感じた“熱”を、余さず落とし込む

尖ったステージもお客様に届けたい

私はプランナー志望で制作企画系で入社し、すぐに配属されたのが、Wii Uの『Splatoon(スプラトゥーン)』の開発チームでした。このチームでは、さまざまな立場の人がそれぞれのアイデアでステージを作り、それをみんなで遊ぶようなことを繰り返していたのですが、正式に製品の中に組み込まれるものもあれば、あまりにも尖った、個性的すぎるステージだったために、繰り返し遊び続けるのは難しいという理由で、お蔵入りすることも少なくありませんでした。

私はそれがもったいないと思っていました。尖ったステージであっても実際に遊んでみるとおもしろいですし、何よりいろいろなステージを遊べる体験に私自身とてもワクワクしていたからです。仮に繰り返し遊ぶことはできなくても、このワクワクをお客様に届けることができれば、必ず価値ある体験になる。そこに自分自身の熱を強く感じた私は、尖ったステージをお客様に届けるための行動を始めました。

ステージを実際の製品に組み込むには、プログラマーやデザイナーなど専門性の異なるメンバーの協力が必要です。アイデアを実現するには、自分が感じたワクワクをメンバーに味わってもらうのが一番だと考え、私はたくさんの個性的で尖ったステージを試作し、チームのメンバーに遊んでもらいました。私が試作したステージでチームのメンバーが遊んで驚いてくれる反応を見て、この体験には価値があると手応えを感じました。

尖ったステージをお客様に届ける取り組みはNintendo Switch用ソフトの『スプラトゥーン2』の開発でディレクターに提案し、実現に至りました。このゲームでは「フェス」と呼ばれる1日から2日間の期間限定イベントが行われていました。フェスでは「マヨネーズとケチャップのどちらが好きか?」というようなお題が2択で出され、プレイヤーはそれぞれ選んだ陣営に入ってバトルをします。これまで製品に組み込むことが難しかったステージは、このフェスの期間にのみ遊べる対戦ステージ「ミステリーゾーン」として採用され、お客様に楽しんでいただけるようになったのです。

ミステリーゾーンの一例。巨大な大砲や攻撃して破壊するスイッチなど、ステージごとに特徴的なギミックがある。

お客様に育ててもらったタイトル

2019年7月に『スプラトゥーン2』が発売2周年を迎えるにあたって「ファイナルフェス」を開催することになり、ここでも期間限定の特別なステージ制作に取りかかりました。そのステージやギミックを考える、私の大きな原動力になったのが、自分の肌で感じたお客様の熱でした。このゲームでは、ナワバリバトル(※1)日本一のチームを決める「スプラトゥーン甲子園」というトーナメント大会が何度も開催されており、私はできるだけ会場に足を運ぶようにしていました。全国大会ではゲームに登場するキャラクターのアイドルユニットのライブ(※2)が開かれるときがあるのですが、そのときに大いに盛り上がった会場で、私は自分が想像していた以上のお客様の熱を肌で感じました。

このゲームを愛してくださる方々の熱い想いに応えるためには、「ファイナルフェス」を多くのお客様に満足していただくものにしなければいけません。そこで私たち社内のメンバーだけで制作するのではなく、プロジェクト採用として開発に参加されていた方々とも協力して、ステージ作りを進めることにしました。お客様により近い感覚を持っている彼らと、遠慮なく意見交換をしながら「ファイナルフェス」を共に作りあげることができました。

ゲーム機を以前より気軽にネットワークにつなげられるようになり、アップデートが可能になった現在、ソフトが発売されたあとも開発は終わりません。『Splatoon』はお客様の熱量が大きく、日々いろいろな刺激を受けながら開発に取り組んでいますが、私たち開発者は、そういった熱を見逃さないようにして、できるだけ期待にお応えすることが大事だと考えています。事実、『Splatoon』はお客様に育ててもらった側面が大きいので、その意味でもお客様にはとても感謝しています。

社員略歴

加藤企画制作部/2014年 入社
2014年「制作企画系」入社。
プランナーとして、Wii U『Splatoon(スプラトゥーン)』(2015年)、Nintendo Switch『スプラトゥーン2』(2017年)の開発に携わる。

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