私は、任天堂が提供するネットワークサービスのなかでも、社内関係者やソフトメーカーさんが利用するWebツールの開発に携わっています。Nintendo Switchでは、ニンテンドーeショップでのコンテンツ情報を管理するツールの開発を担当しました。このコンテンツ情報管理ツールは、ニンテンドーeショップでゲームなどを販売するための情報を登録したり、配信を管理したりするためのWebツールで、利用するのはニンテンドーeショップの運用に関わる社内関係者や、コンテンツ情報を登録するソフトメーカーの担当者の方に限られています。
もともとこのコンテンツ情報管理ツールは、ニンテンドー3DSの発売後に用意されたものです。このツールができるまでは、コンテンツ情報は表計算ソフトで管理し、揃った情報をニンテンドーeショップへ登録して、配信管理をしていたのですが、このような情報管理を、ツールを用いて行うようになりました。このツール開発のとき、日本や海外子会社それぞれの運用に合わせた仕様で開発したので、データの入力フォーマットやUIは、地域ごとにバラバラでした。また、ニンテンドーeショップと連携して情報配信を管理する機能も、まだありませんでした。ですので、まずソフトメーカーさんがコンテンツ情報管理ツールで必要項目を入力し、そのデータをもとに、社内関係者がニンテンドーeショップで配信するための別ツールを使って、登録内容の調整を行っていました。そのため、作業の無駄が多く、何よりミスも発生しやすい状況でした。
そこで、Nintendo Switchの発売を機に、コンテンツ情報管理ツールを再構築することになり、ニンテンドーeショップの運用に関わる部分もまた、見直しが必要となりました。設定する人から見て、販売地域ごとに設定方法が変わらないよう、運用している地域でバラバラだったデータの入力フォーマットやUIを統一し、さらにニンテンドーeショップと連携する機能をこのツール1つにまとめることになりました。
ただ、関係者に対していきなり「新しいツールではこのように統一していきたいので、よろしくお願いします」と言っても、それまでの運用に馴染んでいますので、すんなり受け入れてくれるとは限りません。しかも、前回のWii Uの発売時は、開発がギリギリとなり、ツールを使えるようになったのが発売の1週間くらい前のことでした。発売までの1週間で担当者は「必要な情報の整理」「登録方法の習得」「登録作業」「配信前の事前確認」を行う必要があり、厳しいスケジュールでの作業でした。このこともあり、「前回のようなことにならないよう余裕を持って作業させてほしい」という声が届いていました。
この時の反省もあり、私たちはまずお互いの信頼関係を構築し、密に連携することが大事だと考えました。そのやりとりのなかで、要望によっては、データの入力フォーマットやUIを統一するために諦めてもらわないといけないこともあります。そういったときに、メールやテレビ会議でこちらの意見を伝えようとすると、一方的に押しつけられているように受け取られてしまうことがあるので、そうならないように海外出張をして、関係者と直接、運用も含めてどうするのが良いのか話しあったりしました。手間も時間もかかりますが、そうすることでお互いの考えていることの理解も深まり、良い関係が築けますし、結果的に開発が早く進むことも多いのです。
コンテンツ情報管理ツールの情報入力画面
前回の反省を活かしながら開発を進めたので、今回のコンテンツ情報管理ツールはNintendo Switchの発売の2か月前には運用開始することができました。スムーズに開発することはできましたが、運用するためのWebツールなので、運用を開始してからが本番です。始まってから見えてくる課題もあるので、それらに対応するために寄せられる改善や機能追加などの要望に素早く対応ができるよう、日々改善を続けていきたいと考えています。