デザイン系」入社。
UI/UX、3Dモデリング、3Dアニメーションなどを担当した後、プランナーに転身。
Nintendo Switch『リングフィット アドベンチャー』(2019年)では企画立ち上げから参加。
「フィットバトル」「運動内容の選定、調整」「リズムゲーム」などを担当。

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